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#映画感想文

『聖なる犯罪者』低温の緊張感

■ Watching:『聖なる犯罪者』

ポーランド映画、かつ『パラサイト 半地下の家族』とともに第92回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた作品とのことで、ぜひ観ておきたいと思い鑑賞。

罪を犯して少年院に収容されていた主人公のダニエルは、そこで信仰に目覚める。聖職者になりたいと夢見ているが、前科者は聖職者にはなれない。しかし仮釈放中にひょんなことから新任の司祭であると勘違いされ、そのま

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『アメリカン・ユートピア』一人ひとりが作り上げる理想郷

『アメリカン・ユートピア』一人ひとりが作り上げる理想郷

■ Watching:『アメリカン・ユートピア』デイヴィット・バーンによるブロードウェイショーを映画化した作品。

絵本みたいだと思った。言葉と音と動きによって作り上げられた、観る絵本。歌われる言葉が音と動きと共鳴して、目の前にその世界が広がるみたいな感じがした。

中盤、デイヴィット・バーンがバンドメンバーの名前と出身地を紹介するくだりがある。名前と出身地を紹介されたメンバーがソロを演奏する。そ

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『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』憧憬の交差点

『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』憧憬の交差点

■ Watching:『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』私が小・中学生だった2000年代、もちろんインターネットは今ほど普及していなかった。携帯を持っておらずパソコンだって毎日起動するわけじゃなかったけれど、それで特に支障なく過ごしていた。今は何をして過ごすにしても大抵インターネットに繋がった状態でいるなあと、改めて振り返って驚く。自分が大人になったからという

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『名付けようのない踊り』「脳みそが、海に沈んでいきそうな感じ」

『名付けようのない踊り』「脳みそが、海に沈んでいきそうな感じ」

■ Watching:『名付けようのない踊り』田中泯という人を知ったのはいつのことだったか。確かなことは忘れてしまったけれど、その名をしっかりと記憶したのは映画『るろうに剣心』シリーズを観たときであったように思う。若い俳優たちにもまるで見劣りせぬ身のこなしと目が離せなくなるような存在感とが強く印象に残った。

そのとき気になって調べ、彼が俳優である以前にダンサー・舞踊家であることを知った。他の多く

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『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』不器用に少しずつ愛に向かって手を伸ばしていく物語

■ Watching:『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』「愛とはどのようなものか?」
高校生のエリーが、他人の言葉を通してしか知らなかった(他人の言葉ではよく知っていた)それを、自分の体験を通して少しずつ知っていく物語と言ってもいいだろうか。

どこがどう、という説明をするのが難しいのだけど、とても好きな物語だった。これから先も繰り返し観たいと思える作品に出会うことができて嬉しい。

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『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』水溜りの上に立つ人、その鏡

■ Watching:『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』- 私の『若草物語』幼い頃夢中になって読んだ本を思い出すとき、『若草物語』は間違いなくその筆頭に挙げられる。兄弟姉妹のいなかった私は、それぞれに個性の異なる4人のお姉さんたちに、そして四姉妹の関係性に憧れた。

当時、好きだったキャラクターはベスだった。心優しく、音楽の才能に溢れ、人形を友達にしている、病弱な三女。

『ストー

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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』感想

■ Watching:『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』

これまでのMCU作品はすべて字幕で観ており、トムホ声のピーター・パーカーが私のピーター・パーカーだったので今作ももちろん字幕で観るつもり…だったのですが、のらりくらりとしているうちに近所の映画館では吹替版のみしかなくなってしまっていた。それに気づいたのが劇場到着の10分前。どうしようかなと迷った挙句、吹替版デビューしました。

特に

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