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【第4回】地区防災計画とは

質問 地区防災計画とは、どのようなものですか。

概要

 地区防災計画は、東日本大震災の教訓を踏まえて作られたコミュニティの共助による防災計画制度です。コミュニティの住民や地元企業が主体となって、自ら防災活動を行うための共助による防災計画の制度であり、その特徴としては、内閣府の『地区防災計画ガイドライン』によれば、以下の3点があげられています。
 ①コミュニティ主体のボトムアップ型の計画
 ②地区の特性に応じた計画
 ③継続的に地域防災力を向上させる計画

第4回 3つの特徴の図(内閣府ガイドラインより)

内閣府『地区防災計画ガイドライン概要』より)

解説

 2011年に発生した東日本大震災は、未曾有の大規模広域災害となり、多くの死者や行方不明者を出しました。
 また、大地震によって発生した津波によって、岩手県大槌町のように、町長や幹部が亡くなる自治体もありました。災害が発生した場合は、本来は、行政が被災者をいち早く支援するはずでしたが、あまりにも災害の規模が大きく、広範囲に及んでおり、行政自体も大きな被害を受けたことから、行政が被災者を支援するという「公助」が十分に機能しませんでした(公助の限界)。
 このように「公助の限界」を迎える中で、コミュニティの住民等が相互に協力して災害対応に当たることで、なんとか生活を継続できたコミュニティもありました。そのようなコミュニティでは、体の不自由な方に配慮しながら自発的に避難所を運営する等避難者に対して細やかな対応を行う「共助」による防災活動が大きな役割を果たしました。
 こうして、大規模広域災害時における災害対策におけるコミュニティの力、つまり共助による地域防災力の重要性が強く認識されるようになりました。そして、地域防災力の底上げのため、コミュニティの住民等による自発的な共助の取組を支援し、推進できるように2013年の「災害対策基本法」の改正によって、法律で定められたのが地区防災計画です。
 地区防災計画は、住民や地元企業が主体となり、それぞれの地域の特性を踏まえつつ、相互に助け合い防災活動を行うための防災計画に関する制度であり、コミュニティが持つ共助による防災力を底上げする役割を果たします。
 具体的には、「市町村地域防災計画」の中に、コミュニティの住民等が作成するコミュニティの「地区防災計画」を組み込むことで、「市町村地域防災計画」とコミュニティの「地区防災計画」が相互に連携し、地域防災力を高める仕組みになっています。
 そして、内閣府『地区防災計画ガイドライン』によれば、この地区防災計画の特徴として、以下の3点があげられています。

①コミュニティ主体のボトムアップ型の計画

 地区防災計画は、コミュニティの住民等が主体となって自発的に行われる防災活動に関する計画制度であり、住民等が自ら計画の素案を作成して市町村(防災会議)に提案する「計画提案」という仕組みを採用しています。そのため、住民等の意向が強く反映されるボトムアップ型の仕組みが導入されているといわれます。学術的にみると、戦後日本の防災体制は、中央集権・上意下達の要素が強く、トップダウン型であると言われてきましたが、この地区防災計画は、そのトップダウン型の仕組みを大きく変えるパラダイム転換であると言われます。なお、地区防災計画がコミュニティの現場でうまく運用されるためには、この地区防災計画に基づいて、住民等が自ら計画に基づく防災活動を実施することが重要になります。

②地区の特性に応じた計画

 地区防災計画は、あらゆる大きさの地区を対象にしており、地形、地域特性、想定災害等に応じて、多様な形態をとることができます。
 例えば、計画の作成主体、防災活動の主体、防災活動の対象であるコミュニティの範囲、計画の内容等は地区の特性に応じて、柔軟に設定することができます。これは、金太郎飴のように全国で同じような計画を平等に作成するというような考え方とは逆の発想です。コミュニティの特性に応じて、過去の災害事例や想定災害を踏まえつつ、当該コミュニティでの活動主体である住民等の防災活動の目的やこれまで実施されてきた防災活動のレベルにあわせて無理のない形で発災時に機能するような計画をつくる行うことが重要になります。
 地域防災力を高めるために、住民等が、協力して活動体制を構築し、「災害時に、誰が、何を、どれだけ、どのようにすべきか」等について、計画に具体的に規定することが重要になります。

③継続的に地域防災力を向上させる計画

 地区防災計画では、単に紙の計画を作成するだけではいけません。
 普段から計画に基づく防災活動を住民等が実践し、その活動が形骸化しないように評価や見直しを行い、長期的に継続することが重要です。
 計画を作成したら終わりではなく、そこから継続的に防災訓練をはじめとする防災活動を実施し、その結果について検証と改善を重ね、PDCAサイクルに従って、定期的に計画の見直しを行い、いざというときに計画が機能するように地域防災力を向上させていくことが重要になります。



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