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【書籍紹介】終末期の肺炎

あなたはこの「終末期の肺炎」という言葉を目にしたときに、どんな印象をもったでしょうか?

本書のなかでも、
「誤嚥性肺炎は体の疾患であり、また関係性の苦悩なのだ」
とあるように(p.148 奥知久先生)、診断、治療、リハビリ、意思決定、多職種連携と医師の役割は多様です。

一方で「敗戦処理のようなもので治療にやりがいを感じない、医師として無力感を感じて悩ましい」と思われる方もいるかもしれません。
本書はそんな悩ましいことだらけの「終末期の肺炎」をどこまでもどこまでも深めよう、という内容になっております。

もともと本企画は「治療」2018年11月号の特集を書籍化したものです。書籍化にあたっては項目を大幅に増加させ、終末期の肺炎で求められるあらゆる判断に対応するための武器を紹介しています!

どうして寿司!? ~全ては南砺の地からはじまった~

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さあ内容紹介に入っていきましょう、という前に書籍のカバーを見た方はギョッとされたかと思うので(寿司だけに)、どうしてこのカバーになったのか少しだけ触れてみたいと思います。
ただし詳細は本のカバーをめくった袖の部分に説明がありますので,真の意図を知りたい方はぜひご購入を…

そもそもの発端は大浦先生のいらっしゃる南砺市民病院へ伺った際のことです。ちなみに「治療」編集部はコロナさえなければ割と全国どこへでもウキウキで伺います。
南砺市民病院はすぐ隣に地域包括支援センターがあって「めちゃめちゃ総合診療が捗りそう!」と感じたのが記憶に残っています。

大浦先生と書籍の概要を決めていくなかで、カバーの話題になり、ざっくりとデザインの希望をお聞きしたところ、完成した時に「あの※※の本ね!」といわれるようなシンボルのあるデザインがよい、という意見をお聞きしていました。

このシンボルとして「寿司」が選ばれたわけですが(すんなり決まったわけではなく、途中カエル案やサラダ案などの屍を乗り越えて)、それはお会いしていたときに、先生から「誤嚥性肺炎の診療って総合診療医にとっては寿司の○○や○○みたいなものだと思うんですよ」というコメントをふと思い出して、「先生そういえば…」という流れで決まったのでした。
○○ってなんのネタじゃ!と気になる方は、本のカバーをめくった袖の部分に説明がありますので,知りたい方はぜひご購入を…(2回目)

活きのいいこだわりの項目、揃ってます

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すごく主観的ですが、普通の書籍で「充実の目次!」というと、色相環に沿ってズラッと並ぶ色鉛筆みたいなイメージがわくのですが、この「終末期の肺炎」はまさに寿司ネタの如く赤身から白身、青魚、貝もエビもイカタコも…というようにそれぞれの項目が違う角度から切り込んでくるため、項目ごとに全く味わいの異なる仕立てになっております。

雑誌版制作時もこれだけの豪華なメンバーで作れるなんて…! と思っていたのですが、書籍版では大浦先生のご人脈の広さと深さに再度打ちのめされることとなりました。

誤嚥性肺炎の診断と治療、終末期の定義とは何なのか、リハビリや口腔ケアというトピックのほかに、治療方針の決め方を深掘りして法や倫理、哲学の分野からもお書きいただいているのは他書にはない特徴になるでしょう。また冒頭に誤嚥性肺炎の歴史、経済的効果を扱ったのも「終末期の肺炎」というテーマならではですよね。

