「想像力を持って、行政と読者をつなぎたい」 地域創生戦略室室長・齋藤さん
創業14年目の地域新聞社に中途入社し約24年、新支社や新事業部の立ち上げなどに携わってきた地域創生戦略室の齋藤 浩康さん。
まさに地域新聞社の歴史をつくってきた一人と言っても過言ではありません。
そんな齋藤さんが地域創生戦略室で実現しようとしていること、そして今の地域新聞社をどう思っているのか聞いてみました。
(※撮影時のみマスクを外しています)
入社数カ月で新支社立ち上げ支社長に
――最初に、入社してからのご経歴を教えてください。
32歳の時に入社して25年目になります。1998年の7月に入社して、翌年1月には船橋支社立ち上げの支社長を命じられた。すんごい会社だよね(笑)。そのあと2000年に成田支社長。4年半やって2005年に柏支社長。これも立ち上げで。だけど翌年に業績悪くて次長に降格してる(笑)。
それから2007年に代理店営業部の部長になって、翌年にSP営業部を立ち上げました。2009年には通販事業を引き継いで、2012年に広域営業部へ。2015年に地域創生戦略室を立ち上げて今に至ります。
――波乱万丈! 新しいものを立ち上げ続けてきたんですね。前職は何だったんですか?
地域新聞社は4社目で、最初は親父の家業の新聞販売店を継いだのね。でも生計を立てて行くのが難しくなって家具の販売店に転職しました。実は一応インテリアコーディネーターの資格を持っている。更新していないけどね。で、その会社が買収されてしまったんだけど、その後もしばらく働いてから転職して地域新聞社に入りました。
――地域新聞社に入ったきっかけは?
家に届いた「ちいき新聞」に“求人2枠”(※)で社員募集が載ってて。面接を受けたら「一週間後に全社員が集まる指針発表会という行事があります。そこで新入社員として紹介しますから来てください」って言われて会場に行ったの。そしたら社長挨拶で壇上に上がったのがその面接してくれた人で、そのとき初めて「あ、この人社長か!」ってなった(笑)。
※62×67㎜の求人広告枠のこと
――遅い(笑)。地域創生戦略室では、現在どういった業務をされているのか教えてください。
行政との関わりを通して、どうやって地域貢献をしていくかを考え具現化するということですね。約201万世帯の市民に毎週ポスティングしているフリーペーパーで直接情報を伝達できる民間企業の責務として、行政と市民の橋渡しをして地域に貢献していくのが地域創生戦略室のミッションです。行政機関が抱えるさまざまな課題を解決することでお役立ちをしたい。例えば、千葉市の「ちば市政だより」の全戸ポスティングなどを行っています。
――昨年10月には、船橋市と災害時における情報発信に関する協定を締結しましたが、どういう経緯だったのでしょう?
船橋市に「今困っていることはありませんか?」とお聞きしたところ、危機管理担当の方から実際に災害が起きたときに一人でも多くの市民に確実に情報発信できる手段が必要だというお話があった。もちろん市のホームページや広報紙もあるんだけれども、まだまだネットを使えない高齢者もいらっしゃるので。それで手配りの紙媒体である「ちいき新聞」に市内の被害状況や避難所の開設状況、公的支援サービスなどの記事を掲載して、配布エリア内のお宅や避難所へお届けするという協定を結びました。
元々僕はこういったことをやりたかった。船橋は僕が生まれたところですし。うちの会社は、自治体や市民と共に歩んでいくというのがあるべき姿だと僕は思っている。やっとそういうタイミングが来たと感じているので、もっともっと広げていきたいと考えています。
――タイミングが来たっていうのは?
僕の個人的な考えでもあるんだけど、地域の皆さんに支えられて創業38年を迎えられて、そろそろお返ししていくべきじゃないかと。うちの会社だけが成長しても意味がないので、地域に還元していかないと。
――確かに、昨年リブランディングして「地域の人と人をつなぎ、あたたかい地域社会を創る」というミッションも掲げましたしね。いざというとき、地域のために自分は何ができるのか、日頃からの体制づくりや心構えが重要になりますね。
そうですね。そういうときこそ全社一丸となって、部署とか関係なく貢献していきたいですね。災害時の動きは各本部長や関係者には行き渡っているけど、やっぱり全ての従業員ひとりひとりに知っておいてもらいたいですね。
「ちいき新聞」の可能性を無限大に信じている
――本当にさまざまなお仕事をされてきていますが、地域新聞社に入ってからの大失敗ってありますか?
いや、ありすぎて(笑)。とても語れないね!
――あ、触れないでおきますね(笑)。でも入社していきなり支社長になって苦労はあったんじゃないですか?
うーん、そもそも僕はマネジメントが上手じゃないというか、当時は今と違ってパワーマネジメントの時代だったけど、そういうのは苦手で。部下にちょっと強く言った瞬間に自分が凹んじゃうという。マネージャーに向いてないんだよね。だから体も壊したし。苦しかったなぁ・・・。
――それでもずっとマネージャーを続けていらっしゃって、今はどうですか?
