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中殿筋-前部線維と後部線維の重要性

中殿筋は片脚立位保持や歩行において骨盤側方傾斜を制動して安定させる重要な筋である。

しかし、臨床では中殿筋の前部線維と後部線維を一括りに訓練しているセラピストが数多くいる。

前部線維と後部線維と分けながら考えることで中殿筋の訓練がより効率的になると考えられるため、今回は中殿筋についてまとめていきます。



中殿筋の起始停止

起始:腸骨翼の殿筋面、腸骨稜外唇、殿筋腱膜
停止:大転子の外側面

中殿筋の作用

中殿筋は最も強力な股関節の外転筋である。
筋線維は上図のように前部線維と後部線維に分類される。
前部は屈曲/内旋、後部は伸展/外旋作用を有する。


中殿筋の歩行時の役割

中殿筋は、骨盤の主要な前額面上の安定機構として作用する。中殿筋の筋活動は遊脚終期から立脚中期後半まで続きます。

その中でも、荷重応答期(LR)における中殿筋の筋張力が、最大筋力の28%に達することが報告されています。

この荷重応答期(LR)で骨盤の側方傾斜が起きます。
骨盤の側方傾斜を制動できないこのような減少をTrendelenburg徴候Duchenne徴候といったりします。中殿筋の機能不全によって引き起こる一つの要因だと考えられます。

さらに荷重応答期では、中殿筋前部線維と後部線維の作用から股関節外旋/内旋の制動を中殿筋が担っていると考えられます。

中殿筋機能不全がある場合、立脚期で股関節の外旋や内旋といった逸脱動作がみられる可能性がありそうですね。


①中殿筋トレーニング

ベッド側の下肢は股関節・膝ともに90°程度屈曲させ、安定した側臥位姿勢を保持、トレーニング側の下肢は股関節中間位・膝伸展位とする。

股関節外転させ、下腿遠位部に抵抗を加える。抵抗に耐えられない場合は大腿遠位部で抵抗を加える。

注意点として、

1. 股関節屈曲

股関節外転時に大腿筋膜張筋による代償が生じることで股関節が屈曲する。このような場合は、わずかに股関節伸展を意識させながら外転運動を誘導すると良い。

2. 骨盤の後方回旋

股関節外転時に骨盤が後方回旋し、大腿直筋による代償がみられる場合がある。このような場合は、骨盤・殿部を後方より徒手的に制御する。


②中殿筋前部線維のトレーニング

股関節内旋位での股関節外転運動

中殿筋の前部線維は股関節外転・内旋作用を有するため、股関節内旋位での外転が有効。

※イラストでは膝蓋骨が内側に向いています。


③中殿筋後部線維のトレーニング

股関節外旋位での股関節外転運動

中殿筋の後部線維は股関節外転・外旋作用を有するため、股関節外旋位での外転が有効。

※イラストでは膝蓋骨が外側に向いています。

しかし、股関節外転運動において、股関節外旋位では中殿筋の活動が低下し腸腰筋の活動が高まることが報告されている。

股関節 理学療法マネジメント p90

股関節外転運動時に股関節屈曲の代償動作が出てしまわないよう注意が必要です。


骨盤肢位と中殿筋の関係

骨盤中間位:64.2±15.8%
骨盤前傾位:66.7±15.2%
骨盤後傾位:53.9±19.4%

こちらは骨盤肢位により中殿筋の筋活動量が変化することを示しています。

中殿筋では骨盤前傾位で一番活動量が高く、骨盤後傾位で筋活動が低下することが分かります。

そのため骨盤後傾位でのトレーニングにならないよう工夫していく必要があります。

骨盤前傾位で運動を行うのは難しいと思うので、無理に骨盤前傾促さず骨盤中間位での運動で問題ないと思われます。

この内容は以前こちらの記事で紹介させていただいたものです。
深く知りたい人はこちらの記事もご覧ください。

https://note.com/chill_style/n/ne0ba7ed1d311


<おわりに>

今回の記事は中殿筋の中でもかなり基礎編となっております。
臨床で活用するのに最低限知っておけると良いレベルだと思います。

中殿筋に関してもっと効率を高めトレーニングできるよう深く学んでいきます!

これからも楽しく学んでいきます!
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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