ふたりの夕飯がちょびっとじゃなくなったとき
「うわあ、お母さん! 今日はごちそうだね! ふたりなのに!」
うれしそうな声に、ドキリ!
この日のメニューは、手羽先の塩焼きにキャベツと油揚げの煮物、トマト、おみそ汁くらいなのに・・・。
「え、そ、そう?」
「だってふたりの時はいっつも、ほんとう~にちょびっと、だもんね」
いわれて、ドキドキ。
確かに、そうだったのだ。
息子が3,4歳のころ。
夫がいるときは、ほぼ一汁三菜か、四菜、作っていた。
でも、息子とふたりきりの時は、ごくかんたんに。
肉野菜炒めと、おみそ汁、とか。
お肉と野菜のたっぷりスープかお鍋と、ごはん、とか。
一汁一菜、みたいな感じ。
いつも「ふ~ん」という顔で何もいわなかったけれど。
そうか、寂しく思っていたんだ、とようやく気がついた。
「今日はいっぱいある!」
無邪気に喜ぶ息子の笑顔を見て、複雑な気持ちになった。
ごめんね。
ふたりの時も、ちゃんと作るね。
それから、息子と二人の時ももう少し(少しね)作るようになった。
でも手の込んだものは作れない。
お迎えに行く時間はいつも延長のギリギリ。
それから急いで帰って、あるものでバタバタと作る。
だからきれいに見える、子どもの好きそうなものをちょこっとプラス。
缶詰か冷凍のコーンに、バターしょうゆをかけたり。
プチトマトと2センチ厚さに切ったきゅうりを塩で和えて、コップに盛ったり。
色がきれいで、子どもが好きなもの。
ちょっと見栄えがするもの。
手間のかからないもの。
ひと品足すだけで、テーブルが明るく見える。
私もちょっと楽しくなった。
あれから少しずつ、ふたりでも3人でも、同じように作るようになっていった。
時短の腕も磨いた。
あの時のひとことがあって、よかった。
ドキッとしたけど。
そうしたら1,2年後。
ふたりで夕ご飯を食べていたら。
「もう食べきれないよ!
お母さん、いつも作りすぎ!」
だって。
ちょうどいいって、難しい・・・。
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