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そごう・西武の売却を巡る問題は、浪花節でも経済でもなく、街づくりの観念から捉えるべき

ちょっと時事ネタ書きます。既に報道されているように、百貨店グループであるそごう・西武の売却を巡り、8月31日に同社の旗艦店である西武池袋本店でストライキが実施されました。

撮影:chitoseArk
撮影:chitoseArk
撮影:chitoseArk
撮影:chitoseArk

事の発端はそごうならびに西武百貨店の親会社であるセブン&アイ・ホールディングスがその経営不振の状況からそごう・セブンを外資ファンドであるフォートレス・インベストメント・グループに売却すると発表されたこと。

フォートレスはそごう・西武を買収後、西武池袋本店の主要フロアにヨドバシカメラを入店させる計画を明らかにしており、今回のストは今後の雇用維持を巡る不安と伝統ある西武池袋にヨドバシを入店させることに対する抵抗がないまぜになったものです。

本件についてのニュースソースはたくさんありますが、最も全体的な流れが分かるものとして以下を紹介しておきましょう。

まぁ結論から言うと、売却決定しちゃったんですけどね。
スト当日に決定・発表したあたりにはそごう・西武労組への当てつけを強く意識したものだと感じます。

これに対する市井の声を拾ったものはこちら。
Yahoo!とYouTube両方出しておきます。

本件を巡っては様々な意見が飛び交っておりますが、おおむね以下の2つに大別されます。

1.買収賛成(スト否定)派:
「もう百貨店などという営業形態が時代に合っていない。利益を生めないなら売却、リストラされるのは当然」
「会社側が不当に搾取しているのならストもいいが、今回のケースに関して言えば利益の出ていない事業の売却阻止というのは無理筋」
「ヨドバシが来るの良いじゃないか。時代の流れに沿って新しい商業施設になることはむしろ歓迎」

2.買収反対(スト容認)派:
「池袋の象徴的だった西武百貨店が変わってしまうのは、時代の流れとは言え寂しい」
「セブン&アイは百貨店事業の再成長を目指すとしてそごう・西武の親会社となったのに、それを外資に売却するのは裏切り行為だ」
「ストライキは憲法によって認められた労働者の権利。労使の合意が形成されない決議に反旗を翻すは当然。応援する」

文言はすべて代表的なものをセレクトしたうえリライトしています。
ネットを探しても同一のコメントはありませんのでご了承ください。


私の意見を言う前に、西武百貨店池袋本店に対する私の立場を明らかにしておきます。

PHOTO ACより

詳細は情報保護の観点からお伝えしかねますが、私は西武鉄道の沿線で生まれ育ちました。西武百貨店池袋本店はときたま休日に両親に連れて行ってもらう場所であり、そこの8階のレストランで注文していたお子様ランチやハンバーグ、クリームソーダは私のお気に入りでした。思えば私の緑色好きは、あのクリームソーダに端を発しているのかもしれません(諸説あり)。

現在も贈答品や大切な日のケーキを買うときなどは、第一候補として西武百貨店池袋本店を選択します(たまに東武に浮気しますw)。また屋上にある「かるかや」といううどん屋が超大好きで、あそこ目当てに行っていろいろ買い物したりもします。
あと実はあるテナントに私の会社の製品が…(ビビー⚡禁則事項!!)。

そんな西武百貨店とともに育ち育てられてきた私ですから、心情的にはこのニュース、並々ならぬ思いで見ております。ハイブランドを守り続けてきた西武百貨店にヨドバシが来るなんて…という思いは少なからずあります。また私自身がサラリーマンなので、理不尽な上層部の決定には断固戦うぞ!という気持ちにはとても共感するところでございます。

しかしながら私自身はサラリーマンなので、その抵抗が何の効果ももたらさないであろうこともまた理解しております。ましてこれ4年連続最終赤字の会社ですからね。普通に考えたら売却という意思決定が当然でしょう。まさかスト当日に決議するとは思わなかったけれど。

心情的には残してほしいけど、経済としてはそれは許されない。
でもだったら、文化資産としての価値観はどうなのか?

