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あらゆる人が孤立したり排除されず、適切なステップでキャリアを描くことを目指す「インクルーシブコース」制定の話

株式会社マネーフォワードは、メンバーの可能性を引き出す、多様な成長機会を作るべく、「Talent Forward(社員の可能性をもっと前へ。)」を掲げています。

マネーフォワードは、MissionやVisionの実現に向けて、「人」の成長とともに、事業と組織を成長させてきました。サステナブルな事業・組織の運営を行うため、人材育成は欠かせないものと考えています。そのため、キャリア形成や能力開発などの多様な成長機会の創出だけでなく、マネジメントによる育成へのコミットメント、多様な視点を受容する環境づくりを大切にしています。こうした多様な施策を通じて、社員の可能性を最大限に引き出し、「社員の可能性をもっと前へ。」を進めていきます。

直近では、マネーフォワードにおける「家族」の再定義を行い、社内規定における

  • 「結婚」の定義に、事実婚(※1)や同性婚(※2)を含む

  • 「子供」の定義に、嫡出子だけでなく養子を含む

ことを決定したり、時短勤務を希望するメンバーが、フレックスと同様の柔軟性をもった働き方を選択できる「時短フレックスタイム制」を導入したりと、常に多様なメンバーが働きやすい環境をアップデートすることに取り組んでいます。

※1 未届の妻または夫と世帯を同一にすること
※2 同性のパートナーと挙式を行うことまたは婚姻関係と同程度の社会生活関係であると相互に認めること

そして2022年6月からは新たに、障がい者雇用メンバーの働きやすさを考えた、新しい評価・報酬の仕組みを定義する「インクルーシブコース」を開始します。

本日はこの「インクルーシブコース」制定にあたっての、私たちの想いと、制度についてお話しします。

「制度を整えよう」と号令をかけた安江(手前)。これまでの課題をまとめ、マネーフォワードにとっての「障がい者雇用」を考え、いろんな方の力を借りつつ、走りきる役割を担当しました。

障がい者雇用メンバーも、キャリアを前に進められる環境の整備が必要

これまで障がい者雇用のメンバーは、個別の事情に合わせた働き方を選択できることを優先していたので、明確な評価や報酬の仕組みを定めておらず、評価担当者の裁量で評価・昇給を行っていました。

人数が少ない時点では、個別に評価・報酬の決定を行っていても均衡がとれていました。
ですが、人数が増えさまざまな部署で働くメンバーが増えてゆくと、制度が曖昧なままでは、上長は「どう評価したらいいのか」という点で頭を抱え、メンバーは「なぜこの評価になったのか」という点でもやもやしてしまう、ということが起こり得ます。

そのため、障がい者雇用メンバーもキャリアを前に進められるよう、制度と環境を整えることが必要でした

ともに業務をする中で気がついた「捨てるべき考え方」と「大切にすべき考え方」

「インクルーシブコース」の制定にあたって、People Forward本部の副本部長である山田さん、障がい者雇用の受け入れを担当している井口さんとディスカッションするところからスタートしました。

山田さん(左)。頼れる兄貴。これまで評価制度の設計や運用の経験を生かして、今回の制度の全体設計・制度運用の説明会等を担当しました。

ディスカッションでは、障がい者雇用メンバーのいるチームのMTGに参加したり、メンバーと1on1をする中で感じたことを言語化していき、「捨てるべき考え方」と「大切にすべき考え方」を整理しました。

【捨てるべき考え方】

  • 体調管理のために、なるべく刺激となるようなことは少なくする方が良い

  • 新しい、難しいチャレンジをするよりも、安心して長く働ける方が良い

  • 個別の事情に合わせて対応をする方が、仕組み化するよりも配慮がしやすい

【大切にしたい考え方】

  • 適度な刺激があったり、適度な挑戦ができる方が、やりがいを感じることができる

  • ほとんどのメンバーはチャレンジしていきたいという意欲を持っている

  • マネーフォワードで働くにあたって大きな指針となる仕組みがあった方が、モチベーションを保てる。そのうえで、個別のコミュニケーションをきちんと取ることが大事

つまり、障がいのあるメンバーは、勤務時間や目標の立て方など個別の事情に基づいた働き方は必要であるものの、働くということに関して他のメンバーと大きく違わない。だとすれば、Talent Forwardの精神に則って、彼らがキャリアを前に進めることができる環境を整えることを最優先すべきだと思い至りました。

「障がい者だから」ではなく、それぞれの個性を尊重するためのインクルーシブコース制定

また、井口さんは、

「会社として障がい者雇用を推進したいのか」

という問いに対して、そもそも「障がい者」だけを分けて語ることに違和感をもっていました。

井口さん(右)。日々、障がいがあるメンバーと共に業務を前に進めるリーダー。今回の制度を導入した先のメンバーのキャリアを描きながら、グレード要件や雇用切替基準の設計を担当しました。

私たちは、社会の中での他者との関わりにおいて、日常的に自分との違いを感じ、それを受け止めて生きています。それは、目の前の相手がいわゆる「健常者」であっても「障がい者」であっても同じこと。特定の誰かと関わる時にだけ自分との違いを感じる訳ではありません。

障がいの有無に関わらず、会社として担当して欲しい業務があり、それにマッチした人材に入社してほしい、という原則は同じであるはず。

何らかの理由で働きづらさや生きづらさを感じ、会社に対して一定の配慮を求める働き方を選ぶ方がいることは事実です。
しかし、会社に対してどんな配慮を求めるのか、どんな環境であれば力を発揮できるのか、仕事を通してどんなことを実現したいのか、といった条件は、マネーフォワードの全てのメンバーが選びうるもの。

