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桃鉄に疲れた方に送るボードゲーム~愛に包まれた旅行体験「ラメットサミット」

「ラメットサミット」は日本全国を駆け巡る旅行ゲーム。日本のあちこちに出没する「珠洲ノらめる」さんを追いかけながら、旅先で美味しいものを食べたり、温泉入ったりしちゃうんです。

珠洲ノらめるってどんな方?

まぁ多くの皆様にとってはそうですよね。まずはそこからいきましょか。

珠洲ノらめるさんの肩書きは…twitterによれば「歌手・イラストレーター・ボードゲーマー・ポートレートモデル」とのこと。以前はボードゲームアイドルと名乗られていたはずですが、いまはアイドルは卒業したことになっているみたいです。最新の彼女の活動状況はこちら。

かつて「日本全国ボドゲの旅」と称して47都道府県を2周した彼女は、行く先々のボドゲカフェやゲームショップなどを巡ってボードゲームの楽しさを伝えて回りました(アイドルというよりお遍路さんか修行僧みたい)。

本記事で紹介する「ラメットサミット」には、そんな彼女のボードゲームに対する愛や旅先で出会ったファンとの想い出、そして全国を旅した体験そのものが詰まっています。言うなれば本作はらめるさんが行なった「日本全国ボドゲの旅」を、追いかける側の立場から追体験するゲームなのです。

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「ラメットサミット」の遊びかた

注:ここでの説明はあくまで概略です。必ずしもルールすべてを網羅しているわけではございませんので、実際のプレイにおいては付属のドキュメントをご参照ください。

基本的なルールは日本全国をマス目にしたすごろくです。プレイヤーは6面ダイス+4面ダイスを振ってどの方向に進むのかを決めます。

ラメットサミットゲーム盤

▲ゲームボードはこんな感じね。いまはざっと見てもらえたらOKです。

ただし進み方にはちょっとしたルールがあります。それは「ダイスひとつに対して進める方向がひとつ」ということ。例えば「4」と「3」の面を出したときは「右上に4、下に3」みたいな進み方をします。このルールに乗っ取ってさえいれば、一直線に進むのも来た道を戻るのもOKです。ただし他プレイヤーがいるところには入れません(イベント開催場所と空港は例外的に何人入ってもOK)。

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▲使用するダイスは6面ダイスと4面ダイス。2つとも振ったうえで、進める方向を見定めます。どっちなら進めるのかな…?

またもうひとつ特徴的なルールとして、そのとき出た目ではどうしても進めないときに限り「パス」となります。しかし進める場所があるのならパスはできないことになっています。このため、目的地を前にして泣く泣く遠ざかるというときもあります。
(移動ダイスの一方が4面ダイスなのは、たぶんこの行き詰まりを少しでも解消するためのゲームデザイン上の配慮と思われます)

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▲沖縄(笑)。この通りのマスしかないので、進むのがとても大変です。

進み方についてはまぁそんなとこで良いでしょう。ところで「目的地」って言葉が出ましたが、そもそもこのゲーム、いったいどこに向かって進むのでしょうか?

はい、それはもちろん「らめるさんがいるところ」です。

らめるさんは日本全国ボドゲの旅をしています。ゲームボードの中には数字が書いてあるマスがありますが、これのどれかにらめるさんがいるのです(これを「イベント開催場所」と言います)。

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▲この一番右側奥にいるのがらめるコマ(能登半島のあたり?)。
ここも行くの大変なんだよね…。

らめるさんは誰かしらがたどり着くまでその場所にいますが、誰かがゴールしてからプレイヤー手番が一巡するまでそこにいて、そのあと別の場所に移動します。どこへ?それはプレイヤーの移動と同じく6面ダイス+4面ダイスで決まります。
こうして全国のどこに飛んでいくか分からないらめるさんをひたすら追いかけていくのがこの「ラメットサミット」。推しへの愛が試されるゲームでもあるのです。

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▲らめるさんは外周(都道府県の数に合わせて47マス)を回って行き先を決めます。下ひと桁の数+色で行き先が決まるのです。この場合は「青の5」のマスがイベント開催場所となります。

