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Staatstheater Nürnberg 11.02.24 オペラの記録:ニュルンベルク・オペラ、モーツァルト作曲《ドン・ジョヴァンニ》

2月11日、ニュルンベルク・オペラでモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》を観ました。1月20日にプレミエを迎えたのですが、都合で行けず、やっとこの日になりました。
実は、12月23日、バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)の《こうもり》プレミエ公演後のパーティーで演出家のヴェラ・ネミロヴァに偶然会い、「1月20日、ニュルンベルクのプレミエに是非来て!」と言われていました。

ネミロヴァは1972年ブルガリア生まれ。父親は作家兼演出家、母親は原子物理学者兼オペラ歌手というまさに『銀の匙』をくわえて生まれてきた演出家です。
親と一緒にドイツに来て、勉強はベルリンのハンス・アイスラー。ルート・ベルクハウスとペーター・コンヴィチュニーの薫陶を受けています。

彼女が演出家として独立した頃の2003年、私はボン・オペラで彼女が演出するヴェルディ《マクベス》を観ました。それが素晴らしい仕事で、当時、特に私が気に入った点をコンヴィチュニーに話したことがあります。
たとえば、マクベス夫人のブリンディジ(乾杯の歌)のシーンでは、上から吊り下げられたバンコー(の死体)が晩餐のテーブルの上をゆっくりわたっていく、そこにたくさんの風船を飛ばす、というものです。
コンヴィチュニーも私の意見に賛同してくれて「そうそう、そういうシーンでの彼女のファンタジーとつくりかたは素晴らしいよね」と言っていたことを思い出します。

その後は大きなオペラハウスで演出を重ね、特にフランクフルト・オペラの《ニーベルングの指環》(2010年から)は話題を呼びました。

ちなみに女性の演出家による《ニーベルングの指環》4作全部の演出は非常に少なく、近年では、フランクフルト・オペラのルート・ベルクハウス(1980年代)とマイニンゲン・オペラのクリスティーネ・ミーリッツ(2001年。この時の指揮者は現ベルリン・フィル芸術監督キリル・ペトレンコ、彼はこの《指環》指揮で一躍有名になりました)が話題になりました。

《指環》を女性が演出することはたいへん珍しいことです。
古くは、20世紀初頭にオペラ歌手として活躍したアンナ・バー=ミルデンブルク(1872〜1947)の名前が浮かびますが、実際の演出にどれだけの影響を及ぼしたかについては、現代の『演出』という仕事の観点から研究の余地があります(博士論文が出ています)。
余談ですが、バー=ミルデンブルクは19世紀末、ハンブルク・オペラのアンサンブルにおり、当時カペルマイスターだったグスタフ・マーラーの恋人でもありました。

さて、ニュルンベルクの《ドン・ジョヴァンニ》に話を戻します。

プログラム。

この日のキャスティング。

フォワイエで行われる説明会。みんな熱心に聞き入っています。

今シーズンから同オペラの音楽総監督を務めるローランド・ベアが指揮、レチタティーヴォ・セッコではハンマークラヴィアも弾きました。

カーテンコール。
中央の白い上下はドン・ジョヴァンニ役サムエル・ハッセルホルン。これでもわかるように一際、身長が高い。見た目もいいし、黒のマニキュアをし、たくさんの指輪をはめた指も魅力的でドン・ジョヴァンニの色気も漂う。
レポレッロはソウル出身ウォンヨン・カン。歌唱も演技もうまい。オペラ界での韓国人出身歌手の活躍は90年代からめざましい。

後日、『音楽の友』誌に批評を掲載予定ですので、そちらをぜひご覧ください。

私はモーツァルトの『ダ・ポンテ・オペラ』(ダ・ポンテが台本を書いた《フィガロの結婚》、《ドン・ジョヴァンニ》、《コジ・ファン・トゥッテ》の三作をこう呼びます)の中で何が一番好きかと問われれば、《ドン・ジョヴァンニ》を挙げます。
ところが、《ドン・ジョヴァンニ》、これまでもう本当にたくさん観てきて、良いと思うプロダクションが少ないのです。

しかし、この《ドン・ジョヴァンニ》、本当に素晴らしく、面白い。
まだプレミエがあけたばかりなので、よほどの問題がない限り、このプロダクションはこれからまだまだ何年か続くと思います。
お薦めの制作、ぜひご覧ください。

FOTO:(c)Kishi

以下は劇場提供の写真です。© Bettina Stoess


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