なので、障がい者手帳を持っている、というだけの理由で、キャリアが閉ざされてしまうことをなくし、マネーフォワードで働くすべてのメンバーが、同じように働く時間を楽しみ、キャリアや人生を前に進める経験ができる環境づくりをするために、適切な制度の制定が必要だと感じていました。

山田さん、そして井口さんとディスカッションした上で、改めて「インクルーシブコース」の内容を検討しました。

竹内さん(手前)は、雇用切替の基準やグレード要件、昇給制度など、全社の人事考課制度のバランスを鑑みつつ、インクルーシブコースの制度を設計する役割を担当しました。

まず、現在適用している待遇などはそのままに、マネーフォワードのMFグロースシステムの考え方を生かしながら制度を組み立てていくことに。

MFグロースシステムというのは、マネーフォワード独自の評価制度と報酬体系を中心とする人事制度の名称です。マネーフォワードに所属するメンバーは、このMFグロースシステムに則ってグレードや給与が決まります。

これまでは「総合職コース」※3の正社員と準社員という雇用形態のみでしたが、今回新たに「インクルーシブコース」を追加することにしました。
「インクルーシブコース」にも、総合職コースと同様に、正社員と準社員の2つの雇用形態があり、それぞれを3階層のグレードに分けて整理しています。

このインクルーシブという言葉には

「あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう擁護し、社会の構成員として包み、支え合う」
という意味がこめられています(参考:ヒューライツ大阪)。

※3 「総合職コース」は障がい者雇用でないメンバーの人事制度を指しており、当社の定める雇用形態の正式名称ではありません。 「インクルーシブコース」について分かりやすくお伝えするため、便宜上の表現として使用しています。

ステップアップはそれぞれのペースで。安定的に働き長期のキャリアパスを描くこともできるように

今回の制度制定にあたって、「インクルーシブコース」の位置付けは

  • 一定の配慮は受けながら、できる範囲のことをやり遂げることを目指す層

と定義しました。また目標と評価においては、

  • 業務の納期・品質を重視し、わかりやすく達成しやすい目標を掲げて評価

と定義しています。

総合職コースは、成果と成長の最大化を目指し、目標や評価もチャレンジングなものを設定し、報酬の昇降幅にもメリハリを持たせています。

対して「インクルーシブコース」では、飛躍的なチャレンジよりも、着実なチャレンジを続け、安定的な勤務を目指すことを目的としているため、評価による報酬の変動を少なくし、評価自体もわかりやすく5段階に設定しました。マネーフォワードで業務と体調との付き合い方を考えて、それぞれのスピードでステップアップしていくことができます。

また、「インクルーシブコース」のグレード要件メンバーの行動の指針となる具体的な表現にし、さらにインクルーシブコースの正社員から、総合職コースへの切り替え基準も明文化することで、長期的視点でのキャリアイメージを描くことも可能になりました。

この新たなコースを作るに当たり、インクルーシブコースに該当するメンバーに事前レビューを行ったところ、

「自分がいま何を求められているか、明確になってキャリアが描きやすくなった」
「インクルーシブコースから総合職コースへの転換も考えられることが嬉しい」

と、前向きな声をもらうことができました。

マネーフォワードの「障がい者採用」のこれから

代表の辻は、障がい者雇用について、次のように語っています。

「当社は、目指す社会を実現するための3つの重点テーマ(マテリアリティ)のうちの一つにSociety Forward(社会をもっと前へ。)を掲げています。

社会的な意義としても、障がい者雇用を進めることはとても大切。そして、多様なメンバーの個性や違いをお互いに理解しあい、Respectを持って働ける会社を作りたいとも思っています。そのため、お互いが理解し合い、適切な配慮ができる環境づくりがとても大切です。」

この辻の想いをベースに、私たちPeople Forward本部では、障がい者雇用のメンバーも、他のメンバーと同様にチャレンジできる土壌を整え、誰もがキャリアの選択肢を持てることを目指しています。

私たちマネーフォワードがビジョンとして掲げている『すべての人の、「お金のプラットフォーム」になる。』ことを実現するために、多様な価値観や行動様式、特性を"包括=インクルーシブ"することが必要です。
今回のこの「インクルーシブコース人事制度の制定」は、その大切な一歩に繋がると信じています。

障がいの有無に関わらず、マネーフォワードのメンバー全員が「マネーフォワードで働けてよかった」と思えることが、私たちの一番の想いです。社会全体に障がい者雇用を推し進める流れがありますが、障がい者なら誰でも採用する、ということは考えていません。全ての採用において「マネーフォワードの文化や考え方に共感できる人を採用する」という前提は変わらないからです。

年齢、社歴、学歴を問わず、能力や意欲に見合う機会を提供し、組織や事業の都合だけでなく、個人の情熱や適性を尊重した配置や異動を行っていくために、人事制度が存在します(MFグロースシステム)。

「インクルーシブコース」の制定により、障がいを持っている方に対して、目標やキャリアパスについて個別の配慮をしつつ、明確なグレード要件や報酬制度を提示することで、適切なキャリアパスを描くことができるようになりました。

マネーフォワードではこれからも、メンバー全員が人生を前へ進めることができる制度へアップデートを続けていきます。


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