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ナースな彼女とカイエン人身事故未遂

当時、付き合って3ヶ月くらいになる彼女がいた。

季節は秋から冬へと差し掛かり、クリスマスシーズンへと突入していた。

ライトアップされた街中は否が応でも心を踊らされる。
当然彼女と過ごすクリスマスを想像し、僕はプランを考えていた。


世の中的にはクリスマスよりクリスマス・イブのほうが重要である。
基本、クリスマス・イブに会うカップルの方が多いはずだ
(独自調べ)

そんな僕たちは残念ながら少数派。彼女は看護師でクリスマス・イブには夜勤が入っているのだ。なのでクリスマスに会う予定になっていた。仕事ならしかたあるまい。

でも大丈夫。
そう、イブに一人で歩いていても寂しくない。
おれにだって彼女はいるのだから。
今頃は夜勤で頑張っているはず。

そう思ってイブの日は少し早めに仕事が終わったので、一駅歩いてから電車に乗ろうと思い街中を歩いていた。

すると、信号のない横断歩道に差し掛かったとき、1台の車が突進してきた。
考え事をしていた僕は、反応が遅れたが轢かれる直前で難を逃れた。

ふと車を見るとポルシェカイエンだった。
運転席には30代くらいの男。そして助手席には女が乗っていた。
男は「なんだこの野郎」とでも言いたそうな顔つきでこちらを睨んでいた。
このやろうはこっちのセリフだよ、なんて思いながら助手席の女を見るとパッと目を逸らした。

見覚えがある。

彼女だ。


クリスマス・イブ、すなわち今日は夜勤のはずの彼女が助手席に乗っている。

気まずそうな顔をした彼女は目をそらしたままだった。
そして車は走り去っていった。


紛れもなく自分の彼女を目撃した僕は、すぐに連絡をしようとしたが、画面を見つめてしばらく固まっていた。


>夜勤に行くタイミングだったのか?
いやいやそれにしては遅いだろ。

>夜勤が早く終わったのか?
>先生が車で送っていたとか?
そうだとしても気分が悪いな。


そんなことを考えながら結局家まで歩いてしまった。


その晩、モヤモヤした気持ちを抱えたまま夜を過ごし、結局連絡できずに気がついたら寝落ちしていた。そして寝不足のまま朝を迎えた。

すると1通のメッセージが来ていた。

『別れたい。』

彼女からだった。


彼女は夜勤と嘘をついていたのだ。

そういうことだったのだ。

それ以来、僕はカイエンには絶対に乗らないと心に誓ったのです。
乗れないけど。



Chineeland  秦


日本と中国をエンタメで繋ぐのが目標です。青島ビールを毎週末飲んでいます。サポートいただいた場合は、美味しい青島ビールの購入費用にさせていただきます。