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『歌壇』2023年11月号

①「樹木の歌十首 糸川雅子選」
赤松はひとつのこらず鏡ゆゑ出口のあらぬ赤松林 渡辺松男/黄金の銀杏の道を渡るなりとりかへしつかざることはたれにも 佐藤通雅
〈人間も含めて存在するということの重さと儚さと、そして貴さを、裸形の姿で差し出してくる。〉
 とてもいい選び。渡辺の歌も佐藤の歌も胸に迫る。渡辺の歌の閉塞感、佐藤の歌の虚しさ。どちらもそれぞれの樹木の特徴がよく合っている。特に佐藤の歌の下句はひらがなを多用して、心に沁み込むようだ。

②岩内敏行「時評 歌を読む場について」
〈(『歌壇』連載中の対談企画「うたを生きる、うたに生きる」の8月号で)「SNSのような場で、みんなが発信はするけれど、それを読んで、みんなで話し合う場が非常に薄くなっている」と永田和宏が危惧するくだりがある。ここで川本千栄の『キマイラ文語』(現代短歌社)をおもいだした。(…)時間感覚が変容し、従前より歌への向かい方や読みも希薄に感じられ、世代間の考え方のギャップも想像以上にひらいているのかもしれない。〉
 引いていただきありがとうございます!!発表、発信される短歌の数が膨大になり、一首の歌に掛ける時間は減っている。全てに目を通すのは物理的に不可能だ。手段の一つはコロナ後復活しつつある、歌集の読書会に参加することだ。迂遠なようだが、対面で話す時のボディランゲージ的なものが理解できる・できないに要る。

③「小池光氏に聞く(現代歌人集会春季大会in富山)」
道観に飼はるる猫はキャラメルを今食はむとしてよろづを忘る 斎藤茂吉
大辻隆弘〈(…)「今食はむとして」って八音の字余りじゃないですか。七音にして「食はむとしつつ」とかにできるのに、あえて「今」をいれて字余りにする。ここも茂吉らしいなと思います。〉
小池〈四句を破調にするのは短歌の性質上あるんだよ、昔から。だから破調にしたければ四句に置くとけっこうサマになる。その典型ですね。〉  
 茂吉の歌の魅力を、大辻が小池に聞く。この字余りの話思わずメモ。

2023.11.23.~24. Twitterより編集再掲

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