見出し画像

短編『何も気にならなくなる薬』その73

三題噺を作ろうと思う。
「サンタクロース」「驚き」「破壊光線」
この出てきた三つの単語は

このサイトを利用させていただいた。
これならマンネリ化したお題にも対応できそう。
早速話を考えてみる。
---

「ねぇ、パパ、今年もサンタクロースさん来るかな」
「そうだな、いい子にしてれば来るだろうな」
「じゃあさ、今年はパパも一緒にサンタクロースさんを待とうよ」
「うーん、パパはもしかしたらお仕事で遅くなるかもしれないなぁ」
「えー、パパも一緒にサンタクロースさんに会おうよ。第一子供にプレゼントをくれる人にお礼を言わないのは大人としてどうなの?」
「ちゃんと毎年サンタさんにお礼をしてるよ」
「どうやって?」
「ハガキを送っているんだ」
「新年の挨拶とか行かないの?僕は行きたいな」
「行ってもいいけどサンタさんのところに全国の子供が挨拶に行ったらサンタさんがくたびれちゃうんじゃないかな」
「それもそうだね、それはそうとさ、どうしてお父さんはサンタクロースさんをサンタさんって呼ぶの?フルネームで呼ぶのが礼儀じゃない?」
「いいんだよ、パパとサンタさんは仲がいいんだから」
「ふーん、そうなんだ、それこそプレゼントを配ってもらったらそのまま一緒にパーティをすればいいのに」
「他の子供にも配らなくちゃいけないからな」
「それこそパパはお友達なら手伝ってあげないの?」
「パパは公務員だから他のお仕事をするとクビになっちゃうんだよ」
「大変なんだね。でもなんで公務員なのに仕事が遅くなるかもしれないの?」
「ほら、仕事っていうのは色々あるから」
「知ってるよ。大人の付き合いでしょ、ママがそうやっていつもため息をつくんだよ。この話を聞いてパパはどう思う?」
「それは後でどうにかするから。それで、今年は何が欲しいんだ?」
「ポケモン」
「え?」
「ポケモンが欲しい」
「ポケモンの何が欲しいんだ?」
「いや、だからポケモン」
「いやいや、そのポケモンの何が欲しいんだよ?」
「いいよ、サンタクロースさんならわかってくれるから」
「何を貰うかわからないと、お礼ができないだろう」
「それこそ届いてからでいいじゃん、僕いい子だからもう寝るね、おやすみ」

「あら、もう寝たの?それで、あの子何が欲しいって?」
「ポケモンだってさ」
「ポケモン?テレビで観てるやつ?」
「そう、そのポケモンだよ」
「それで、そのポケモンの何が欲しいの?」
「何って、ポケモンだよ」
「ねぇ、貴方、もう何回もクリスマスやってきたのよ、それくらい聞き出せるでしょう」
「そんなこと言ったってな。ポケモンと言っても色々あるぞ、ぬいぐるみにカードゲーム、ゲーム機もあるな。それにポケモンは151匹もいるんだろう」
「あなたねそれは初代の話、今のポケモンは1008匹いるのよ」
「そんなにいるのか!それはそうとなんでお前が知っているんだよ」
「あの子が歌ってたのよポケモン数え歌」
「そりゃ一体何分の歌なんだ? 当てずっぽうでぬいぐるみは買えないしな。それじゃあゲームはどうだ?全部のポケモンが出てくるんだろう?」
「あなた知らないの、ポケモンのゲームはね、シリーズごとに舞台が違うの、日本で例えるなら北海道と沖縄みたいなものよ」
「つまりどういうことだよ」
「沖縄でヒグマはでないの。南極でホッキョクグマは出てこないの。だからペンギンとホッキョクグマが同じ絵の中に収まっているのはおかしなことなのよ!」
「そんなに熱く語るところをみるとなにかあったのか……じゃあ、カードはどうだ?」
「あなた知らないの?カードはね、高いものは一枚、四億もするのよ」
「四億!?」
「そんなカードゲームにハマってご覧なさいよ、いくらあなたが稼いで、私が節約したってとても暮らしていけないわ」
「それなら着ぐるみはどうだ?寝巻きにしてもらうんだよ」
「あら、それは可愛いじゃない。でもね、あの子はもうそんな年じゃないわよ」
「うーん、どうしたものかな」
「もしかして、本当にポケモンが欲しいんじゃない」
「でも、ポケモンは架空のキャラクターだろう」
「だけど、子供の言うことだから」
「そうか、それもそうだな、よし、いい考えがある」
そうしてクリスマスの当日。
「いやー、まさか驚きましたよ。あなたからそんな注文を受けるなんて、これがお子さんの好きなリザードンというポケモンの設定です。羽の生えた怪獣で火を吹いたり空を飛ぶことができます。けれどもこれはあくまで着ぐるみですからね」
「丁寧に設定まで有難うございます。いやもう、サンタさんには頭があがらないです。本当に有難うございます」
「でも、いいんですか?もしものことがあったら、お子さんにがっかりされるかもしれませんよ」
「いや、いいんです。そろそろあの子もサンタクロースの存在を知る日が来たんですから

「そうですか、では頑張ってください」
「有難うございます」
---
「ねえ、サトシ、サンタクロースからポケモン届いたわよ」
「えっ、本当に!ポケモン!? 見して見して」
「呼べばくるわよ」
「本当に?おーい、リザードン!」
「グォ」
「わぁ、本当にリザードンだぁ。よし、リザードン、破壊光線」
「グォ?」
「リザードン、破壊光線は腕をクロスにしないの。口から出すんだよ。あっ、そっか、まだ破壊光線覚えてないのか、じゃあ火炎放射、これも駄目か、じゃあ空を飛ぶ! あ、窓を開けなくちゃ、さぁ、リザードン、空を飛ぶ!」
「グォオオオ」
「あぁ、リザードン二階から落っこちた。あれ、中から人が……パパ!」
「ごめんなサトシ、パパ、ポケモン用意できなかった」
「ううん、ポケモンがいる気持ちになれて嬉しかったよ」
「そうか、ありがとな」
「でもねパパ、このことは二人だけの内緒だよ」
「やっぱり恥ずかしかったか?」
「ううん、だってパパ、サンタクロースさんのお手伝いでしょう?副業がバレたら、お仕事クビになっちゃう」

美味しいご飯を食べます。