読書人間📚『非色』有吉佐和子
『非色』有吉佐和子
1964年 作者33歳時上梓
1967年 角川文庫刊行
2003年以降 重版未定
2020年 河出書房新社より復刊
2022年 8刷発行
59年前に書かれた作品なので、時代的背景から不適切な表現がありますが、その言葉に作者の差別意識は含まれていないと有吉玉青(娘)さん同様感じます。あくまで文学作品です。
1945年8月の敗戦で日本が様変わりした時代。
食糧難の中、人々が生き延びる為軍関係の仕事に就く人も少なくなかった時代。そこで出会った占領軍の軍人と結婚し、日本を離れた女性たち。彼女たちは「戦争花嫁」と当時、呼ばれていました。本書はその「戦争花嫁」を主人公にしています。
ここでは、日本人差別については触れられません。
主人公は夫の母国アメリカに渡り、より壮絶な差別を知ることになります。夫の故郷、夫の育った環境、肌の色、また同じ肌の色であっても階級差別があること。またその時代、アメリカでは堕胎が罪であったこと。差別と就職難と貧困と産まれくる子供たちと、それでも働くしかない日本人妻に頼る夫の親族たちと。あまりに壮絶で、中には妻たちが自死を選んでしまうこと、帰国すること、子を置いて働きに出る選択をせざるを得ないこと、正常な精神を保ち生きる事がどれほど困難であったのか想像するだけで身の切られる思いです。
面白かったと言うと語弊がありますが、とても読みやすく、私は今、一日2ページがざらな日々なので時間がかかりましたが、お時間のある方なら3日もあれば読んでしまえると思います。難しい言葉はありません。妻、彼女たちの感情が水を飲むように引っ掛かりなく入ってきます。読ませる力、筆力に驚きます。復刊せず眠らせたままでなくよかった思います。素晴らしい作品でした。
作者はお亡くなりになっていますが、ご健在であったならこの作品の思うところと、現在、世界はどう変化していると感じられるでしょうか。
この間に黒人差別の社会派映画や、問題定義の作品は沢山、世に出ています。
少しは変わっているのでしょうか。日本の片隅にいる私には見えないことが山ほどあります。
その土地で生活する人々が平等でありますように、そして日本も同じく...と考えます。
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