川本千栄

「塔」編集委員。短歌と短歌評論。第20回現代短歌評論賞受賞。歌集『青い猫』(第32回現…

川本千栄

「塔」編集委員。短歌と短歌評論。第20回現代短歌評論賞受賞。歌集『青い猫』(第32回現代歌人集会賞)『日ざかり』『樹雨降る』。評論集『深層との対話』。他『D・arts』。第四歌集『森へ行った日』ながらみ書房出版賞・日本歌人クラブ近畿ブロック優良歌集賞。第二評論集『キマイラ文語』。

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『群馬県立土谷文明記念文学館 紀要 風 第26号2022年度』

①2023年3月発行の本誌を一年後の先日読んだ。当時の永田和宏の講演録を読むと、2022年時には、コロナの時代をどう生きるか、が本当に緊切の問題だったことが分かる。そして私たちがもうそれを忘れかけていることも。 ②永田和宏「ことばの力ー言葉で思いを伝えること」 〈この新型コロナウィルスの流行も、世界史の中に残ると思います。たぶん数行で、そんなには残らないだろうけれども、歴史は、あったことはすべてきちんと残してくれます。ただ私は、歴史書の中に唯一残らないことがあると思っていま

    • 『うた新聞』2024年3月号

      ①今井恵子「結社の意義」 〈一般に近代短歌のはじまりと考えられる「浅香社」結成にあたって、それを〈結社〉と呼んだのかどうか。後になっての呼称であれば、近世の〈歌塾〉が近代の〈短歌結社〉へ移行するのに何時頃どのような経過をたどったのか。〉  たしかにその点は気になるところだ。昔読んだ資料で結社とは名乗ってなかったとあったような気がするがうろ覚え。浅香社のように○○社という名前は、明治時代の流行りの命名のように感じる。結社もその頃は新しい印象の言葉だったのではないか。 ②松澤俊

      • 『現代短歌新聞』2024年3月号

        ①「インタビュー 永田紅氏に聞く」 改めて若山牧水賞おめでとうございます。  〈作者の属性や人生を詠むことを排除する向きがありますが、人生を詠んでいるからつまらないということは決してなくて。そもそもこの二分法が私は嫌いで。境涯派でも言葉派でも、いい歌はいいし、つまらないものはつまらない。〉  ほぼ同意。ただこの境涯派(人生派)と言葉派という用語は、用語だけが一人歩きしているようにも感じている。この言葉が論に使われているのはあまり見たことがない。 ②「永田紅」  〈一首の屹立

        • 〔公開記事〕川野里子『ウォーターリリー』(短歌研究社)

          世界の惨を感知する  川本千栄  この世界には様々な惨事が存在する。しかし目を凝らし耳を澄まさない限り、多くの人はそれに気づかない。この歌集で作者は、自らの存在の在り様を絡ませながら、時空を超えて、そうした惨に耳を澄ませ、受けとめてゆく。 あの川に兄が浮かんでこの沼に父が浮かんで 睡蓮咲いた 戦争に勝ちしにあらず絶望に勝ちたり 春巻きほんのりと透け にんげんのにんげんによるにんげんのための虐殺 しらほねを積む  ベトナム、カンボジアを訪ねた一連。一首目、肉親が戦争の犠牲にな

        『群馬県立土谷文明記念文学館 紀要 風 第26号2022年度』

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        記事

          しだれ桜が咲きました

           2月24日の『キマイラ文語』読書会で現代短歌社様からいただいた枝垂れ桜が咲きました。うれしいです。改めて現代短歌社様、御参加くださった皆様ありがとうございます。 2024.3.31. Twitterより編集再掲

          しだれ桜が咲きました

          角川『短歌』2024年3月号

          ①鶺鴒のちひさな気持ちこぼれたり小走りすれば陽差しゆれたり 小島ゆかり 上句に鶺鴒に対する心寄せがある。漢字とカタカナでは印象が変わると実感。以前は滅多に見なかったが、最近よく見かける。生態系に変化があったのか。やはり走っている姿を詠いたくなる鳥。 ②咲きのかぎり咲きたるさくらおのづからとどまりかねてゆらげるごとし 三ヶ島葭子 全歌集刊行記念特集の秋山佐和子による百首選より。この歌は前から好きだった。まさに今シーズン。この百首選は、秋山による短いコメントがついて、三ヶ島葭子

          角川『短歌』2024年3月号

          映画『コール・ジェーン』行ってきた

           久しぶりの映画館。面白かった。予告編見て、ネタバレじゃないの?と思ったが、びっくりするような展開になって途中ハラハラした。でも本当はこの映画のテイストより重い話じゃないかな。(映画だが)行間を読んで、ちょっと泣いたところもあった。 2024.3.30. Twitterより編集再掲

          映画『コール・ジェーン』行ってきた

          『現代短歌新聞』4月号にて(過去ログ)