昔は常に会社の内側ばかり見ていたんだけど、今はメンバーが優秀だからさ、みんなに守ってもらっている分、僕は外に向かって仕事ができている。それがありがたいし幸せ。
営業って、ただ何かを売り歩くのではなくて、もっと外から望まれていることや困っていることに対してできることを提供していくべきですよね。今はそこをすごく変えたいと思っている。うちがやれることって限りなくたくさんあると思うから。
――齋藤さんは「ちいき新聞」に対する愛情や思入れが強いですよね。ちいき新聞が持っている力を信じているというか。
うん、無限大に信じている。ただ、まだそれを生かしきれていないとも思っている。新聞を印刷して届けるだけじゃないんだよね。届けた先にあるものをもっともっと想像してみれば、その接点をより深められる可能性が十二分にある。
――その想像力が大事ですよね。
そう! まさに想像力。届けた先にいる読者の方がどういった環境下で「ちいき新聞」を手にするのか、どういう思いで読むのか。そういう想像力が一番重要だよね。
社員10人ワンフロア時代を経て、これから叶えたい夢
――齋藤さんの入社当初は10人ちょっとの会社規模だったそうですが、今や10倍以上になって、違いを感じるところはありますか?
ワンフロアに全ての部署が入ってたから、営業も編集もデザイナーもみんな意見を言い合いながらやってたかなぁ。良い意味で営業とデザイナーが闘っていた。編集やデザイナーや校正は、読者の代弁者として「ちいき新聞」を背負っているんだというプライドがある。それはもう信念がすごいから営業の僕はズバズバ言われましたね。「こんな記事広告を書いて恥ずかしくないの?」とか(笑)。でもそれはすごくありがたいことだよね。そこで読者視点っていうのは部署とか関係なく、社員全員が持たないといけないなという思いになった。
当時は下版するにもみんなで夜中の2時3時までかかってた(笑)。でも僕はすごく楽しかったです。出来上がるのが待ち遠しかったというかね。「ちいき新聞」がすごく愛おしい存在で。やっぱりその熱ってお客さまにも伝わるし、紙面から読者にも伝わるよね。
今のようにシステムや分業が整っていなかったから、遅くなることも多かったけど、ほぼ毎日飲みに行くんですよ(笑)。でもね、お客さまや読者さんからとっても感謝されるから、それがエネルギーになって疲れなかったんだよね。
――すごい(笑)。今後、齋藤さんがこの会社で叶えたい夢はありますか?
僕の夢というか最終的なイメージは、「ちいき新聞」の紙面に市民が必要とする情報が適切に載っていて、その新聞が食卓に置いてあって、家族みんなが読む状態になっている。そして行政からも頼っていただける存在になりたい。うちの優秀な編集スタッフは、各市の魅力を素敵なものとして伝えることができます。そういうものがまずは千葉県でできて、それから全国に波及していくといいですね。地域の雇用にも貢献して、要は情報の循環をしたいわけなんです。そうできると信じているんですよ、僕は。入社して間もない頃からそう思っているんです。なのにいまだに完全にはできてないんだけどさ(笑)。
よく転職されないんですか?独立しないんですか?って聞かれるんだけど、自分が叶えたいことに限りなく近いところにあるのがこの会社なんだよね。
それと僕の持論として「近い人から幸せにする」というのがあって。読者であったり社員であったり。近い人を幸せにできない人は遠い人を幸せにできないんですよ。
あとは何度も言うけどもっと現場の想像力を養いたい。お客さまと読者の望むものを解決できる力、手段として「ちいき新聞」をもっと活用できる力。行政やお客さまに今困っていることを聞いて、できることは何でも手伝いたい。だから広告を作るだけの会社ではないし、「ちいき新聞」を発行するだけの会社でもない。あくまでも「ちいき新聞」はひとつのツールであるという意思統一をしていきたいなと思っています。目指すところが一緒であれば、部署の垣根を越えてそれぞれが得意なことをすればいいだけなので。そうなるとお互いをより尊敬し信頼し合う関係にもなれると思う。
――では最後に社内の後輩たち、そしてこれから当社へ入社を検討される方へメッセージをお願いします。
今は営業拠点も増えて、分業化やテレワークも進んだから、自分が見えている側面だけで判断せざるを得ないじゃないですか。でもその側面ってほんの一部分でしかない。だからこそ、さっき言った想像力を持って背景まで見て欲しいですね。そうしたら、この人はこんなことを考えてくれていたんだ、あんなことをしてくれたんだっていうのが絶対にあるから。見えていない部分は、自ら確認して、「教えて欲しい」って聞きに行く努力も必要。
業務分掌は大事だけど、あまりにもシステマチックになってしまうとなんか寂しいよね。力を貸して欲しいことがあるのなら、ただ指示とか依頼をするんじゃなくて、自分の思いや考えを相手にちゃんと伝えて、理解し合った上でお願いする。そうやってより良い会社にしたいですね。
同じ会社で働いている仲間として、敬意はちゃんと表現していきたい。
僕の場合、お酒が入れば話が早いんだけどね(笑)。別になくてもいいんだけど、あった方が便利なときもあるよな〜。
――今日もこの後居酒屋で第二部をやりたかったですけどね(笑)。落ち着いたらできるといいですね。
そうだね。飲みに行けなくても気軽につながれる、新しいコミュニケーション方法も考えられるといいね。
このnoteを書いた人:編集部 広田みずほ( Twitter / note )
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