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【第55回】【新刊】室﨑益輝「災害に向き合い、人間に寄り添う」神戸新聞総合出版センター

質問 室﨑益輝地区防災計画学会会長の新刊について教えてください。

概要

 ①室﨑会長の兵庫県立大学退職に合わせて発刊
 ②神戸新聞掲載の論説を基に単行本化
 ③阪神・淡路大震災をはじめとする主な災害をテーマに次世代につなぐべき考え方を解説

解説

①室﨑会長の兵庫県立大学退職に合わせて発刊

 地区防災計画学会の会長である室﨑益輝先生の兵庫県立大学退職に合わせて、室﨑会長の新刊である「災害に向き合い、人間に寄り添う」(神戸新聞総合出版センター・104頁)が2022年3月30日に発刊されました。
 室﨑会長は、神戸大学教授、独立行政法人消防研究所理事長、関西学院大学教授、兵庫県立大学教授等の要職を歴任され、学会等でも、日本火災学会会長、日本災害復興学会会長、地区防災計画学会会長、消防審議会会長、日本防災士会理事長等を歴任されてきました。
 そして、阪神・淡路大震災を経験され、防災・復興の専門家として、防災を担う人材を育てるため、長年第一線で活躍されてきました。
 また、2014年の地区防災計画学会の設立時から会長を務め、学会の研究者たちを指導されており、「燎原の火」のように地区防災計画づくりを全国に広めてこられました。

②神戸新聞掲載の論説を基に単行本化

 本書は、室﨑会長が、神戸新聞の客員論説委員を2008年から務めている関係で、14年間にわたって災害・復興・防災・教育等について神戸新聞に掲載してきた論説を単行本化したものです。

③阪神・淡路大震災をはじめとする主な災害をテーマに次世代につなぐべき考え方を解説

 阪神・淡路大震災、東日本大震災、丹波豪雨、熊本地震、コロナ禍、熱海土石流災害等の主な災害をテーマに、災害から学ぶこと、リスクとの向き合い方、減災の在り方等について、次世代につなぐという意味を込めて、丁寧にわかりやすい言葉で説明されています。
 本書のあとがきでは、室﨑会長は、大震災で学んだ3つの大切なこととして、①災害から目をそらさないこと、②被災者と心を一つにして戦うこと、③社会のひずみを正そうとすることをあげています。そして、この3つの学びを基底に、自然の大きさを理解し、謙虚になって災害に向き合うこと、被災者の苦しみに寄り添い、ともに力を合わせて立ち上がることが大切であると書かれています。
 室﨑会長の説明は事例を用いて大変わかりやすく書かれており、コロナ禍をはじめとする最新の災害も意識しつつ、災害対策の心構えをコンパクトにまとめた良書です。

目次

 事前の災害復興
 相次ぐ火災
 大震災から15年
 危急時の情報処理
 震災障害者
 復興の羅針盤
 被害想定の誤差
 地獄絵を描く
 震災教訓の伝承
 震災遺稿の保存
 丹波豪雨とボランティア
 大震災から20年
 豪雨時の避難
 東日本大震災5年
 酒田大火 復興の教訓
 熊本地震と関連死
 教訓伝承のあり方
 防災教育と人材育成
 大震災から25年
 コロナ禍と豪雨
 次の大震災に向けて
 熱海土石流災害
 後回しのリスク
 あとがき

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