「14歳からの世界史」 ☆☆

言いたいことは無かないが悪かない、のは間違いない

14歳からのプログラミング、の方が読んだ後の「うまいなこれーーーー!」感は大きかった、と先に言っておく。正直大学生のときの授業にあった情報基礎とか、この本先に読んだ方がわかりやすいまでないか、まじでおすすめ!と思ったのだが、14歳からの世界史に関しては、最初の四大文明とか中世くらいまではほどよくまとまっていたと思う。 かっ飛ばしているところはかっ飛ばしていて、日本も平安~江戸までを5pくらいで駆け抜け、文化として俳句のみを紹介しているというかっ飛ばしぶりだが、ほかの文明もこれくらいかっ飛ばして書かれているのだな、と参考にはなった。世界から見た日本の解像度の粗さ、という意味において参考になったのは確かだ。個人的には俳句より源氏物語を推したいところである。 ただ、個人的にはすすめにくいな、と思っている点もあって、近世のボリュームの多さが特徴だ。だが、その近世の部分は、あえて露悪的に言えば、自分は中立だという顔をしながらドイツや日本は因果応報であるとさりげなく刷り込む、という感じなのだ。そのさりげなさがある種秀逸なため、近世部分に関してはフォローなしでよむのはお勧めできないな、というのが正直な感想である。ちなみに、フォローと言えば、中国に関しては、「皇帝が立って農民がそれを打ち倒す」というのを繰り返していた、みたいな前情報というか世界史の見方、みたいなものをざっくり教わってから読んだ方が読みやすいなあ、と思ったのも確かである。

この本に違和感を覚えるかどうか、それが教育の成否を分ける、分水嶺ではないか?

先述の通り、近世の偏り、が、すごく自然なのだ。近世の帝国主義について、行為主がアメリカであれ、「誰が自分の自由を奪われて嬉しいだろう?」と、アメリカについても批判すべきことはする、中立な立場だという顔をしている、そこまでは、まあ、いいだろう。個人的に納得いかないのは、同時に、日本やドイツは因果応報なのだ、ということを実にさりげなく訴えかけてくるのだ。例えば、本書の中で「強姦」という単語が使われたのはたった一回。主語は日本である。一方で、アメリカが日本に原爆を落としたという話題は、死者の人数(ときのこ雲のイラスト)のみで、強姦、ほど具体的に想像できるような直接的な言葉はない、というさりげない配慮が透けて見えるのだ。私が妙に言葉というものへの感受性が高いだけで、気にならないひとには気にならないかもしれないし、後述の通り、「自分が日本人である」という偏りを自覚するにはいい機会という利点もあるので、難しいところだ。ただ、とにかく、これを鵜呑みにするのは少し危険な気がするので、天下のダイヤモンド社のベストセラーというと、買って子供に与えて放置、という親も多いのではないかと思うのだが、少し心配である。

日本人である、という偏りを自覚するいい機会

日本国外から見れば、天皇ヒロヒト、と書くことに、何も感じないのだろうが、個人的には、昭和天皇は昭和天皇であって、ヒロヒト、みたいに個人名を呼ばれるのを見ると、どこか、おにぎりを踏んでしまったような居心地の悪さを覚えるのだが、それは自分が日本人であるから偏りなのだろうな、と自覚できた。そういう意味では得るものが多い本であったのは間違いないと思う。

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