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幸福な孤独感

初めて小津映画を観た時の感想メモが出てきた。

「お茶漬けの味」(1952年)
完全にタイトルで決めたけど、レビューを見たら小津らしくない小津映画だって。

印象的だったのは、初めてパチンコをやった旦那さんの感想。「幸福な孤独感」なるほど、深い言葉だ。

いちばんお気に入りの場面は、夫婦がお茶漬けの支度をするところ。

住み込みのお手伝いさんがいるから、普段台所とは無縁の2人。
お腹空いたねってこっそり忍び込んで、右往左往しながらお茶漬けの支度をする。
いたずらっぽくて子供っぽくてかわいい。

お新香を切る妻、それを見つめる夫。

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夫の方もお盆を用意し始める。

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切ったお新香とお茶を乗せて。(夫婦の初めての共同作業は、ケーキを切ることよりお茶漬けの支度をすることの方が健全な気がした)

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「お茶漬けだよ、お茶漬けの味なんだ」………
「夫婦はこのお茶漬けの味なんだよ」

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お互いの歯車が噛み合わないまま結婚生活を送ってきた2人が、初めて通じ合う。

夜中に、ご飯にお茶をかけ、ずるずると音を立ててすする。そういう無作法なお茶漬けの時間を共有できたから、本当の意味でわかりあえたんだ。

私もいつか、こんな感覚を味わうことができるだろうか……。ほっこりとした気持ちと、羨ましい気持ちをくすぶらせながら、永谷園のお茶漬けをすする深夜1時。(幸福な孤独感である)



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