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旅行先で無意識に実行していることを徹底的に言語化しました

 今回は、少し変わった旅の楽しみ方の話です。このアカウントは「地理Bの旅」なのに、ほとんど旅行の話を書いていません。最近旅行に行けていないことと、詳しく書けることはやはり地域的に偏るので、誰なのか分かる(匿名にすることで手にした自由(?)を手放したくない)というのが主な理由です。皆さんが中の人に興味がないのは分かっています。ヘッダーは尾道市の空き家を改修したゲストハウス「みはらし亭」から見た朝の尾道水道です。インスタ映え(note映え)を狙っています。

 私はあまりたくさん旅行に出かけることはないのですが、初めて訪れる土地を知る喜びは本当に素晴らしいものですよね。今まで、旅行に行ったら何に注目してきたか、自分でも言語化していませんでした。これまでは、「なんとなく」、「あてもなく」、「ぶらぶら」していると考えていて、人に聞かれてもそんなふうに答えていました。しかし、今回、少し近場に出かけた日の夜に、自分が地域を回るときに何に注目しているか深く考えました。今回はそのまとめです。中にはマニアックだと感じられる内容もあると思いますが、皆さんの今後の旅行に何か参考になれば幸いです。

◆旅行に出かける前に

 まず、旅行に行く前ですが、あまり完璧な下調べはしない方がよいと考えています。私が把握する情報は、主な観光地とされるところ、地域の資料館の位置、名物と言われる食べ物、市町村合併の簡単な経緯、地域の人口やおおまかな歴史などです。この下調べを完璧にし過ぎると、現地での思わぬ「出会い」や「気づき」の意味が小さくなります。途中の計画変更や行き先の追加などに備えて、はじめの計画では行き先を盛り込み過ぎないようにしましょう。

◆移動手段

 公共交通機関を使って移動できればよいですが、時間が限られるときは車で効率的に回る方法もよいですね。特に私の場合、公共交通機関では行けないような山奥が目的地のこともあるので、車で巡ることが多いです。もちろんその場合も、一か所に車をとめて、ある程度周辺を歩き回ることが大切です。

◆地域を概観する

 地域を概観するためにまず大切なのは、「できるだけたくさん歩く」ことです。可能かかぎり地図を見ながら、町全体の中で自分が今どのあたりを歩いているのか意識して移動します。そして、「高いところにのぼる」ことも大切にしています。地域を一望できるところがあれば、とりあえずのぼりましょう。

 いきなり詳しいテーマ設定のもとで巡るのではなく、まずはある程度、網羅的に回るのが良いと思います。また、Googleマップと地理院地図は定期的に開いて、周辺に他に見るべき場所がないか確認します。

◆体調管理

 結構たくさん歩き回るので、水分補給をよく行い、定期的に座って休憩を取るようにします。特に暑い夏は要注意ですね。旅先での楽しみに夢中になっていると休むことを忘れて気づいたらふらふらになっていることもあるので、無理のない行動を心がけましょう。

◆写真を撮るときに気をつけること

 写真はデジカメで撮っています。スマホでも一部撮影しますが、それは友人などへの共有用です。写真にはジオタグ(GPSの位置情報)をつけるようにして、帰ってきてからどこで撮ったのか分かるようにします。案内板(地区の案内図、名所の案内文)があるときは、記録用写真として正面からまっすぐ撮っています。

◆景観を意識する

 写真を撮るときに気をつけることに関連して、現地で出会う「景観」を意識するようにします。以前、知人の先生から「最近の人はピンポイントの写真ばかり撮っていますが、1枚の写真から背景を見ることで地域の全体像を理解できる写真が、よい景観写真ですよ」と教えていただきました。それからは、ピンポイントの写真も撮りますが、地域の全体像をとらえられるような景観写真にもチャレンジするようにしています。なかなか難しいですが、例えば背景に山が移り、手前にその山の恵みを活用したものが映っている、というような感じです。

