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花咲く前の桜とあなたの中のいっぱいの花

桜は咲く前にぎゅっと体を縮めて、枝にに潜んでいます。
見えないだけです。
つぼみが膨らんで、ようやく「もうすぐ」と思うけれど、散ったその時から桜は次咲く花の準備をしています。

隠れた桜が布を染めた

ふと思い出したのは、桜で染めた布のこと。

志村ふくみさんという染色家で人間国宝の方がいらっしゃいます。
草木染で美しい糸を染め、布を織ります。
随筆家でもあり、「一色一生」で大佛次郎賞を受賞されています。

随筆で織りなされる言葉も美しく、私も何冊か持っています。
今、見つからないので記憶を元に書きます。
間違いがありましたら、ご指摘ください。

20210318志村ふくみ

(写真は志村福美さんの作品です。桜で染めたものではありません。企業メセナ協議会からお借りしました)

染めるとき、主に枝や皮、幹などを使います。咲く花と違う色が出るのがおもしろいところです。

桜はあまり染色に使われませんが、伐採された桜が大量に出たと連絡があった冬、「染めてみよう」と思い立ったそうです。

染めてみると、美しい桜色が出ておどろいたとか。
桜色の糸。
織った布はどれほど美しかったことでしょう。

別の年の初夏、別の場所で桜の終わった枝で再び染める機会がありました。
染めると、灰色になったそうです。

落胆する人々に向かって「これがここの桜の色です」といい切った志村さん。

随筆には「桜は咲く前に幹にいっぱいの花を持っている。外からは見えないだけだ。咲く前の幹や枝からはその花の色が出たのだ」とありました。
冬の枝には、花がいっぱい詰まっていたから桜色に染まったのでしょう。
初夏の桜は花を出し切ったあとなので、灰色だったのです。ただ、その灰色も美しかったことと思います。

外から見えなくても、体の中にたくさんの花を持っている人。
「華のある人」ではありません。

花は咲かなくても、中にあるのです。
まだ咲いていなくても。
いつ咲くかはわかりません。

いつか、咲きます。

あなたの花を信じてほしい。
花が咲くことを。

私も信じています。

赤ひげの桜の花と梅の花

桜とともに思い出したのは、梅の花。
ある小説に二つの花のたとえが出てきました。

「赤ひげ診療譚」(山本周五郎)の主人公は赤ひげ先生ではなく、若い、今でいう研修医のような保本登です。
保本登は、かつて許嫁に裏切られた過去を持っています。

学生時代に読んで、赤ひげ先生こと新出去定の生き方とともに、心に残った表現があります。

登の許嫁だったちぐさは美しい女性でした。登が遊学中に、待ちきれずに別の男と駆け落ちをしました。
その後、紆余曲折の末にその妹のまさをと婚約することになります。
まさをはちぐさほどの器量よしではありません。

登は千種を桜のように美しい女性と思い、まさをは地味ながら梅のような女性だと感じるようになりました。
桜ほどの華やかさはないけれど、梅のようにいずれ実をつける女性だと。
まさをを好ましく感じるようになります。

登は栄達を願わず、一生貧しい医者になる決意をします。それをまさをに伝えると、ついていくと首肯するのです。

私は桜よりも梅のようになりたいと願うようになりました。
香りで春を告げ、長く咲き、実をつける。
その実は役に立ち、人を喜ばせて健康を支える。

梅の実ほどは難しくても、長く咲いて、実るものを持ちたい、と。

今も願っています。

できることは何でしょう。

華やかでなくても、あなたの元気を少しでも引き出せる文を書きたい、と。

人目を引きつけなくても、長く手を取り合える関係をつくりたい、と。

この春、その思いを新たにしました。

ひとつは近所で着物の文化イベントの手伝い。
もっと身近に気軽に着物を着てもらうための、企画書を作っています。
ボランティアですが、具体的に進めることができたらと試行錯誤中です。

noteでも、新しいことをしたいと思っています。
もっと具体的に役に立つのはどんなことなのか。
考えています。


よろしければ、こちらの企画にご参加ください。

あなたを元気づけに伺いたいです。
あなたの中の花を信じてください。
梅も桜も。

2021.03.18 梅一輪 (2)

後半はゼロの紙さんの記事からもインスパイアされました。ゼロさん、ありがとうございます。

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