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【物語】マーシャとユラの対話

登場人物(全て架空の名前です)
マーシャ:菅原麻亜紗 年齢は28歳で、美容師とネイルサロンを経営。
ユラ:遠藤由羅 マーシャと同じ28歳で、サービス業に従事。旧名は由都。

~この物語は全てフィクションです。~

前回の記事も参考にどうぞ!

マーシャとユラは幼馴染みの同級生。2人は実家が近いにも関わらず、幼少期はそれほど仲が良いというわけではなかった。大人になって、ユラがマーシャに髪を切ってもらうようになってから、2人は仲を深めていった。
月曜日のある日、マーシャから「一度うちに遊びに来ない?」と誘われたユラは、マーシャから家を教えてもらった。ユラは普段街の中で生活しているが、マーシャの家はなんと山の中腹にあるのだそう。どんなお家か気になったユラは、次の月曜日に車で1時間半かけてマーシャの家を訪問することになった。

マーシャ:あら、いらっしゃい。遠かったでしょう!
ユラ:やっと着いたわ。ここが、あなたの住むお家なのね!
マーシャ:実は私、エコビレッジの中に住んでいてね、山の中腹に住んでるって聞いて驚いたでしょ~!
ユラ:ここは、エコビレッジの中にあるお家なのね!というか、エコビレッジって何?
マーシャ:エコビレッジは、自然素材でお家を作って、食べるものも自分の村で賄う村よ!
ユラ:それって、自給自足の村ってこと?
マーシャ:まあ、そうね!でもこの村は、お米や小麦を作ったり、果物を育てたり、鶏や羊を飼ったりしてるんだけど、まだまだ十分賄えるとはいえないわ。今年で3年目なんだけど、これから農地を広げたり特産品を作ったりと色々模索中なの。
ユラ:すごいね、そんな世界があるんだ!ところでマーシャは美容師をやってるけど、村の仕事に関わる時間ってあるの?
マーシャ:ユラ、あなた鋭いわ!良い質問ね。実は私、村の畑仕事を手伝うこともあるんだけど、この村はそれぞれ自分の得意なことを生かせる場所なの!
ユラ:どういうことなの?
マーシャ:例えば、この村の人ってどのくらい畑仕事をすると思う?
ユラ:えー、やっぱり朝から晩まで一日中仕事をするんじゃないの?
マーシャ:そう思うでしょ?実はね、1人あたり平均15分~30分なのよ。
ユラ:えーー、そんなに短いの?それで暮らしていけるの?
マーシャ:さっき、この村は自給自足で生活してるって言ったでしょ。だけど、この村は直売所とか別の場所で販売しないの。だから、毎日必要な分だけを収穫したり頂くのよ。例えば、葉物野菜を例にすると、ユラは毎日何束食べる?
ユラ:スープとかに使う葉物でしょ、多くて1日1束じゃない?
マーシャ:そうでしょ、そんなに沢山食べることってないでしょ!
ユラ:確かに!
マーシャ:私は今、独身だから1人分で良いけど、家族4人で暮らしている世帯でも、多くて30分くらいで終わるわ!
ユラ:自分たちの食料を確保するのはそんなに時間掛けなくて良いのね!そういえば、さっき自分の得意なことを生かせるって言ったけど、あれば何なの?
マーシャ:話が脱線し過ぎたわね!この村には大工さんもいれば、パン職人の方もいれば、それこそ長年畜産業に携わってきた方など、色んな方が住んでるの!全員で30人くらいかな。
ユラ:そうなんだー!
マーシャ:例えば、村の仕事ってどんなものがあると思う?
ユラ:家や小屋を建てたり、それこそさっきの農業でしょ、料理を作ったり、道路や橋を整備したり、電気や水道などのライフラインも必要ね!
マーシャ:他には、何があると思う?
ユラ:あとはあんまり思いつかないかも、村っていうと農業と建設業ばかりのイメージがあるわ。
マーシャ:そう思うでしょ!実は、この村には私のような美容師がいたり、音楽活動をしている人、陶芸や工芸を作る人も住んでいるの!
ユラ:私が思った以上に色んな人が住んでいるのね!
マーシャ:例えば、村の人の髪は私が切ることが多いし、音楽や芸術を生み出す人は、村に華やかさを与えてくれているの。
ユラ:農業と建設業だけじゃないのね!
マーシャ:ここだけの話だけど、私が村の人に髪を切る時はお金を頂いてないの。だけど、私ができない建築仕事とか芸術とかも無料で渡るの!この村でお金を使うことは殆どないわ、でも幸せなの!
ユラ:お金が全ての社会を生きる私からすると、少し羨ましいな!
マーシャ:でも私、街で買い物するのも好きだから、ユラとか街の人の髪も切っているのよ!
ユラ:私はお金を払うけどね!
マーシャ:(苦笑)
ユラ:何か、この村を歩いていると私も住みたくなってきちゃうな~!
マーシャ:気に入ってくれて嬉しいわ!
ユラ:だけど私、病院通いしてるから難しいかな?
マーシャ:大丈夫よ!この村の近くは鉄道が通っているし、もし何かあったら私が送っていくよ!
ユラ:ありがとう!そういえば、私も車持ってるんだった。
マーシャ:ユラって昔はあんまり喋らない人かなって思ってたけど、面白い人ね!
ユラ:昔の私はあまり思い出したくないわ!
マーシャ:よっぽど辛かったのね。。
ユラ:私、小さい頃普通に女の子だと思っていたのに、男の子の体だったり、男の子扱いされるのがどうしようもなく嫌だったの。小学校に上がる頃にはもしかしたら皆そうかもって思った時期もあったわ。
マーシャ:聞いてるだけで大変そうね。
ユラ:だけど男の子とは違うって感覚がやっぱりあって、紆余曲折ありながらも今こうして、女として生きられていることには感謝しているの。
マーシャ:私がユラの立場だったら、どうしていたかしら。女の子だと思っているのに男の子として扱われたり、その身体で生まれる。生理も来ないし、妊娠や出産して子供を授かることも難しい、旦那さんを見つけるのも勇気がいる、普通って何って考えさせられるわ。
ユラ:当事者じゃないのに、深く考えてくれてありがとう。
マーシャ:でも、私はユラのこと、普通に大好きな女の子友達だと思っているし、これまで辛かった分、これからは楽しく生きよう!
ユラ:私、マーシャの言葉に救われたわ!本当にありがとう!
マーシャ:いえいえ、感謝と愛と勇気を持ってお互いに生きていこうね!
ユラ:そうだね!今日はありがとう!
マーシャ:こちらこそ!

日が沈む前の夕方、ユラはマーシャの住む村を後にし、車で街へ戻ったのでした。

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