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晩秋の湖南(3)・石山寺

最終話です。前回はこちら↓↓↓


「石山寺」はその名の通り、石の山に建つお寺です。
特に「本堂」の下は世界的にも珍しい天然記念物の珪灰石けいかいせき(ウラストナイト)という巨大な岩盤になっています。

それはなんぞや?と思ってウィキで確認しようと3回読んでみてもさっぱりわからなくて、お手上げです。

石灰岩花崗岩などのマグマが貫入してきた際、その接触部付近にできるスカルン鉱物方解石(CaCO3)中のカルシウムとマグマ中のケイ酸が反応してできる。

Wikipedia

これこそ「ブラタモリ」で採りあげるべき寺ではないのか?
タモさん好物のまんま岩石で成り立っているのだから、マジで番組へリクエストしようかと思っています。

タモさ~ん!珍しい石の寺がありますよ~!


「石山寺硅灰石」本堂前には大迫力の奇石がある。
右上にあるのが「多宝塔」

とにかく、石の土台の上にあるから寺の名の由来になっているのです。

多宝塔付近の地面もまさしく岩盤だった。


石山寺プロフィール

現地でもらったリーフレットより
HPのものを切り取ろうかと思ったら、なんせ大きすぎて収まらなかった。

結論から言うと、事前にネットリサーチしていたにも関わらず、見逃しているものがたくさんあった事に愕然としています。

こうやって地図のように俯瞰するとよくわかるのですが、実際に境内の中にいると、現在地がわからなくなってしまうのです。


「東大門」
建立は鎌倉時代ですが、慶長時期に淀君からの寄進で新築同様に修繕。
入母屋造りの大きな屋根の反りが美しく、全体的にバランスのよい姿。
両サイドの仁王像は鎌倉時代の運慶・湛慶の作。

おまけに全体的に急勾配なので、足元を気にしなければならず、優雅に紅葉を楽しんでばかりもいられません。

しかし、ハードな立地のお寺にもかかわらず、私達のような老夫婦や、もっと年配の方々も多く見受けられ、内心、驚嘆してしまいました。

足腰は鍛えておかなければいけないと、痛感した次第です。


奈良時代、天平年間の寺

聖武天皇の勅願による天平19年(747)の創建なので、今年で1275年目になるのですから、かなり歴史あるお寺です。

山号は石光山せっこうざんというのですが、勝手な妄想ですが、やはり珍しい石でできた山なので、その昔は陽の光を浴びて光っていたのでしょうか?


良弁僧正りょうべんそうじょうと東大寺

創建したのは良弁であると知り、
「あなたはこんなところにも貢献していたの?」と、まるで旧知の友と出会ったような感覚に捉われました。

それは良弁僧正に関して、過去にも記事にさせていただいていたからです。

ちょうど東大寺も同じ頃の創建で、現在よりももっと大きな伽藍でした。
相当な量の建築資材を要したたため、この地が木材の集散地となったのです。

すぐ近くの琵琶湖より流れる瀬田川から、淀川~大和川という水路で南都まで送り出す事ができる好立地でもあったからです。

それにしても、東大寺は今でも十分大きいのですが、当時の大きさはいったいどんなものだったのでしょう。

東大寺建立は大きな国家プロジェクトだったのを思うと、良弁僧正と石山寺の果たした役割はとてつもなく大きいものですね。


東寺真言宗

よく見るとただの真言宗ではなく、東寺真言宗となっています。
あれ??高野山にある空海の「金剛峯寺」と違うのかと思って調べると、これもまた先ほどの「三井寺」と同じく、枝派した「真言宗」でした。

やはり、同じ「真言宗」とはいえ、高野山とどちらが本家なのかと揉めた過去もあるようで、こちらも宗祖の弘法大師・空海の教えとは裏腹に、なんとも煩悩の多い弟子たちのようです。