          (過去ログ)現在発売中の『現代短歌新聞』4月号に沖ななも『百人百樹』の書評を寄稿しました。テーマのあるアンソロジー。とてもすてきな一冊です。皆様ぜひお読み下さい! 2024.3.29. Twitterより編集再掲

          『現代短歌新聞』4月号にて(過去ログ)

          『短歌研究』2024年3月号

          ①天井の材はするどく崩落す新春福袋の山頂(いただき)へ/福袋が広場うづめてゐしゆゑに天井瓦解の負傷者あらず 黒瀬珂瀾 まさに現場のリアル。日常の空間が突如地震で崩壊した。人々を救ったのは福袋という軽いお楽しみアイテム。現場性が歌の力に転換する。 ②数秒の地震が断ち切る数十年のあはれ山なす災害ゴミは 黒瀬珂瀾 数十年間、人々の大切な暮らしの支えであったものが災害ゴミとなってしまった。それに囲まれて生活していた人々はどんな思いで見つめているのだろうか。「あはれ」と言わずにはいら

          『短歌研究』2024年3月号

          共同研究による短歌史再考(後半)【再録・青磁社週刊時評第七十八回2010.1.12.】

          共同研究による短歌史再考(後半)     川本千栄  また、近現代短歌の境目はどこか、ということについて、三枝は次のように語っている。 三枝 前衛短歌と現代短歌の境界は実はなし崩しで、本当言うと前衛短歌が現代短歌の中心にあるというニュアンスでしょう。前衛をどういうふうなかたちで現代短歌と近代短歌の間に置くかというのも曖昧なんだ。だから、そういう用語の安定化みたいなものも必要じゃないかな。  この発言に立ち止まったのは、今から約10年前の1999年12月発行の『岩波現代短

          共同研究による短歌史再考(後半)【再録・青磁社週刊時評第七十八回2010.1.12.】

          共同研究による短歌史再考(前半)【再録・青磁社週刊時評第七十八回2010.1.12.】

          共同研究による短歌史再考(前半)        川本千栄 (青磁社のHPで2008年から2年間、川本千栄・松村由利子・広坂早苗の3人で週刊時評を担当しました。その時の川本が書いた分を公開しています。)  あけましておめでとうございます。2010年の年が明けた。去年まではゼロ年代という言い方がよくされたが、それで言うと、今年から10年代が始まった。何でもかんでも年代で切って考えるのは良くないとは思うのだが、文化は時代の影響を受けずにはいられないものだ。10年ごとの区切りとい

          共同研究による短歌史再考(前半)【再録・青磁社週刊時評第七十八回2010.1.12.】

          角川『短歌』4月号にて(過去ログ)

          (過去ログ)現在発売中の角川『短歌』4月号「歌壇掲示板」「イベント報告」に「『キマイラ文語』を読む会」について掲載いただきました。感謝です!皆様ぜひお読み下さい。この会でパネリストの発言のみならず会場発言からも多くの示唆をいただきました。それについても論としてまとめたいです。 2024.3.25. Twitterより編集再掲

          角川『短歌』4月号にて(過去ログ)

          図書館での掲示

           職場の図書館に掲示してもらっている今週の一首。8年間勤めた職場を去ることになり、これが最終回かと思えば何と!「メールで送ってほしい」と言っていただきました。新しい職場と合わせて、新年度からは2校に掲示されます。 2024.3.22. Twitterより編集再掲

          図書館での掲示

          『短歌研究』4月号にて(過去ログ)

          (過去ログ)現在発売中の『短歌研究』4月号にて後藤由紀恵『遠く呼ぶ声』の書評を書きました。ぜひお読み下さい。 また同4月号「短歌時評」にて川島結佳子様が『現代短歌』3月号の川本千栄のエッセイに触れて下さいました。川島様ありがとうございます!うれしいです。皆様ぜひお読み下さい。 2024.3.21. Twitterより編集再掲

          『短歌研究』4月号にて(過去ログ)

          『短歌往来』4月号にて(過去ログ)

          (過去ログ)現在発売中の『短歌往来』4月号「今月の視点」を寄稿いたしました。タイトルは「新人賞その後」です。皆様ぜひお読み下さい! 2024.3.20. Twitterより編集再掲

          『短歌往来』4月号にて(過去ログ)

          『短歌往来』2024年3月号

          ①たてよこにのびもちぢみもせぬキスは投げらるるときキッスとなりぬ 都築直子 上句は具体としてのキス。下句は言語としてのキス。確かに投げキッスであって投げキスではない。そう言われた途端、投げられたキスがビヨーンと伸びてこちらへ届いたような気がする。 ②椿または山茶花といふ結果なりそれならと「見分け方」を検索 田村元 Googleレンズで花の名を調べている主体。あるあるな結果が導き出された。その違いを聞いているというのに。使ったことのある人なら、このイラっとする感じが分かるはず

          『短歌往来』2024年3月号