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『現代短歌』2020年9月号

いつぽんで森になる木の欅の木こころに立てて睡りゆくべし 黒木三千代 上句に惹かれた。欅の木を確かに言い表している。その堂々として清々しい姿を思って眠ると、重い不安が少し減るのだ。

窓枠が並ぶがごとし顔顔顔 隣の部屋へはみ出せぬまま 永田紅 Zoom会議を詠んだ歌。たしかにZoom画面は窓が並んでいるように見える。私もそう思っていた。けれど歌には出来ていないし、他の人の窓に喩えた歌も読んでないように思う。コロンブスの卵だな。

ひかりからひかりへ渡り鳥がゆくようにつめたい朝を愛する 浜崎結花 「ゆく/ように」と三句四句の句跨りになっているが、そのため上句全部が比喩になっていることに下句の最初で気づく。軽く心地良い驚きがある。ひかりがつめたさと繋がって表現されているのも新鮮。

④安田純生「雨夜の窓、月夜の窓」〈窓というもの自体も「窓」という語も、古代から存在していた。〉え?古代から?ガラス窓しか頭に浮かんでなかった。連子窓は開閉できない、開閉可能な板戸の窓は閉めると外が見えない、と説明されると、確かにそういう窓も見たことある。

〈「窓」は、その下に文机が置かれることも関係するのか、読書あるいは勉学と結びつきやすい語であった。〉言われてみれば、そう。でも言われるまで気づかない。そうだよね!と思う気づきにたくさん出会えた論。この文章の下に流れる重層的な知識を思う。

2020.8.17.~20.Twitter より編集再掲