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水まんじゅうとほのかな憂鬱

近所の和菓子屋さんの水まんじゅうはおいしくて、毎年求めに行く。

その涼しげな風情にも、惹かれる。
うっすら透けて見えるあんが、なんとも愛らしい。
恥じらう、乙女のようで。

ひと口、含むと。

半透明のモチモチした生地が、プルプルッとふるえて口の中でサッと割れて、溶けていく。
甘い、あっさりしたあんが、ゆっくり広がる。

夏だなあ。

でも。

沈む、夏。


今日、息子は友だちから花火に誘われていた。
男友だち数人で、広い公園に集まって。

男子校だからね。色気もないね。

でもいいじゃないかな?
楽しんできて。

午後、私は図書館と、買い物に出た。

帰宅したら、変わっていた。
夫から「友だちのワクチン接種の状況を聞いたほうがいい」といわれ、よくわからないからやめる、という。

息子は先日2回目接種を終えたばかり。
まだ移る可能性も、移す可能性も、あるということか。
禁止したわけではなく、確認とリスクを考えてといっただけだけど。

そんな、小さな夏の思い出も作れないなんて(受験生だけど)。

せつない。

私は買ってきた水まんじゅうを、息子に出した。

せめて、心に、甘いものを。

あまりに多い不自由に、つぶされないように。

憂鬱な心を、少しだけでも、ぷるるん、と甘く揺らしたいけれど。

今はまだ。


ありがとう花火と宝石


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