椎葉村で作家募集
宮崎県の、平家の落人村の伝説もある椎葉村で、作家を募集しています。正確には、作家志望者を集めて、年間給与250万円を払い、プロ作家に育てようというプロジェクトです。家賃も全額援助、興味深い取り組みですね。
興味深い取り組みですが、少し不安もあります。その点について、想うことをいくつか書いてみます。
①作家が独立の目安
まず、Xで見かけたDKさんのコチラのコメント。
この件、250万円という報酬に見合った稼ぎができるか、が最大のポイントでしょうけれど。現在は文庫本の値段が800円を超えておりますから、印税で同額を稼ごうと思えば、だいたい3万部を売り切る力がある人ということになります。商業作家でも、初版が1万部を切る中、それはけっこうな筆力だと思われます。
そういう実力がある人は、田舎に住むメリットが、積極的にはないですね。すでに売れた作家が、都会を離れて隠遁するならともかく。もちろん、カツカツの新人作家とか、兼業の人が想いきって飛び込むのは、ありですが。何年、支援があるのかはわかりません。急に打ちきりとか、ちょっと不安になりますね。
村興し町興し企画なら、避暑地や避寒地として別荘を複数のプロ作家に提供して、夏や冬の三ヶ月ほど小説講座を開いて、全国から短期長期の合宿として文芸部や社会人の参加を促した方が、効率的なような。3日コース、1週間コース、1ヶ月コースみたいな感じで。ある種の、文芸サミットですね。
②兼業作家はいても
いちおう、人に教える立場でもありますから、想うのですが。小説家になろうの書籍化率が0.3%のように、才能って簡単に見つかるわけではないですから。100人いたら、5%ぐらいは才能ある人が来るイメージです。
何人募集するかは解りませんが、少ない人数にオールインしても、厳しいでしょう。ならば、多人数が参加できるイベント形式で、人を集めるのが無難かと。分母が増えれば、才能が出てくる可能性も、高まります。
DKさんに対する、引用ポストがコチラです。
劇団☆新感線の脚本を多く手掛けてきた中嶋一貴さんとか、双葉社の編集者をやりながら、脚本家を続けておられましたね。後に退社されて、専念されておられますが。あるいは芦辺拓先生は、デビューしてしばらくは読売新聞の記者を続けながら、二足の草鞋。
これは、新人作家ではよくありますが。小説家として会社からお金をもらって、専業として書くというのは、あまり聞きません。それは、稼げる作家は辞めて一本立ちした方が良いですし、そうでない作家は、一本立ちできない程度の才能ということですから。
③事務作家の難しさ
もし、自分で3万部以上の作品を書ける力があったら、権利関係も含めて、独立した方がお得。稼げる力があっても、企業に雇われるのは、40代50代になったら売れなくなる不安を抱えた人間でしょう。
あるいは、自分で会社を立ち上げ、自分が受けた仕事を複数のスタッフと分業するシステムなら、ありですが。小池一夫先生のスタジオシップは元々、そういう面がありましたしね。で、実力が付いたスタッフは、独立という流れ。さらに、榊先生の引用ポストも以下に引用。
そうなるでしょうね、という感想です。けっきょく、効率的には難しいんですよね。アニメーターと同じで、技術がある人間はフリーランスでやった方が稼げる。会社組織化して内製化するには、アニメのような分業が確立していれば良いのですが。それでも、脚本は座付き作家を雇えるかと言えば、これも難しく。
小説はともかく、漫画は編集者がかなり作品作りに関わる部分があり、結果的に出版社を辞めて作家になる人間が一定数いますね。でも、そうしない人間も多く。それは大手出版社の安定した地位と給与を天秤に掛けて、留まってる部分も。もっとも、独立してやれるほどの作家性のある編集者は、そんなにいませんけどね。
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