ただしプレイヤーの側にはらめるさんを追いかけるだけでなく様々な要素が用意されています。何といっても旅の醍醐味は美味しい食事!そして温泉!レジャー!これらのマス(6種類あり、色が付いています)に止まることでその色に応じた旅行体験をしたことになり、行脚写真カードがもらえます。

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▲本作におけるアートワークも珠洲ノらめるさんがご自身にて手掛けておられます。カードのデザインも合わせて着目していただければ幸いです。

これらはただ所持していてもいいし、SNSにアップしてもいいです。どちらを選ぶかは最終得点に影響するので、そのあたりの判断も求められます(本章後半の得点についての記述を参照)。

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▲行脚写真カードをひたすら集めていくのも手。ちなみにこのゲームのカードはセリアで購入可能なカードスリーブの大きさに合わせて作ったのだそうです(ただしいまでも売っているのかは不明)。

またボードにはショップというマスがあり、ゲームを有効に進行できる3種類のチケットカードを有効化したり逆に無効化したりできます(ひっくり返すと得点になるのです。これを「カードを売る」と言います)。これらも上手く使うことで得点アップにつながりますが、ここで欲張り過ぎると後で手痛いしっぺ返しを喰らうこともあります。たとえば飛行機チケットを無効にして沖縄に飛ぶとしばらく帰って来れなくなったりもします。

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さて、いろいろ端折って説明しましたが、最後にゲームの終わり方についてお話ししましょう。

まず終了条件について。ひとつはらめるさんが47都道府県ツアーを達成したとき(つまり外周マス47個目もしくはそれ以上のところに到達したとき)。このときはその場で行なわれるらめるイベントを最後としてゲームが終わります。もうひとつは行脚写真カードの山が2つなくなったとき。これもその時点で行なわれているらめるイベントが最後となります。

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こうしてらめるさんの日本全国ボドゲの旅が終わったときに各プレイヤーがそれまでに得た得点を合計し、もっとも得点の高かったプレイヤーが勝者となります。

得点についてはいろいろなゲットの仕方があるのですが、王道はらめるさんのところにたどり着き、一緒にボードゲームで遊ぶこと。サイコロひとつ分でピッタリの目でたどり着けば6点、ピッタリじゃなくても余りの分を減算した分の得点が入ります(例えば2余りなら4点になる)。

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▲イベント満員御礼~。みんなでらめるさんと遊びましょ。なかなかこうはならないですけどね…。

観光も貴重な得点源です。ゲームの最後に各プレイヤーの行脚写真カードを数え、各色ごとに一番枚数を持っていたプレイヤーが5点ゲット。またこれに満たなかった場合、同色カードを3枚以上持っていたらそれぞれ3枚ごとに1点ゲットすることができます。

また「SNSにアップする」というアクションを行なった場合、最初にアップしたときのみ1点ゲット、以降はアップした枚数分が最終的に最多枚数保持者の得点にプラスされます。

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▲肉カード集めて肉長者になったの図。このときの得点は1位ボーナス5点+初回SNSで1点+SNSにあげた枚数4点で何と10点ゲット!ちなみに肉カードのビジュアルは「さわやか」がモデルなんだってさ。

あとはショップで手持ちのチケットを売ったりした場合も1枚やるごとに1点になるので、こういうのも意外とバカにならない…かもしれません。

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▲ショップにてカードを裏返す(売る)と1枚1点に。ただしその分ゲームで使える効果が減るので、そこはよく考えよう。

まぁ~説明が散漫になりましたが、要はゴールがちょくちょく移動するすごろくなんですよ。プレイヤーはそのゴール(らめるさん)を目指しつつ観光しつつで日本全国を駆け巡る。「ラメットサミット」とはそんな「推しへの愛に包まれた旅行体験」なのです。


どうして「旅ゲー」はどれもこれも殺伐としているのか?(特に桃鉄お前な)

ゲームの説明にだいぶ行数使っちゃいました。いまから書くことが実は一番言いたいことでございます。じゃあそこから書き始めろよ!って話ですが、どんなゲームか分からないと話を始めることも難しいですからね。とはいえここの見出しで言いたいことほぼ全部みたいなもんですけど。

