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『基礎日本語文法─改訂版─』益岡隆志・田窪行則(くろしお出版)

 日本語文法の文法書。通読するものではないのかも知れない。いかに文法用語というのが難解なものかよく分かった。日本語文法でこれだもの、英文法ならさらにそうだろう。今後自分の授業でも自覚していきたい。この本は今後、辞書のように「引く」ために使いたい。そのためにも通読しておいたことは何らかの役に立つだろう。希望的には。

 以下は自分のための忘備録である。

〈子音動詞と母音動詞は、学校文法等での「5段活用」の動詞、「1段活用」の動詞に相当する。〉P.14
 この一つ前に読んだ本は5段、1段という名称だった。名称は複数あるということだ。

〈基本形/タ形〉P.16
 これも前の本では「ル形」と「タ形」という名称だった。

〈漢語や洋語(外来語)は原則として名詞として日本語に入って来る。したがって、漢語や洋語を動詞として使うためには、形式動詞「する」を付ける必要がある。(…)「サボる」、「ダブる」のように、「る」を付ける場合もある。この場合、’~r’を語幹とする子音動詞となる。〉P.19
 動詞で入って来たものでも「する」をつける。「ゲットする」とか。その過去形は「ゴットした」ではなく、「ゲットした」。

〈形容詞は、何らかの状態を表し、述語の働きと名詞の修飾語の働きをする。〉P.21
 今更ながら、そう。日本語の形容詞はそれだけで述語になる。しかし英語の形容詞はbe動詞が必要。ここが日本語話者にはなかなか実感しづらいところだ。

〈形容詞が表す状態には、人やものの属性(性質や特徴)の場合と、人の感情・感覚の場合がある。(…)それぞれ「属性形容詞」、「感情形容詞」という。〉P.21
 属性という言葉も最近よく使われるが、はっきり意味が分かって使われているのだろうか。また、この項で「感情形容詞」の一例に「ほしい」「好きだ」「嫌いだ」が挙げられている。英語と違い過ぎて驚く。こっちが母語なんだけど。

〈借用動詞と同様に(…)借用のナ形容詞が多数存在する。特に、漢語形容詞のナ形容詞における比重は高い。〉P.22
 形容詞と形容動詞と習ったから、ナ形容詞は頭に入り難い。

〈動詞と形容詞が単独で述語になるのに対して、名詞は単独では述語になれない。名詞と結合して述語を作るのが「判定詞」である。判定詞には、文体の違いに対応して、「だ」、「である」、「です」の3つの系列がある。〉P.25
 判定詞、全くの初耳。

〈補足語は一般に、名詞と格助詞で構成される。(…)「が」、「で」、「に」は、いずれも格助詞である。〉P.49
 てにをは、というが、実際の分類は少し違うようだ。

〈「得る」の活用 「基本形 うる」、「タ形 えた」〉P.66
「うる」って現代語でも言うかな?もう「える」が大半では。

〈文が、客観的事態だけを表すのは、接続節の一部等非常に限られている。(…)事態や相手に対する話し手の判断・態度を表す文法形式を一括して「ムード」と呼ぶ。〉P.117
 客観的事態はほんの一部。後は主観…?

〈指し示している対象が特定できない(不特定の)ものは主題にすることができない。〉P.146
〈主題を提示する「は」と、補足語の述語に対する関係を表す格助詞とは文法的な働きが異なるので、一つの名詞がこれら2種の助詞を伴うことは珍しくない。〉P146
 「では」とか。
〈格助詞の中で、「が」と「を」だけは、提題助詞「は」と共に現れることはができない。〉P.146
 「がは」「をは」は無いということ。
〈「象は鼻が長い。」という文には、二重の属性の表現が関係している。すなわち、述語「長い」が「鼻」の属性を表現し、さらに、「鼻が長い」全体が「象」の属性を表現している。ガ格と述語からなる句(「鼻が長い」のような句)の叙述の対象となる主題(「象は鼻が長い」における「象は」のような主題)を「総主」と呼ぶ。〉P.147
 出た…「象は鼻が長い」問題。しかしがんばってこの文法書を読んだおかげで、以前違う本で読んだ時はさっぱり分からなかったが、今は分かったような気がする。多分。

〈主題を持つ文を「有題文」、持たない文を「無題文」という。(…)述語が状態述語である文は一般に、有題文になる。この場合、述語は主題の属性(性質や特徴)を表す。(…)述語が動態述語である場合は、有題文にも無題文にもなり得る。このうち、無題文になるのは、客観的に観察される事態をそのまま描写する場合である。主観を加えないで現象をありのまま描写する文という意味で、この種の文は「現象文」等と呼ばれる。〉P.148
 主題という語も一般的な用語とは違う。また、現象文の定義は写生文に近いと思える。

〈限定修飾を受けた名詞は、繰り返される場合や文脈から明らかな場合には、「の」で代用することができる。〉P.160
 小さいが、重要な「の」。

〈尊敬表現で用いられる接頭辞「お」と「ご」については、「お」は和語(大和言葉)に付き、「ご」は漢語に付くのが原則である。ただし、漢語の中にも(…)「お」が付くものもある。〉P.221
 これはかなり明解な説明だ。

くろしお出版 1992.5. 本体2200円+税10%



 

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