そう、冒頭に書いたタイトル、

そごう・西武の売却を巡る問題は、浪花節でも経済でもなく、街づくりの観念から捉えるべき


これが今回、私が本件において最も主張したいこと。

ヨーロッパの街を歩いたことのある方は経験的に分かると思うのですが、「何でこんなに古い建造物がいまも現役なのか?」と驚かされることが少なくありません。例えば次の写真はドイツ・ミュンヘンの市庁舎です。

PHOTO ACより

そして下図は、その市庁舎から眺めたミュンヘンの街並みです。

PHOTO ACより

ミュンヘンってテーマパークか何かなの?いえいえそんなことはありません。ドイツでは第3の規模を誇る都市とのこと。また私はドイツを含むいくつかの国に行きましたが、どの国も新しい建物が建てられる一方で、伝統的な旧来の建造物も大切にしておられます。

これが「街づくり」というものです。

「経営が成り立たないんだから潰して当然」「いや無くなるのはやはり寂しいから」という議論に最も欠けているのはそこの視点。

西武百貨店は池袋の「街の顔」なのでしょう?
だったらそこを徹底的に守り抜くことが本筋ではございませんか。

ただしこれは企業の力だけでは無理です。
池袋を訪れるすべての人たちに、どんな街の顔をお見せしたいか、そんな「街づくり」は、これ本来的には行政の仕事です。

行政は何て言ってるのか。
このようにコメントしておられます。
少し長いですが、引用します。

豊島区の高際みゆき区長は、記者団に対し、「区にとっても西武池袋本店は、これまで一緒にまちづくりを担ってきたパートナーであり、その従業員の方がどんな気持ちできょうを迎えたかと思うと胸が痛みます。売却後の雇用の継続について労使が良い形で協議して新しいスタートを切ってほしいと願っていたのでストライキに至ったことには残念な気持ちがあります」と述べました。

そのうえで、そごう・西武の親会社のセブン&アイ・ホールディングスが31日の取締役会で、アメリカの投資ファンドへの売却を決めたことについては、「どこにどういうテナントが入るというのは口出しする立場にはないので見守っていくことになります。セブン側からは、今後の西武池袋本店には、そごう・西武とヨドバシカメラが概ね半分ずつ入られると聞いていますが、当然客層も変わり、街のにぎわいも変わるので期待している部分でもあるし心配している部分でもあります。これからは、地元とも一緒に豊島区の街の魅力が増すような取り組みをしていけることを期待しています」と、述べました。

NHK NEWS Webより

うーん…この方(豊島区長、高際みゆき氏)は今年の4月に就任された方なんだよね。だからこの件について及び腰なのかも知れないけれど…。

「どこにどういうテナントが入るというのは口出しする立場にはない」っていうけど、貴方の前職だった高野之夫氏(本年2月没)は「国際アート・カルチャー都市構想」ならびに「東アジア文化都市」さらに「劇場都市」なるお題目を掲げて、池袋のアニメイト周辺をそれまでとはまったく別物の街に作り替えてしまいましたからね?

PHOTO ACより

その街の変貌ぶりは、久々に来たら目を回すくらいです。アニメ・漫画の街として生まれ変わった池袋のアニメイトならびにハレザの周辺は、これこそまさに文化都市としてのロールモデルだと感じます。

豊島区にはこのような実績があります。すなわち「官民一体」の街づくりはできるのですよ。

じゃあ、ここどうするのかって話です。

PHOTO ACより

この「SEIBU」の看板の代わりに「ヨドバシカメラ」とかが入ったら、池袋の玄関口として相応しいと思う?

PHOTO ACより

別にヨドカメが悪いとかじゃないんですよ。私もヨドカメで買い物するし。

問題は駅の顔として相応しいかどうかってところ。

経営がどうのこうの聞いてるんじゃないですからね?
私たちの池袋がそうなっても、私たちは池袋に誇りを持ち続けられるのかって聞いてるんですからね?

以上は私の郷土愛から来る身勝手な思いです。
皆様においては、ご自身の地元の駅に置き換えてお読みください。

それでもいいって言うんならそれでいいんでしょうけれども、もし自分の街の顔を意図しない形に作り替えられるのが嫌なら、そこに対するテコ入れはなされるべき。それを行なうのは行政の仕事だと私は思います。

そういう意味では、この話の中に豊島区が積極的に介入しなかったことが、いまさらですが残念でなりません。高際区長ならびに豊島区政には「これまで一緒にまちづくりを担ってきたパートナー」である西武池袋本店についていまからでもできることを考えてもらえたらと願う次第です。

(ただねぇ…じゃあ具体的にどうするのが良かったのかって言われると悩みどころなんだよよね。百貨店に対して行政が補助金を出して延命させ続けるのは安易過ぎるし、第一それこそ民意が黙っちゃいますまい。区役所機能の一部を池袋駅構内に移してしまうとかもアリかと思ったけど、それはそれでイメージ変わってしまうか。それに豊島区役所って2015年に移転したばっかりなんだよね…)

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