◆観光客の視点を忘れずに

 ついつい観光が地域調査のようになってしまうので、観光客の視点を忘れないようにします。たとえば、人のおすすめには従ってみる(順路案内、美味しいもの)というのもその一つです。現地について詳しい知人や、現地で出会った人に教えてもらったおすすめは、たいていが本当に見るべきもの、食べるべきものなので、しっかり見て、しっかり食べます。また、一般的な観光客がよく巡っていそうなところもおさえるために、現地の観光案内ルートを確認したり、他の観光客の歩いていく方向を参考にしたりもします。

◆そこでしか得られない体験は何か考える

 これは旅行に出かけるうえでとても大切ですね。私の場合、地域の資料館にはできるだけ行くようにしています。資料館の展示の仕方や資料の充実度から、展示に携わった学芸員さんや行政の努力を思いをはせることができます。小さな町の資料館で、民俗・歴史資料が整然と整理され、詳しい説明とそれらをつなぐストーリーが設定されていたときは、本当に感動します。インターネットで得られる情報には限りがあるので、地域について理解を深めるうえで資料館巡りはとても大切です。このほか、資料館や観光地に置いてあるガイドマップやパンフレットは、とりあえず全部もらってくるようにしています。

◆そこに住む人々の生活に思いをはせる

 旅行先でも、そこに住んでいる人が地域をどのように観ているか、いつもどんな生活を送っているのか、大きな関心を持っています。そこで、現地の小さな商店やスーパーに入り、商品を見て、よく食べられている食品や調味料などを観察します。そこで得た情報をもとに次の食事先を決めることもあります。新鮮な魚が並んだスーパーを見たあとに横にあった食堂で食べた海鮮丼は本当に美味しかったです。

 また、バス停や駅の時刻表の写真も撮るようにしています。1日に何本の移動手段があるのか、行き先はどんなところかを把握することで、そこに住んでいる人の生活圏や生活の利便性を理解できます。

◆現地の人と簡単な話をする

 現地の人とは、無理のない範囲でお話をするようにしています。熱心に写真を撮って回っていると、向こうから声をかけてくださることもあるので、自分がどんな旅行者なのか(何を求めて回っているのか)伝えるようにします。そうすると現地の方が「それならここに行ってみるといいですよ」と教えてくれることもあります。「無理のない範囲で」というところが大切で、一人でゆっくり楽しみたい人もいるでしょうから、無理に人に話しかけることにこだわらなくてもよいと思います。

◆歩きながら考える

 地域を歩きながら、名所や建物、特徴的な農地などが、「なぜそこにあるのか」を考えるようにしています。人口が減ってしまった地域でも「昔は◎◎で栄えていた」とか「港が交易の拠点になっていた」といった情報に出会い、驚くことがあります。そのとき、その地域を少し広域での立地から考えると、「●●の街に近いからなのか」であったり、「◆◆が過去にたくさん作られていたからなのか」というように背景が見えてきます。

◆お土産の話

 お土産についての私のこだわりは、できるだけ地域にしかないものを買うことです。お土産の裏面の商品説明を確認して、販売者だけでなく製造者も見るようにします。地域内で製造されているものに出会うととても嬉しいです。もちろん、地域によっては十分に生産機能が備わっていないところもあるので、製造地が地域外であることが悪いとは一概には言えません。しかし、できるだけ自分の使うお金がお世話になる地域内に還元されることを心がけています。

◆その他の小さな楽しみ

 これは完全に趣味ですが、測量の基準となる三角点を探すようにしています。これは地理院地図を見ないと分からないので、旅行先についてからも地理院地図を確認します。思いがけないところで一等三角点に出会うととても嬉しいです。三角点を見つけたら近くからと少し離れたところからの両方でたくさん写真を撮ります。

◆自分が面白いと思うものを大切にする

 考えてみたら、無意識でも色々なことに気を付けていたことが分かりました。地理学では特定の地域を決めて出かける地域調査を「巡検(じゅんけん)」と呼びますが、私の旅行はほぼ巡検になっていますね。ただし、旅行の目的は人それぞれですし、楽しみ方も人それぞれです。「自分が面白いと思うものを大切にする」ことが大切だと思います。

 皆さんの今後の旅行が充実したものになりますように。日本全国、あるいは海外にもたくさん出かけられるようになることを願いましょう。

 最後に忘れないように大切なことを。資料館の開館時間と開館日は調べていきましょう!(閉館10分後に資料館に到着して立ち尽くした中の人より)

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