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『短歌研究』2020年6月号

①穂村弘「作り手を変える歌」〈近代から前衛短歌を経てニューウェーブに至る短歌の流れ〉こうした捉え方は短歌史を痩せさせると思う。当然の前提のようにサクッと言ってるのも問題。

②井辻朱美「鍾愛の五首」〈目を閉ぢてこゑを味はふああこゑは体臭よりも肉に即くなり 河野裕子 「声」という形なきもののイデアをとらええたのは、現代の〈卑弥呼〉たる河野裕子ひとりではないか〉声は河野短歌の重要なキーワード。この前後の井辻の文もとてもいい。

③井辻朱美「鍾愛の五首」〈あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ 小野茂樹 ・・・あたかも両性具有の面輪に浮かぶ発語一歩手前の表情〉本当に井辻の歌評の文はいいなあ。読みの文自体が詩のようだ。

④渡辺幸一「津久井やまゆり園事件をめぐる三つの問題」〈日本社会の冷たい潮流が変わらない限り、第二の津久井やまゆり園事件は必ず起きるだろう。〉重要な問題点が整理され、的確に指摘されている。知らなかったことが多く、目が覚める。歌人の間だけでなくもっと広く共有したい論。

⑤松村由利子「ジャーナリスト与謝野晶子 8 ロダンとの出会い」明治時代に私費で夫婦で渡欧する大変さが分かる文。与謝野鉄幹が結構フランス語を喋れた、ロダンと会うのが晶子にとって大きい体験だった、その後彼らの子供を外交官にするべく教育を受けさせたとか知らないエピソード満載。

⑥松村由利子「ジャーナリスト与謝野晶子8」〈・・・けっこうな坂道だったことがわかる。・・・寛の方は立ち止まっては息をつく晶子に「もう、すぐそこじゃないか」と「苦い顔をして急き立てた」という。〉当時晶子は妊娠していた。アカンな、鉄幹。

⑦阿木津英「短歌時評」〈品田悦一講演録の副題「踊らされてはいけない、ぼーっと生きていちゃいけない」は、「美しい国」といった政治的メッセージのみならず、政治と深く結びついた「わかりやすくて軽くてたのしい」ものへ誘おうとする市場原理社会のメッセージにも通じるものだ。〉修飾語句がどこにかかるのか、主語と述語が合ってないのか、文意が分からない。

2020.6.5.~8.Twitterより編集再掲