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パンツのままでこんにちは、の話

注:このハナシはフィクションです。ボクの品位に関わるので全て実話だと思うことはお控え下さい。コレに近いことをやって若干のヒンシュクをかっただけです。お願いしますね。皆さん。


相変わらずボクは脳天気に新婚生活を楽しんでいます。
(↓参考記事)


で最近、もう一押しが欲しくなりました。もっと奥さんに喜んでもらえて、もっと盛り上がるには何かないか?数日考えて、ボクは鈴木亮平さんにその答えを頂きました。亮平さん、ボクが大好きな俳優さんです。先日観た映画「エゴイスト」も良い意味で驚きましたが、ボクが亮平さんを尊敬してる一番の理由はコレ↓です。

その名も「変態仮面」。亮平さん、アンタ何やってんの…そう思いつつも、予告編だけでお腹がいっぱいになったとしても、俳優としての道を全うする真摯しんしさと、筋トレ道を突き進むその背中には尊敬の念しかありません。演技の振り幅の大きさもボクは影響を受けてます。

これだ。ボクは暗闇の中、微かな一筋の光を見つけた気がした。


多くは聞かないで欲しい。できれば何も、聞かないで欲しい。


ボクが太宰治なら、きっと「恥の多い生涯を送ってきました」とでも言い訳しただろう。


とにかくボクは、亮平さんに憧れて、彼のようになりたかった。久々に奥さんにウケたかった。泣かせてしまった奥さんに、バカなのって笑って欲しかった。
ダイエットもした。筋トレもやってる。さりげなく奥さんに変態仮面の動画も見せて、前情報も仕込んでおいた。

準備は整った。脳内では情熱のボクが成功を信じて歓喜の歌を叫ぼうとしている。待て待て、まだ今はまだその時じゃない。週末の午後、下の子は塾に行って不在だ。ゴメンと思いながら、ボクは奥さんの衣装ダンスを物色しコスプレの準備を進めた。

しばらくして、玄関のカギを開ける音がした。奥さんが帰ってきた。今だ。ボクはそっと玄関へと移動し、亮平さんよろしくポーズをとった。

「変態仮面、参上!」
恥じらいを捨てて、ボクは精一杯叫んだんだ。
決まった。完璧だ。…パーフェクト。脳内では情熱のボクが歓喜した。その表情はラストサムライの最後に謙さんが見せたような、切ない恍惚に満ちていた…

何かイタい空気を感じた。それに何か、別の視線も感じた。しかも一人じゃない。ボクはおそるおそる奥さんを見た。他に三人もいる。そうだ。昨日ボクに、昼に友達を連れてくるからって、そう言ってたね。思い出した。奥さんは固まったまま微動だにしない。

しばしの沈黙の後、奥さんは静かに玄関のドアを閉めた…

ボクは急いで着替えると、何もなかったかのようにドアを開けた。
「いらっしゃい。ようこそ。」
精一杯の引きつった作り笑顔で、ボクは何事もなかったように、もう一度奥さん一行を出迎えた。

奥さんの目は今までになく冷たかった。ボクは目を合わせないように客人達を迎えた。一人はうつむき、一人は口を抑えて震えていた。最後の一人だけ、ボクの芸事を受け入れてステキな笑顔を見せてくれた。玄関には奥さんが抱えたランチプレートの美味しそうな香りが虚しく漂っていた。

ボクは衣装を抱えて二階の部屋にこもると、一人夜を待った。なんて謝ろうか。ボクの悩みは尽きなかった。脳内では情熱のボクがうなだれてため息をついていた。

奥さんは優しかった。何も言わないでいてくれた。何も聞かずにいてくれた。

きっとこの件は固く封印され、話題にあがることは二度とないだろう。
そして彼女達がランチプレートを囲んで何を語らったのか、それは聞くこともできない永遠のナゾとなるのだろう。


(題絵は変態仮面オフィシャルサイトより 映画はアマゾンプライムで観れます。続編もありました)


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