私的呼称ですが、具体的な地名を伴った場所を移動しながら目的を果たしていくゲーム作品を「旅ゲーム」略して「旅ゲー」と呼んでいます。

旅ゲーにはどんなのがあるか。日本で一番有名な旅ゲーは言うまでもなく「桃鉄」(桃太郎電鉄シリーズ)でしょう。もともとファミコン向けに発売された「桃太郎伝説」というRPGの派生作品として作られたこの作品は以後「桃伝」以上にシリーズ化を重ね、我が国における旅ゲーの代表作としての立場を不動のものとしました。あとは「桃鉄」ほどメジャーにはなれませんでしたが、「日本特急旅行ゲーム」も同じようなゲーム性を持っています。どちらが好きかは好みによるでしょう。

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ボドゲではどうか。最も有名なのは言うまでもなく「チケット トゥ ライド」でしょう。人によっては「エルフェンランド」と言うかもしれません。内容が刑事ものとは言え「スコットランドヤード」は?これも各地を回るゲームには違いないよ?でもそんなことを言ったら不動産ゲームの代表格「モノポリー」だって旅ゲーに入れなきゃね?

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OK、これらみんな旅ゲーってことにしましょ。

で、何が言いたいかって言うと

「旅ゲーって旅するゲームのはずなのに、何かと殺伐としてるよね?」

ってことです。

その最たるものが私は「桃鉄」だと思っていて、あのゲームはプレイヤーの判断または運(特に運の要素がクソ多い)によってゲーム序盤から大きな差が付くゲームデザインになっていると思います。具体的に言っちゃうと序盤でキングボンビーを引いちゃったプレイヤーが後から挽回するのがかなり難しいですよね。あとカードの種類が非常に多いのはともかくとして、一部のカードの使い方を知っているか否かでプレイ結果に大きな差を生みやすいといったような、みんなで遊ぶ前提のパーティーゲームでその差のつけ方はどうなのよという要素も多いと感じます。
いや、私だって全部遊んだワケじゃないから、この物言いが十羽ひとからげの暴論になってることは否定しませんよ。が、いかんせん「桃鉄」って新作が出るたびにゲームバランスについての話(特にプレイヤー間に生じさせる格差について)が話題の中心になってる感があるので、それ自体「桃鉄」が「そういうもの」って認識されてることの証左じゃないのかなぁ…。

「日本特急旅行ゲーム」はどうでしょうか。こちらにはキングボンビーみたいな凶悪な妨害キャラは登場しませんが、目的地カードの引き次第ではキングボンビー以上の不利な状況が出現します(極端な話、引いた瞬間に負けが確定するような行き先が設定されることもあります)。こういうのだって、特定のプレイヤーに理不尽過ぎるレベルでの不利を押し付けるゲームデザインと言えますよねぇ。

あとこれは「桃鉄」だけじゃなく、さっきあげた旅ゲーすべてに言えることなのですが、

「何らかの手段で他プレイヤーを妨害することができる」

ということ。ひとつひとつあげていくと、

桃鉄:多種多様な妨害や足止めカードが存在
日本特急旅行ゲーム:上に同じ
チケット トゥ ライド:特定の線路を占拠する足止めが可能
エルフェンランド:その名もズバリ「障害タイル」というのがある
スコットランドヤード:まぁ妨害(攪乱)するのが犯人の仕事だし…
モノポリー:すべての他者を破産させるのが目的のゲームです(終)

と、このような具合に、おおよそほとんどの旅ゲーは他者を妨害することでゲーム進行を有利にするギミックが盛り込まれています。まぁそれがゲームだからって言っちゃそれまでですが、でも考えてほしいんです。

「ねぇ?それって本当に “旅の楽しさ” なのかな?」

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「ラメットサミット」が愛に包まれている理由

はい、ここでもう一度「ラメットサミット」のルールを思い出して(または読み返して)みてほしいのです。

ゲームの目的は全国各地に出没するらめるさんに会うべく旅を続けること。
そして観光したり美味しいものを食べたりレジャーしたりして楽しむこと。
いちばんたくさんらめるさんに会えたり観光したりした人が基本的に勝ち!

これのどこかに「カードの引きによって理不尽なまでに不利になる」ような要素がありますか?

これのどこかに「他プレイヤーを妨害する」ような要素がありますか?

