見出し画像

夢日記

最近、よく夢を見る。
その日の午後には何も覚えていなくて、夢を見ていた、それだけ。何かしら楽しかったような…それ以上の記憶がない。モヤモヤするって、こういうヤツだ。

気になって、ある時恋人に相談した。夢日記を付けるといいって教えてくれた。目覚めたらすぐに夢の記録をつけるのだ…うー、面倒だが仕方ない。
正体の見えない誰かさんと一戦交えるような気分だ。思い出せない数々の夢に悶々もんもんとした僕は、夜が楽しみになった。自称A型几帳面な僕にはちょうど良い。

翌朝、目覚めたが夢を見なかった。
いざ備えたら、こんなもの。それとも、もう忘れてるのか?かえって悶々とした朝を過ごした。そして昼には全て忘れた。

次の朝も夢を見なかった。
見なかったことだけ覚えていた?いや、もうとっくに忘れてるのかも?
僕は自分の記憶を疑うようになった。

そして次の日、僕は幸せな夢を見た。昔大好きだった人に会えた。お互い微笑んで、手をとって海辺を歩いた。僕が彼女に言いかけた時、驚いたような表情でうつむいて、そして目が覚めた。

胸騒ぎがした。何で今になってこんな夢を。後悔とか未練とかいう感情が僕を襲った。天井を見上げてしばし呆然とした。

朝になった。日記どころの騒ぎではない。心を静めるのにも一苦労だ。
昼になって、やはり夢は忘却の彼方へと行ってしまったようだ。

でも、それならこの胸の鼓動は何なんだろう。
僕は何を覚えているんだろう。

(イラスト:ふうちゃんさん)


この記事が参加している募集

私の作品紹介

文学フリマ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?