日本遺産であるバナナの叩き売りが教えてくれた無欲の勝利

突然、バナナジュースが飲みたくなりました。彼氏の横でそれを満足しながら飲んでいて思い出したのが、バナナの叩き売りです。

「地元にいれば、今年も近所の祭りでバナナの叩き売り参加してたなぁ」

そう、とても何気ない一言でした。しかし、彼氏からの返答は、

「え、何それ」

まさか……バナナの叩き売りをご存知ない!?

確かに北九州市門司港発祥の文化、ということは知っていました。でも、そこまでマイナー行事とは思ってなかったのです。

というわけで、今日はバナナの叩き売りを知らない人に簡単にバナナの叩き売りについて紹介します。詳しい発祥などに興味がある方は、こちらのサイトにまとめられているので見てください。

要するにバナナの叩き売りとは競りです。しかも、値段が下がっていくバージョンの。

「バナちゃん節」という口上で客を集めるところからバナナの叩き売りは始まります。この口上が寅さん風味で何ともノスタルジック。

もしかすると、地元の人でないと口調が強く感じられるかもしれませんが、彼らは決して怒っていません。

そして、スーパーで売っているバナナひと房の2、3倍はあるという大きさのバナナが登場します。

大抵は1000円くらいから値段はスタートしますが、焦ってはいけません。そもそも、1000円は確実にぼったくりです。ここで買うのは素人です。むしろ、

「高いよ!」「まけて!」

と野次を飛ばすのが正解です。

そして、それに応えるようにバナナの値段は少しずつ下がっていきます。ここでも焦ってはいけません。

できるだけ下げさせて「今だ!」と思った時に手を挙げてください。そうすると、手を挙げた人たちの中から選ばれた人にその代金と引き換えにバナナを得ることができます。

彼らも売りたい、こちらも買いたい……楽しくも真剣勝負なのです。

目安としては700円くらいでしょうか。600円なら安い、500円ならよくやった!というところです。

小学生の頃から、もともとバナナが好きだった私はこのバナナの叩き売りが楽しみでした。今で言うライブ感が良かったのかもしれません。一緒にお客さんたちと盛り上がれる、最後のもち拾い並みに盛り上がる演目でした。

小学生ですから、500円くらいまではできれば下げてほしいところです。そうでないと、お祭りで他にもスーパーボールすくいで遊んだり、一銭焼きが食べたりできないのです。

なのに、周りの大人たちは700円、600円で買っていきます。(素人が!もっと値下げさせろ!)と胸の中で呟く偉そうな小学生でした。

今でも覚えているのは、当時仲の良かった友人の弟が買った時のことです。

口上に合わせてバナナを売る彼らは、茶目っ気も忘れません。

「はい!このバナナ、100円!」

なんて言って、みんなが勢いよく手を挙げると、

「1本だけだけどね」

とちぎったバナナを1本見せて、周りは「なんだぁ~」と笑いながら手を下ろしていきます。

そんな中、弟くんだけは小さな手を空にピン、と伸ばしたまま下ろしませんでした。それはもう純粋な眼差しで1本のバナナを見つめていました。

「お!じゃあ、そこの僕おいで!」

呼ばれた弟くんは、100円玉手に向かいます。すると、手渡されたのは1本のバナナとそれまで700、600円で取引されていた1房のバナナでした。

会場は大盛り上がり。

無欲の勝利、とはこういうことを言うのだと思い知りました。

ちなみに日本遺産、というのは何も私の個人的な主張ではありません。

2017年に「関門ノスタルジック海峡」の構成文化財の一つとして認定されたそうです。バナナの叩き売りは好きでしたが、まさかそんなことになっているとは、今日まで知りませんでした。

門司港では今でも定期的にバナナの叩き売りをしているとか。興味がある方は、ぜひ門司港、そして北九州に来ちゃりー!

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