建築作品とアイドルMVについて語りたい

欅坂46 7thシングル「アンビバレント」のMVが公開されましたね。
いやーすごい。すごかった。
建築の中を踊りながら駆け抜けていく姿に圧倒されて、何回も再生してしまいました…

MVと言えば、歌や踊りもさることながら、舞台となる場所も重要な要素ですよね。その中には、有名建築家が設計した作品が登場するものがあったりして常々気にはなっていました。

せっかくの機会なので、建築作品が登場するアイドルMVをまとめてみました。※今回は、秋元康プロデュースアイドル(欅坂46・乃木坂46・AKB48グループ・ラストアイドル)のシングル曲を中心に集めました。

しかし一言に建築作品が登場するMVといっても、その登場の仕方は多種多様。そこで、MV内での建築の使われ方ごとにグルーピングして紹介していくことにします。

街のアイコンとしての建築作品
MVには街を舞台に撮影されるものが多くありますね。そんなMVの中で建築でのシーンが登場するものは、街のイメージを補強する役割を果たしているといえそうです。

乃木坂46 夏のFree&Easy (2015)
 Bershka渋谷店(設計:Key Operation Inc.)
 その他、渋谷の街中でメンバーが踊っています。

欅坂46 二人セゾン(2017)
 日本アイ・ビー・エム幕張事業所(設計:谷口建築設計研究所、日本設計)
 テレコムセンター(設計:HOK)
 幕張・お台場のアイコン的な建築が登場することで、湾岸のイメージが補強されますね。

フォーメーションダンス×フォトジェニックな大空間
アイドルMVの多く(特にサビ)に挿入されるのが、フォーメーションダンスのシーン。大人数の息の合ったダンスの舞台として、建築作品の映える空間が使われるのは納得です。

乃木坂46 世界で一番孤独なlover (2015)
 東急プラザ表参道原宿(設計:中村拓志/NAP建築設計事務所+竹中工務店)
 サビで象徴的な多面体ミラー張りのエントランスでのダンスシーンがあります。

乃木坂46 ハルジオンが咲く頃(2016)
 まつもと市民芸術館(設計:伊東豊雄建築設計事務所)
 レトロ建築でストーリーが展開されていたかと思いきや、唐突に伊東さんの空間で踊りだします。

乃木坂AKB 混ざりあうもの(2016)
 軽井沢千住博美術館(設計:西沢立衛建築設計事務所)
 フォーメーションが平面的なので、奥行きのある空間が効果的に作用していると思います。ガラスの透明感もひんやりとしたMVの空気によくあっていますね。

乃木坂46 インフルエンサー(2017)
 東急プラザ銀座(設計:日建設計)
 キリコラウンジ、やっぱりフォトジェニック…!素材感が特徴的な空間で、奥行きのない構図が多くインスタ的なMVだなと感じました。イントロ部とラストシーンの舞台になっているのは、未竣工オフィスの素地OAフロア。そちらもなかなか斬新です。

乃木坂46 シンクロニシティ(2018)
 北沢建築 本社工場棟(設計:三澤文子・MSD中井紀子)
 木架構が印象的な大空間で可憐に踊るまいやん。床・壁・天井全て素地、自然光の入る空間で白い衣装で踊っていて、無垢力の高い仕上がりです。

物語の舞台としての建築作品
ここまで紹介してきたものはどれも、1つの印象的な空間を利用するMVでした。一方で、1つの建築内部のいろいろな空間で撮影しているものもあります。

AKB48 上からマリコ(2012)
 自由学園明日舘(設計:フランク・ロイド・ライト)
 メンバーが通う学校の舞台として登場します。

NMB48 山へ行こう(2014)
 横浜港大さん橋国際客船ターミナル(設計:foa)
 最初から最後まで大さん橋ロケ。山へは行かないのか…というツッコミはさておきホール、動線、デッキと全体的に使われています。

ラストアイドル 好きで好きでしょうがない(2018)
 住友ケミカルエンジニアリングセンタービル(設計:日建設計)
 光庭周りの回廊とホワイエをメンバーが移動しながらストーリーが展開していくMV。

ありそうでなかった!ストーリーと空間のシークエンスが一致しているMV

欅坂48 アンビバレント(2018)
 かずさアカデミアホール(設計:坂倉建築研究所)

 空間や歌、ダンス、どれもが良いのですがここで注目したいところは他にあります。このMVの素晴らしい点は、空間とMVのシークエンスが連動していること。
 一般的なMVはシーンごとに別々の離れた場所で撮影し、それをつなげることがほとんどです。ですがこのMVでは、序盤のAメロ・Bメロで廊下・前庭・階段を踊りながら移動し、サビでフォーメーションダンスをするホワイエに到達する構成。これはとても建築的なシークエンスの作り方です。
 また照明の演出も、サビ以外は自然光の中を孤独に踊る、サビは暗転・人工照明でライティングした中で全員で踊るという、テーマを明快に表現している対比的な構成になっています。もちろん無彩色の建築に対し白紺の衣装はよく合っています。

まとめ
ここまで建築作品が登場するアイドルのMVを紹介してきましたが、要点を整理すると
・建築作品がアイドルのMVに登場するパターンは主に、街のアイコン、ダンスのフォトジェニックな背景、物語の舞台の3つ
・更に建築作品の空間のシークエンスと物語のシーン展開が一致した作品が現れ、MVと建築作品の関わり方に新たな可能性を感じた
・つまり「アンビバレント」は最高

「アンビバレント」MVについては、7/31発売のBUBKA9月号で徹底解剖されるらしいので楽しみです。


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