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研究を音楽にたとえてみた

 今回は、研究者が行う研究活動、特に論文を発表する作業を、アーティストの音楽活動でのCDの発売にたとえるとどのように表現できるか考えてみたいと思います。ヘッダーは学術雑誌とCDを重ねて写真を撮ったものです。BUMP OF CHICKENのファンです。

 研究者というと、実験室で白衣を着て実験を繰り返しているようなイメージの方もいるかもしれませんが、研究者も分野によって様々です。そして、研究者と呼ばれる人々は、実際には主には大学など高等教育機関の教員か、研究所の研究員です。

 学術的な研究をするとき、研究者が発表する成果物が、学術論文です。学術団体(○○学会など)が発行する学術雑誌に掲載されます。このほか、各大学や研究機関(研究所・シンクタンクなど)の紀要もあります。世界的に有名なものでは『Nature』とか『Science』などがありますよね。地理学の学術雑誌も分野によってたくさんあり、英語圏では『Progress in Human Geography』、日本なら『地理学評論』(日本地理学会)や『人文地理』(人文地理学会)などが代表的です。

 これらを音楽にたとえると、以下のようになります。まず、大学を卒業するときに書く卒業論文は、インディーズ時代のデモテープのようなイメージです。次に、学術雑誌に投稿して、査読(審査)を受けて掲載されると、一般流通するCDということになります。1本ずつの論文がシングルCD、単独配信曲だとすると、それらを束ねた博士論文や論文集、学術書はアルバムととらえることができます。

 論文の単著(一人での執筆)はソロでの楽曲、共著(共同での執筆)はグループでの楽曲と考えられます。また、論文の場合そのグループは毎回変わります。

 研究者と音楽のアーティストでは、もちろん違いもあります。大きな違いは、所属先と成果物の発行元が違うということです。研究者は、研究機関(大学・研究所)に所属して、学会の雑誌に論文を投稿して、掲載されます。それに対しアーティストは、レコード会社に所属して、レコード会社がCDを出しますよね。

 そこから生じる違いとして、研究者は研究機関に就職していなくても(大学院生でも、場合によっては学部生でも)学術雑誌に論文を投稿できます。むしろ、院生時代までの投稿論文の実績が博士論文につながり、大学や研究所への就職へのステップになります。

 ここで話が変わりますが、大学時代の同じ研究室にバンドのボーカルをしている友人がおり、音楽と研究の関係を話したことがありました。友人は、自分たちが音楽で曲を作るのも、研究で論文を書くのも、似ているよねと話していました。私もその通りだと思いました。プロセスや成果物の性質は違いますが、時間をかけて悩んで、何か新しいものをつくりだす作業は同じだと思います。

 以前、研究は農業のようでもあると考えたことがありました。種まきをして(研究のきっかけを見つけて)、芽が出て(研究が少し具体化する)、水をやって(調査を続ける)、世話をして(論文にまとめる)、収穫する(雑誌に掲載される)というプロセスです。

 最後に、この記事の文章を別の友人に話したら、「研究者は論文から収入を得るんじゃなくて主に所属する大学から給料をもらっているから、CDの売上が給料につながるアーティストとは違うんじゃないの?」とコメントもらいました。・・・その通りですね。私は分かりやすくするつもりで今回のようにたとえてみましたが、この記事を読んで私の友人と同じく分かりにくいという印象を感じた方、すみません。まだまだ分かりやすい文章を書く修行は続きます。

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