『塔』2023年7月号(3)
⑮リサイクルできないものが好き 道に散る木蓮の花の汚さ 丘光生 一回性の、二度と使えないもの、それが好きだという潔さ。例えば花びら。散った木蓮、おそらく白木蓮が薄汚れている。散るままに汚れるままにしておきたいのだ。三句の句割れで、息を一度吸う感じ。
⑯土曜日の夜のわたしは映画館 わたしのための とてもちいさな 田村穂隆 休日前夜の自分を映画館だと捉える。自分自身のための小さな映画館。何を映すのかも自分次第。映すのも見るのも自分一人だけ。少しの演技性と寂しさ。ブツ切れの文体も