見出し画像

春模様をアーカイブして

倉庫を丸ごと借りたようなでっかい箱の中にこれでもかと並べられた古着。
ヨレてダボついたワイドデニムが、ハンガーにかけられて整列させられている。

どんなスタイリングが好きかと聞かれた場合には、ボタン付きシャツを着てネクタイを付けるスタイルが好きだと答える。
自由であり無限の選択肢があるっていうのに、わざわざシャツを合わせるのが好きだ。良い意味で捻くれているのだと、見ただけでなんとなくわからせるには手っ取り早い。

それでも、ワンパターンに収束する前に、多くのものに片足入れておきたいとも思う。だから、古着屋に見かける度に入ってしまう。いまだかつてない衝撃と出会いは、新アイテムよりも過去の掘り出し物に多い。

嫌でも触れる機会がある現時代的文化よりも、興味を持ってタイムマシンに乗り込まないと目に触れることがない旧時代的文化の方が、かえって新発見が多いのは、興味をどこに向けて歩いているのかで変わる。今どこに立っているのかイマイチわからない瞬間よりも、確かな足跡が残っている一直線と並んで、別軸が存在していることで、思いを重ね合わせて共感が生まれやすい。過去の産物は、いつ抱えてみるかで味に違いが生まれる。


お気に入りのTシャツを着たいから、ボトムも合わせてゆるくしよう。ワイドデニムがカジュアルな雰囲気に味を加える。新品とは違う味は、汚れっぽさかもしれないし、味わい深さかもしれないし、自分に酔いしれるだけの気持ち良さかもしれない。

気温の変化が急で、よく間違えがちな春だけど、服装に自由性がある春は、花粉を加味しても嫌いになれない。

自分を甘やかしてご褒美に使わせていただきます。