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『日本語文法演習 話し手の気持ちを表す表現 -モダリティ・終助詞-』三枝令子・中西久美子

 日本語を学ぶ非ネイティブのためのワークブック。日本語文法(国文法、学校文法とは異なる)に則って書かれており、実践的なものになっている。現代語をいわゆる学校文法に則らずに説明するから簡単かと思いきや、イ形容詞・ナ形容詞など知らない用語が多く、逆に難しかったりする。モダリティは「助動詞・助詞」といった考え方ではなく、もっと大きく捉えていて、文節に区切った説明はされていない。また接続も「未然形」などの語を使わず、塊で説明される。というか、こうだからこう、という説明。国文法の「終止形」は「辞書形」。「の」が名詞の代理、それが「ん」に転化するというのも他の本で知っていたので何とかついていけた。「のではない」→「んじゃない」など。
 モダリティが示すのは「断定を避ける、否定、想像、様子、意志、義務・必要、可能・不可能」。終助詞の種類は「ね、よ、だろ・でしょ、じゃない、って、っけ、な・なあ、わ、だ、か」などである。無意識に使っているが、かなり厳密な使い分けがあることが分かった。ネイティブなのに自分が答を間違えるのが嫌。だが、現代日本語を考える上で大きな参考になる本だ。

以下は自分のための覚書である。

・「とはかぎらない」と「わけではない」P9 〈その差が難しい。〉
3 隣りの人は法律を勉強しているようだが、弁護士になりたいと思っている(〇とはかぎらない ✕わけではない)。
6 チャンピオンが負けない(〇とはかぎらない ✕わけではない)。
5 私はたいてい水曜日は家にいるが、毎週いる(〇とはかぎらない ✕わけではない)。
・「だろう(う・よう)」P12 〈これは文語?〉
1 殺人を犯した彼が有罪になったのは当然であろう。(✕意志 〇はっきりわからないことを表す・推量)
・「だろう」と「のだろう」P14 〈この差は微妙。〉
3 雨の日の散歩でビニールを着せられるのは、犬にとっては迷惑(〇だろう ✕なんだろう)。
・「ではないか」と「のではないか」P15 〈ここに論点があったとは。〉
「ではないか」は反論、「のではないか」は主張のやわらげ。
2 こうした不況時にこそ建設的な発想が必要ではないか。(両方)
名詞・ナ形容詞の場合は「~ではないか」が「~のではないか」と同じ意味にも使われる。
・意志動詞の辞書形・マス形…直後に確実に実行する意志、願望がある。P25
・「う・よう」と「つもりだ」P25 〈独り言か人に言うかの差?〉
4 〈お風呂で〉あと10数えたら(〇出よう ✕出るつもりだ)。
4 さあ、今日こそは、なんとしてでもこの仕事を全部(〇片付けてしまおう・✕片付けてしまうつもりだ)!
・「ようがない」P34 言わん??
2 体力がないので、1キロさえ(〇走りようがない ✕走れない)。
・「える」「うる」は意志動詞には接続しにくい。「起こる」「発生する」「想像する」「ある」「考える」「異なる」「成す」など一部の動詞に使用が限られている。P37  〈これは納得。
・「じゃない」の意味 P54 〈何度読んでも分からない。〉
上昇調の「じゃない」は「確認・反論」の意味合いが強く、下降調の「じゃない」は「驚き」の意味合いが強い。〈「~じゃない?」と「~じゃない!」の差と思うのだが、この本に書いてあるより表している意味は広いのでは?「~じゃなぁーい?」とかイントネーションでかなり変わる気がする。〉
・「じゃない」と「の/んじゃない」P55 〈間違い多し。〉
2 今、デパートはセールをやってる(✕じゃない 〇んじゃない)↑。
1 この計算、間違ってる(〇じゃないか ✕んじゃないか)↓。
3 私が言ったように、証明書をもらうには身分証明書が必要(〇じゃない 〇なんじゃない)↓。
1 その部屋暑い(〇の・んじゃない ✕じゃない)↑。他の部屋を使おう。
4 戸棚の中にある(〇の・んじゃない ✕じゃない)↑ /あった、ありがとう。〈まあ言われればそうだ。〉
・「っけ」P63 〈この接続の説明…。〉
名詞・ナ形容詞は「だっけ」「なんだっけ」、動詞の辞書形・イ形容詞は「んだっけ」、動詞のタ形は「んだっけ」「っけ」の形で接続する。
〈問答無用の説明。覚えるしかない。「ったっけ」の項立てが無かったのが残念。〉

スリーエーネットワーク 2003.10. 1300円+税

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