この石山寺は「大本山」ですが、「総本山」は京都の「東寺」で宗派の名もそのまま「東寺真言宗」なのです。

だいたい、「大本山」と「総本山」の位はどちらが上なのかというと、「総本山」が上で、石山寺は「大本山」なので、そのすぐ下の位なのです。

たとえ天然記念物の岩石があろうと、京都のお寺が1位なのですね。


日本有数の観音霊場

この山の上に八葉の蓮華のような大きな岩があり、そこは紫雲たなびく美しい場所である。ここが観音の聖地である。

『石山寺縁起絵巻』第1巻、近江守護神・比良明神の言葉
出典:石山寺HP

御本尊は如意輪観世音菩薩にょいりんかんぜおんぼさつで、観音菩薩変化身へんげしんの一つであるとのことです。

秘仏のため拝顔は叶いませんが、「六道の衆生を救う」という思いから6本の腕を持つお姿だとの事です。

京都の清水寺、奈良の長谷寺とともに「三観音」に挙げられています。



文学のテーマパーク

紫式部が「源氏物語」を構想

急な石段を登って本堂前にたどり着くと、いきなり人の姿を察知して、軽くビクついてしまいました。

こんな演出いりますか?
たしか姫路城の化粧櫓にも千姫の人形が座っていて、子供の頃に初めて見た時は軽く飛び上がってしまったのを思い出しました。

「本堂合いの間東・紫式部源氏の間」

写真を撮り終えた時、その背後にもう1体、侍女の人形が座っているのに気付き、再び飛び上がってしまいました。

「こんなん、絶対に夜は来られへん。怖すぎる…」

これは決して心霊的な趣向ではなく、執筆中の紫式部の設定なのです。
紫式部は、この石山寺で「源氏物語」の構想を練り、執筆を開始したと伝わります。

歌川広重作・「石山寺の紫式部」
出典:Wikipedia

書き出しの「今宵は十五夜なりけり」はここで書かれたのかと思うと、なんだか妄想が膨らみます。

琵琶湖に浮かぶ名月の美しい光景をを眺めながら、彼女の創造力は膨らんだのでしょう。

「紫式部像」
執筆した源氏の間のある本堂から離れた北の上の「源氏苑」にあるため
うっかりしていると見逃してしまう。

2024年の大河ドラマは吉高由里子さん主演のこの紫式部のお話「光る君へ」と決まり、今からとても楽しみです。
もしかしたら、この石山寺が登場するかもしれませんね。


松尾芭蕉も何度か訪れている

白状すると、芭蕉の事は知っていたのですが、彼に関わるところは全くスルーしてしまいました!

上記の案内図の「多宝塔」まではしっかり認識していますが、そこから左回りのコースで回り、右側にあったはずの「芭蕉庵」も「月見亭」もまったく記憶にございません。

おまけに下山して駐車場の片隅にあるはずの句碑も見忘れるという、ダブルミスを犯しています。

紫式部供養塔と芭蕉句碑
出典:Wikipedia

あけぼのはまだ紫にほととぎす

「曙」は清少納言の『枕草子』の「春は曙。やうやう白くなりゆく山ぎは少しあかりて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。」から取ったもの。
 源氏の間を見ていると、まだ春の陽気が残っているものの、ちょうどホトトギスの声が聴かれて夏の到来を感ずることだ。

芭蕉発句全集

石山の石にたばしるあられかな

石山寺の名の由来でもある幾重にもなった巨大な硅灰石の上に、白く固い霰が激しく降り注いで、たちまちあたりへと飛び散って行きます。

芭蕉の句碑~滋賀


島崎藤村は最初から念頭になかった

実は「夜明け前」を中学生の時に読んでみたのですが、どうにも読み進める事が出来ず、途中で断念しています。

最初の小説で躓いてしまったので、結局、藤村の作品は1作も読んでいません。
その面白さをわかる前に、食わず嫌いになってしまっています。

見ようと思えば、とても解りやすい入り口付近にゆかりスポットの「密蔵院」はあったのですが、完全スルーです。


庭はスケールが大きい

石山寺は「花の寺」と言われるほど、四季折々の花が咲き乱れます。
春には、桜や梅はもちろん、牡丹や藤、水仙など、
夏には、アヤメや菖蒲、ハスやアジサイ、
冬には、雪景色を背景に寒椿やロウバイ、南天など。

こりゃまた、違う季節にも来たいものです。

石山寺では「紅葉ライトアップ」も実施しているのすが、ちょうど前日の27日(月)までで、ギリギリ見れなかったのです。

ということは、秋の紅葉もリベンジしないといけないようです。
いや、でもすごい混雑かもしれないので、やはり避けた方かいいかなぁ。

出典:石山寺

では、私たちが行った日はどうだったかというと、もちろん紅葉は真っ盛りで、ピンクの椿が満開でした。
椿??
椿は冬ではなかったのかな?

岩山の斜面に庭が広がっているので、その高低差で立体的なダイナミックさがあります。
とても見応えのある庭なのですが、階段や坂が急なので、足元が気になりおちおち景色に見とれている場合でもありませんでした。

写真上右の池などは、飛び石を設置してあるのですが、ビッシリ水草が表面を覆い、見た目は地面のようで、うっかりすると池にダイブしてしまいます。

歩きながら景色を堪能するには、足元にデンジャラスなトラップが多数あります。

景色を見るなら立ち止まれ!

これこそが、石山寺での最大の注意事項です。

それにしても若くて体力と気力のある時は、「寺」には全く興味はなく、年を取って興味を持った時には、気力体力も無くなっているという、なんとも上手くいかないものです。

チラチラと若いカップルも見かけましたが、スイスイと進む様子を見て、羨望の眼差しを向けてしまいました。



御朱印が達筆でホッとしました。
この前に訪れた神社のが残念だったので。








【参考文献】
石山寺
「石山寺」の観光・見どころ|紫式部と縁深い真言宗の大本山
Wikipedia


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