本の目次

Ⅰ 章 高齢者肺炎の治療を徹底的に勉強しよう
まずは治療の引き出しを増やそう
01 これまでの誤嚥性肺炎診療の歴史  官澤洋平
02 誤嚥性肺炎の重要性を経済的観点から考察する  﨑山隼人
03 肺炎診断の難しさ  上田剛士
04 肺炎治療の難しさ  川島篤志
05 誤嚥性肺炎のABCDEアプローチについて  森川 暢
内科的治療を超えた肺炎治療を深める
06 口腔ケアのエビデンス,食事中の体位,嚥下機能改善に向けた薬物選択  松本朋弘
07 完全側臥位法のメリット·デメリット,どこまでやるか  川端康一
08 オーラルフレイル,サルコペニア,リハ栄養  若林秀隆
09 データに基づく歯科的介入  長谷剛志
10 総合診療医だけでできる嚥下機能評価  佐藤健太
Ⅱ 章 それでも治せない高齢者肺炎
11 終末期診断の難しさ  荒幡昌久
12 胃ろうや中心静脈栄養のエビデンス  矢吹 拓
13 倫理的問題,ACPについて  川口篤也
14 嚥下障害をどこまで積極的にリハビリするか  前田圭介
15 治療の差し控え・中止と自己決定  高乗智之
16 同意能力を欠く患者の医療同意  石田 瞳
17 認知症の患者に理性はあるか  盛永審一郎
18 最期の肺炎を迎えたときに何をすべきか  大屋清文
Ⅲ 章 総合診療医の個性を肺炎診療に活かそう
19 訪問診療のコツ  川渕奈三栄
20 デバイスを上手に使おう  古屋 聡
21 嚥下エコーの簡単な導入方法からマニアックな実践例について      白石吉彦
22 誤嚥性肺炎におけるゴールの話し合い  植村健司
23 家族志向性アプローチの活用  大浦 誠
24 交渉術  奥 知久
25 誤嚥性肺炎の終末期に対する行政・福祉の支援  三浦太郎
▶おわりに
26 終末期肺炎診療は総合診療医の専門性が発揮される  大浦 誠

補足しておきたい項目

さて、目次を眺めて気になる項目は見つかりましたでしょうか? 私からいくつか補足情報をお伝えさせていただきます。

★とりあえず時間がないから基本だけ抑えたい、という方は「05 誤嚥性肺炎のABCDEアプローチについて」をどうぞ。食支援に興味の強い方は「09 データに基づく歯科的介入」にあるコラム:カニや白エビの関係もおすすめです。

★どこから読むか決められない!という方は「26 終末期肺炎診療は総合診療医の専門性が発揮される」から読み始めると各項目の内容を総ざらいできます。

★「07 完全側臥位法のメリット・デメリット,どこまでやるか」は私もこの企画をやるまで存じ上げず、「え!横!?」とびっくりしてしまいました。食べられない患者さんの突破口になるかもしれず、経口摂取に関心のある方は必読です。

★「11 終末期診断の難しさ」はこれまで曖昧としていた「終末期」という判断基準に迫る内容で、終末期の予後推定に不安を覚える方はぜひ読んでいただきたい項目です。

★「21 嚥下エコーの簡単な導入方法からマニアックな実践例について」は嚥下エコーのポイントをしっかり解説しておりますが、ご安心ください、動画付きです!

★「22 誤嚥性肺炎におけるゴールの話し合い」ではアメリカ発祥のコミュニケーショントレーニング、VitalTalkを解説しています。ポイントがまとまっているので興味のある方はぜひ。

編集部目線の編集後記

この「終末期の肺炎」の制作ですが,新型コロナウイルスの影響をもろに受けたかたちとなりました….私も出社できない日々が続いたのですが,先生方もそれぞれの場所やお立場で影響を受けていて,先も見えず,果たして本当に完成するのか…と思うときもありました.無事に完成まで進められ,販売前の予約段階にもかかわらずAmazonの医学書売り場の呼吸器内科カテゴリで1位になったときは光が射し込んだ心地でしたね.

最後に私がちょっとこだわったポイントを紹介させていただきます。

カバーの寿司に目が行きがちですが、「こんなダンチューみたいなカバー、腹減るわい!」という方のためにカバーをはずした表紙はシンプルなデザインにしております。しかし実はこのデザイン、お寿司から連想してバランをイメージしたデザインになっているのです。

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そして2つ目、本の見返し(表紙をめくったあとにある色紙)ですが、通常は悪目立ちしないように淡い色を使うことが多いのですが、今回は寿司の高級感と海苔をイメージして黒を使わせていただきました。じつはこの紙、色ごとに値段が変わるのですが、黒が1番高いのです! もしかすると私が関わる本では最初で最後の黒になるかもしれません…。

文責:編集部 カーター

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