いちじくみたいにひっそり美しい友
いちじくって無花果って書く。
花がない?
そんなことはなくて。
花は実の内に咲いている。
これがつぼみ。
内側に小さな花がいっぱいに咲いている。
外から見えないだけで。
熟すと、その花がたっぷりの実になっている。
かむと、プチプチとつぶつぶの歯ごたえがあって。
全部小さな実なのだ。
外から見えにくいけれど、花が咲いていて、豊かに実る。
そんな女友だちがいる。
ふうちゃん、と呼ぼう。
九州・佐賀に住んでいて、仕事で出会った。
ふうちゃんは焼き物に詳しくて、その案内やライターをしていた。
佐賀には有田焼、唐津焼など有名な窯元が多い。
教えてもらいながら親しくなった。
プライベートでもよく会うようになって、一緒に旅をした。
窯元を巡る旅、美術館、温泉、おいしいもの・・・。
有田の陶器市でアドバイスをしてくれたり。
好みがまったくちがって、ほしいものはかぶらない。
「不思議だねえ」と笑い合って。
韓国へも足を伸ばした。
小さな宿に泊まったら、大きめの布団がひとつしか敷かれていなくて、ひとつ布団に寝たり。
値切っていたら「お金を貸そうか?」ととんちんかんなことをいわれたり。
楽しい珍道中。
私が「ここも見たい」「これがほしい」とガンガン行きたがり、ふうちゃんは「ちょっと休もうか」「一息入れて考えよう」とブレーキをかけてくれた。
ちょうどよく。
私は引っ張っているようで、いつも頼っていた。
ふうちゃんはおっとりとしたやさしい性格が、そのままに出た姿で。
ちょっと個性的なエスニックのプリント生地を着ても、シックに見える。
おしゃれだけどさりげなくて、自分の好きなものを知っていた。
同い年だけど、二人とも晩婚で。
ふうちゃんが結婚した翌年に、私が結婚し。
ふうちゃんが男の子を出産した翌年に、私が出産した。
そういうタイミングってあるんだな。
息子さんがアトピーで苦労したとき、コツコツ看病し、方策を探し。
ご夫君の独身のお姉さんと妹さんが口を出してきても、つかず離れず対応して。
話を聞いていたら、私なら絶対ケンカした、と思うようなことも。
時どき悩みながらも、子どもと自分を守って意志を通した。
いつの間にかその義姉妹とすっかり仲良くなって、時どき家族旅行に出ている。
本当に強い女性って、ふうちゃんみたいな人のことだなって感じ入る。
地味なようで、実り豊かで味わい深くて、美しい。
芯があって、秘めたる花がある。
その花が、外に向かって開いて。
周りから愛されて。
いちじくみたいに。
無花果、ではなくて、内花果って書いてほしい。
あるいは、秘花果。
秘めているけれど、私はあなたの花を知っている。
※イラストはダニエルさんからお借りしました。ありがとうございます。
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