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島原の「いま」をもっと知ってほしい

 6月3日は、1991年に雲仙普賢岳で大規模な火砕流が起こった日です。犠牲になったたくさんの方に心からの祈りを捧げるとともに、この被害のことを忘れず、災害について学び続けたいと思っています。ヘッダーは土石流で埋まった家屋の展示がされている道の駅「みずなし本陣」で、左奥の方に見えるのが平成新山です。

 火砕流の被害やそのメカニズムなどについては、たくさんの専門家の方が説明しているので、今回は少し違った視点で文章を書きます。それは、災害の記憶を風化させないために、過去の事実として1年に一度思い出すだけでなく、実際にその後の地域のあゆみや現在について知ってほしい、ということです。災害の起こった日にこのような文章は不謹慎かもしれません。しかし、多くの方が、いつか実際に足を運んでいただくきっかけになればと思い、まとめてみました。ここでは、島原半島を訪れることによって得られる学びや楽しさなど、様々な地域の特徴・魅力を紹介します。

島原半島の概要


 島原半島は長崎市の東側に位置し、中央に雲仙普賢岳があります。東側の対岸には熊本、南には天草があります。

 詳しい自然地理的な説明は専門家の先生方に任せて、地域の人文的特徴を簡単に説明します。島原は2000年代の市町村合併を経て、3つの市(島原市、雲仙市、南島原市)から構成されています。島原市は島原城の城下町で、他の2市(雲仙市、南島原市)が合併で成立する前から半島の中心地として栄えました。熊本からフェリーで渡ることができます。

 豊富な地下水に恵まれ、街の中を流れる水路を見ながら散策するととても気持ちがいいです。武家屋敷群も残されており、家屋に自由に入れるところが何か所かあります。中央にきれいな水が流れて、石垣が好きな方にもおすすめです。

復興と災害学習

 がまだすドームでは、火砕流や土石流、火山の仕組みなどに関する展示が充実しています。火砕流の速度で光が流れる展示には驚かされました。また、江戸時代の眉山の噴火に関する「島原大変劇場」という自動劇(パネルや人形が動いて当時のようすを再現)もあり、ぜひ見ていただきたいです。対岸の肥後にまで津波被害を起こした様子が理解できます。

 がまだすドーム近くの道の駅「みずなし本陣」では、「土石流被災家屋保存公園」があり、自由に見ることができます。なお、この埋もれた家屋では住民の方は避難していて人的被害は出なかったそうです。みずなし本陣では美味しいご飯もたくさんあるので、昼食で立ち寄っていただき、展示もあわせて見ていただくと良いと思います。

島原半島世界ジオパーク

 島原半島では、火砕流・土石流の災害とその復興だけでなく、火山や地層など自然の営みを幅広く学べます。学習のためにと力を入れ過ぎず、まずは雄大な景色を眺めに出かけてみるのをおすすめします。たとえば、仁田峠ロープウェイで展望台に上ったら、天気が良ければ平成新山を間近に見られます。また、このロープウェイは登山道も横にあるので、行き帰りで選択してみるのも良いかもしれません。重装備までは必要ありませんが、靴は歩きやすいものにしてください。

 妙見岳展望台からの平成新山(左)の眺めと、土石流の氾濫を防ぐための水無川導流堤(右)です。晴れているときは対岸の熊本まで見渡せます。

 約3分で上の展望台まで行けるロープウェイです。紅葉の時期はもっときれいな写真が撮れると思います。

世界遺産

 島原半島南部の南島原市には、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界遺産に指定された原城跡があります。島原の乱で天草四郎をはじめとする領民が反乱の拠点としたところです。ちょっと見て帰れる広さではないので、駐車場から歩くなどしてその広さを体感してください。自然地理的にも興味深い地形だそうです。

 埋門跡(うずみもんあと)と呼ばれるところで、原城が島原の乱のあとに幕府によって壊された痕跡を伝えています。他にもたくさん写真があるのですが、なにぶん広すぎて、写真で全体を伝えることはとてもできません。

島原半島におけるキリシタンの歴史については、幅広い展示がある有馬キリシタン遺産記念館が原城跡のすぐ近くにあるので、あわせてぜひ訪問してください。原城に行く前に予習すると、現地での理解が深まります。

温泉(島原・雲仙・小浜)

 災害という負の側面だけでなく、自然が住民の皆さんや私たちに与えてくれる恩恵として、温泉も紹介しておきます。「◎◎地獄」というと大分の別府が有名ですが、雲仙温泉にも「雲仙地獄」があります。

 地獄めぐりは驚きの連続で、なんと無料です。かつてキリシタン弾圧にこの地獄が使われた歴史なども知ることができ、島原が長崎の歴史の中に連なっていることを学べます。地獄では温泉が噴き出しており、各旅館・ホテルは地獄からパイプを引いて温泉を整備しています。

 地獄の中は遊歩道が整備されており、安全に見学できます。奥の方に見えるのは温泉街のホテルです。

 大叫喚地獄ではものすごい音が鳴り響いています。文章では伝えきれませんので、実際に見に行っていただきたいです。

 さらに、半島の西側には小浜温泉、東側には島原温泉と、3ヶ所で違った泉質の温泉が楽しめます。学習観光と温泉巡りの組み合わせもいいですね。

 小浜温泉には日本一長い足湯もあります。雲仙温泉とは泉質も違うので、温泉巡りをしながら自然を学ぶことができます。

しっかり学んで楽しめる、島原半島を巡ろう

 私が大切だと思うのは、実際に自分の目で見て確かめることです。現在はなかなか自由なお出かけができませんが、皆さんにも島原のいまを実際に見ていただき、いろいろなことを考える機会にしていただきたいです。また、私が今回紹介できたのは、島原の地域的特徴のほんの一部です。ぜひ皆さんも実際に調べてみてください。

 この文章を読んだ方は、島原にいつか必ず出かけてくださいね。約束ですよ!一度訪れたら、きっとまた行きたいと思えるような場所です。長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

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