受身型コミュニケーション
また会話に困ってしまった。
やはり、雑談や当たり障りのない会話が全くと言っていいほど思いつかない。
旧友から食事に行こうと突然連絡がやってきた。二日前の連絡は気持ち的にも準備的にも楽なので助かった。
予定はなかったのでOKを出し、日程と時間だけ決めて、連絡はできるだけ最低限に済ませる。
意図しない形でこちらの言葉が受け取られると修正が効きづらいSNSでのやりとりは、事実と数値的なものだけでどうにかしている。感覚や想像上の文言は、できればオフラインで会したい。
待ち合わせ場所を探すのに迷いながら、10分遅れで到着する。開口一番に「そんな見た目だったっけ?」と驚かれる。自粛期間はひたすら家に篭り、髪も伸ばしっぱなしだったから、驚かれてもなんらおかしくない。
外見の変化に対するお喋りもそこそこに、レストランに入った。久しぶりに食事に誘われたから、てっきり、話したいことや、悩んでることをぶつけてスッキリしたいものだと思っていた。
すると、「ただ予定が空いてて、一人でご飯を家で食べるのは寂しかったから、なんとなくで誘ってみた」と言われた。
拍子抜けした。
もちろん、誘ってくれたことは嬉しいことには変わりないのだが、前回会ったときは悩みを真剣に語ってきていた為、その流れのまま、今回も何か話したいことがあるのだと思った。
そのつもりで、どっしりと重みのある足を運んでやってきた。
「最近は特に悩みもなく、順調にやってるよ、前回は色々と話聞いてくれてありがとね。」
「あぁ、それは何よりだよ。」
それはそうとして、会話のネタに困ってしまった。
互いに喋るタイプじゃないし、黙ってしまうのは全然気にならないタイプだけど、このままずっと静かなままにするのはあまりにも寂しい。
ついでに自分がここまできた理由をしっかりと作りたい。それなりの収穫を持ち帰りたい。
かつては同じ場所にいたとはいえ、今は全然違うことをしている。
でも、その分野に関して、最近どう?しか聞けなかった。掘り下げることもできず、プライベートと為人については何も聞かなかった。
結局、あまりにも自分が人に興味がないのがここで如実にわかってしまった。帰りに遠回りして街並みをただ眺めながら、満足するまで夜を散策していた。30分は無計画に歩き回っていた。
何を聞けばいいかわからない。これといって会話のネタが思い浮かばないし、知りたいことが思い浮かんでこない。
確かに、共通項は少ない人ではあったけれど、その違いすらも面白がって話を膨らませるのが理想的なコミュニケーション及び食事の場じゃないのか。
目の前で対面してるとはいえ、どこまで聞いていいのかのストッパーもさじ加減もわからないまま、歳を重ねてしまった。
受け身型のコミュニケーションでやり過ごしてきた過去を掘り返してみても、大した成果物は埋まっていない。
コミュニケーションとは、一体なんなのか。いまだにわからない。
自分がその実体とかなり離れたところに位置しているのもなんとなくわかる。
いや、そもそも、人に対する興味を深めたいと思いながらも、実際に深まった覚えがない。おそらく本当に興味がないんだろう。それだけの熱量で聞きたいことが出てこない。
能動的なコミュニケーションを誰か教えてくれぇ〜〜!!!!!!
自分を甘やかしてご褒美に使わせていただきます。