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短歌総合誌『歌壇』感想文

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短歌総合誌『歌壇』を読んで、好きな歌の一首評をしたり、気になった記事の感想を書いたりしています。
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記事一覧

『歌壇』2024年10月号

①特集「全歌集の味わい」 川本千栄「全「歌集」と「全歌」集」 〈ある歌人を「短歌史に残す」…

川本千栄
8日前
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『歌壇』2024年9月号

①口福あり眼福ありて耳福(じふく)あり音楽もよし静寂もよし 伊藤一彦 口や目による幸せが…

川本千栄
1か月前
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『歌壇』2024年8月号

①木香薔薇の押しの強さが苦手なり隙間がないと助言もできぬ 永田紅 「押しの強さ」に笑った…

川本千栄
2か月前
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『歌壇』2024年7月号

①天金の書(しよ)を読むごとく寺町の老木桜(おいきざくら)の開花を仰ぐ 高野公彦 今では…

川本千栄
3か月前
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『歌壇』2024年6月号

①書き損じや黄変コピーめぐらせる春の佳き日よ ひと生(よ)は紙片 佐伯裕子 紙類の片付け…

川本千栄
3か月前
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『歌壇』2024年5月号

①木の葉には根よりも毒の多きこと図鑑に知りて春の野をゆく 栗木京子 確かに根の方に毒が多…

川本千栄
4か月前
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『歌壇』2024年4月号

①烏賊の身に手首まで入れ冷えわたる暗黒宇宙をつかみ出したり 小島ゆかり 烏賊のワタを抜いている。今は烏賊を捌くことも減って、切り分けられた身を買う人が多い気がする。烏賊は流水にさらして調理するので、常にイメージとして冷えている。「暗黒宇宙」が壮大。  寒烏賊の腹をさぐりてぬめぬめと光れる闇をつかみ出だしぬ 河野裕子『ひるがほ』 この歌を思い出す人も多いだろう。どちらの歌も烏賊の胴の中に、その身体より大きい物が入っていると感じているのだ。 ②もんしろともんしろもつれあふそらの

『歌壇』2024年3月号

①憑きものの落ちたるごとく小説を読まなくなりて歳晩は来ぬ 大辻隆弘 四句と五句の間に時間…

川本千栄
7か月前

『歌壇』2024年2月号

①病院を出ればそこには夜があり病院だけが背後の夜が 花山多佳子 事故に遭った夫の入院先を…

川本千栄
6か月前
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『歌壇』2024年1月号

①三枝昻之「新春巻頭言」 〈佐佐木信綱は近代以降の短歌百年は〈自我の詩〉や〈写生〉という…

川本千栄
7か月前
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『歌壇』2023年12月号(追記あり)

①さまざまな人の来たりて弾いて去る「駅ピアノ」よし「空港ピアノ」も 小池光 最近インスタ…

川本千栄
8か月前
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『歌壇』2023年11月号

①「樹木の歌十首 糸川雅子選」 赤松はひとつのこらず鏡ゆゑ出口のあらぬ赤松林 渡辺松男/黄…

川本千栄
10か月前
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『歌壇』2023年10月号

①なによりもビーズの鞄が大切な少女時代が思い出されて 江戸雪 ビーズの鞄がレトロっぽいア…

川本千栄
11か月前
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『歌壇』2023年9月号

①咲くといふ武装のかたちしろきリラむらさきのリラ蜂を使役す 柳澤美晴 花が咲くことを花の武装と捉えた。凛とした主体の姿が花に重なって見えるようだ。花が蜂を使役するという見方も、主体の意志の強さを感じさせる表現だ。リラの花色の描写が美しい。 ②特集「その時歌人たちはどう詠んだか」 三枝昻之「国こぞり電話を呼べどー歌人たちの関東大震災」 〈そのとき、佐佐木信綱は東京本郷の加賀前田家を訪問していた。〉  この論とても面白かった。描き方に臨場感があるのだ。ドキュメンタリー番組のよう