とんでもありません。

誰かしら「推し」が存在する世界で、他の同志はみんな仲間です。それぞれ推し度合いや楽しみ方において異なったパラメータは存在するでしょうが、それでもみんな「推しへの愛」で繋がっているという点において大きな差はないのです。だから不当な手段で他者を貶めるようなことは有り得ません。私はいくつかの茅原実里さんの現場でこのことを身をもって実感しました。きっとらめるさんの現場もかくありなんと推察します。

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▲「ラメットサミット」はプレイ中も終始和やか。インストしながらのプレイということもありましたが、各プレイヤーは足を引っ張り合うようなことはせず、むしろみんなで有利な進み方を教えあったりすらします。

ゲームに限らず、創作物はデザインした方の経験則や人生観を多少なりとも反映したものになると思っています。「ラメットサミット」をプレイして感じたことは、全国を巡る旅の過程でらめるさんがどんな体験をし、どんなファンに支えられ、どんな想いでファンに向き合ってきたかというその愛情の集積でした。だから「ラメットサミット」は温かい。愛がある。誰も邪魔しない。みんな各々の楽しみ方を尊重する。

愛に包まれた旅行体験「ラメットサミット」。
疲れた私たちに必要だったのは、このゲームだったのかも知れません。


すこーしだけ意見を…

そんなふうにすっかり惚れ込んだ「ラメットサミット」ですが、どうにもセールス的には苦労されているようで。

ということでここからは意見ね。
なるべく苦言にならないように配慮しますが…。

まず「結構値段するゲームの割に見た目がちょっと地味だよね」ってこと。
(あ、いまらめるさんがちょっと凹んだかも…スミマセンっ)

ラメットサミット勝手に地名入れる前

遊んでみれば良い作品なのは分かるのですが、ゲームって基本的に購入前の段階では見た目で決められちゃうところがあるからねー。

あと私的に思っているのは、この手の旅ゲーってやっぱし「地名」が書いてあることがマストだと思っているのですよ。プレイヤー間の会話も「そこは俺の実家があるところだ」とか「ここで名物の○○○を食うねん」といったような盛り上がりの要素にもつながると思うのですよ。

そこで…。じゃーん!!

ラメットサミット勝手に地名

例えばこんな風に地名入れたら盤面が賑やかになって、しかも地味さが少し解消されちゃったりするんじゃないのかなぁ~!!

作者である珠洲ノらめるさんに許可を取らないで勝手にこんな魔改造したらダメでしょうけど、盤面をA3カラーコピーか何かしたらワンチャンいけるんじゃね?とか思っちゃいました。もし許していただけるのであれば特殊なマスすべてに地名が入った盤面データ(pdf)を作成したりとか…。らめるさん的にはいかがなもんでしょうか?

あとは…これはゲームとは本質的に関係ないのですが、らめるさんを題材にしたゲームなので、ゲームパッケージ内にらめるさんの観光してるリアル画像とかが何らかの形で入っていれば、ご本人を直接知らない方が見てもその旅の様子をイメージしやすいんじゃないかな?とか思ったりしました。

まぁでも、ビジュアル的なことを除けばゲーム的な不満点はありません。
サイコロの目以外で極端な有利不利が出にくいゲームデザインになっているので、初心者に優しくて上級者が必ずしも有利ではないルールに仕上がっています。これは本当に、愛に満ちた旅ゲーだと思います。

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Special thanks!(珠洲ノらめるさん、そして放課後ぼーどげーむ会の皆様)

この記事を書くにあたり、珠洲ノらめるさんご本人よりゲーム内素材使用の認可をいただきました(ゲーム紹介はここが一番難しいところなのです)。なのでこちらも遠慮することなく、ゲームの深い部分までしっかり踏み込んだご紹介をすることができました。

さらに、うにかんてんてー様が主催される「放課後ボードゲーム会」にお招きいただき、作者である珠洲ノらめるさん直々に本作のご指導をいただけたことは、ボードゲームプレイヤーとしてこのうえ無き僥倖でございました。

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珠洲ノらめるさん、そして主催のうにかんてんてー様、不慣れな私に対して温かく接してくださった放課後ボードゲーム会の皆様、本当に本当にどうもありがとうございました。よろしければ、またぜひご一緒させてください!どうか今後とも。是非にっ!!

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