キツネなシッポと遊びましょ、の話エピソード4その④騒ぎの後で
とりあえず話④を読んで頂ければココの世界観が伝わります。
うっすーい世界観でスイマセン。日々に疲れたら、そんな時にぜひどうぞ。
今回は感動作を目指してます。それにしてもシッポって、どうなったんでしょうね。
「広瀬さん、広瀬さん。」
先生の声にボクは目を覚ました。少し意識が落ちていたようだ。手足が重い。汗で冷えたシャツが冷たい。そんなことより、ボクが見上げると先生はボクと目を合わせて微笑んだ。
「お母さんも、赤ちゃんも、大丈夫ですよ。念のためにおクスリをうって休んでもらいますね。大したことはできないけど、夕方までここで様子をみましょうか。」
その言葉に、ボクは疲れが吹き飛ぶような心地だった。
「ありがとうございます、先生。ありがとうございます。あの、バッテリー置いていきますんで、使って下さい。」
先生は驚いたようにボクをみた。
「ええ、嬉しいけど。でもそれじゃ広瀬さんの家が困るんじゃ?」
「大丈夫です。奥さんを置いていくなら、バッテリーも一緒に置いていきます。よろしくお願いします。」
「わかりました。預からせて頂きます。こちらにどうぞ、もう眠ったみたいだけど。」
先生はそういうと、ボクを診察室に案内してくれた。奥さんはいつも通り、静かな寝息を立てて眠っていた。良かった…これできっと、大丈夫。
ボクは先生にお礼を言うと、そっとドアを閉めた。外の世界はお昼前のようだ。人混みも随分と収まって、道路の混雑もだいぶ落ち着いたようだ。ただ停電はあちこちで復旧していないのか、エリアにより回復具合も様々なようだ。怒涛の一日を過ごしたボクは、眠気も忘れて通りを歩いていた。何か考えていたのか、正直あまり記憶もなかった。少し疲れていたのかもしれない。
部屋に戻って、体を拭いて、着替えて、寝た。アラームの音に起こされた時、ようやく全身の筋肉痛に気が付いた。こんな痛みは高校の部活以来だろうか。スマホをみると、画面に無数の通知記録が並んでいた。電話も復旧したようだ。台所に行くと、電気もガスも使えるようだ。ようやく日常の世界が戻ったようだ。
ベランダから外を眺めてみた。向かいの建物の壁が一部崩れ落ちていた。壁の残骸が集められて、道路の端に積まれている。その脇を配達の原付バイクが忙しそうにはしり抜けていった。通りの渋滞も解消したようだ。日常が戻っていくような、そんな感覚だ。そうだ、奥さんを迎えに行かないと。帰りはタクシーでいいかな。ボクは冷蔵庫の食材を確認すると、夕食のメニューを悩むことにした。先生にも、お礼に何か持っていこうか。何だったっけ?前に奥さんから聞いた先生の好物。忘れてしまった記憶を、ボクは何とか思いだそうとしていた。
(イラスト ふうちゃんさん)
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