それはまるで、奇跡のような【5/19文学フリマ東京38に出店します】
奇跡のような三ヶ月が終わったあと、待っていたのはさらに奇跡のような三ヶ月だった。
昨年11月、下北沢にある日記屋 月日が主催する「日記をつける三ヶ月」というワークショップに参加した。その終了直後に書いた感想は、このnoteにも公開したのでよろしければぜひ…
たまたま選ばれた15人の仲間と、ファシリテーターのphaさんと一緒に、半クローズドな場で日記を書き合い、読み合った三ヶ月間が終わったとき、そこには奇妙なコミュニティが生まれていた。友達というのとはちょっと違う、でも赤の他人では絶対にない。親しい友人にも言わないような自分の深い部分をさらけ出し、お互いの日々を見守り合った仲間たち。ものすごく近いようでいて遠いような気もする、不思議な関係のコミュニティができ上がっていた。
「僕はもともとネット上で日記をつけ始めたので、コミュニケーション手段として日記を捉えている面がある」。日記屋 月日が主催した日記にまつわるスペースで、phaさんはそう話していた。まさにその通り、われわれはお互いの日記を媒介にして、コミュニティが生まれ育つ過程を目撃した。日記というコミュニケーション手段だけが可能にした、稀有な形のコミュニティだった。
ワークショップが終了したあとも、大半の人が変わらぬペースで日記を書き続けた。そして「このメンバーで交換日記を書いて、文学フリマに出よう」という話になった。参加メンバーは、phaさんを含めた全15名。職業も年齢も、住んでいる場所も趣味嗜好もさまざまな15人、ただ「日記を書くこと・読むことに興味がある」という共通点だけでたまたま集まった15人が、リレーのバトンをつなぐようにして交換日記を書き継いだ。
心を揺さぶられるような出来事を経験した人から、坦々とすぎていく日常を過ごした人へ。つらい一日を過ごした人から、嬉しい一日を過ごした人へ。東京から北海道へ、名古屋へ、大阪へ、京都へ、書き手がその日を過ごした土地へと、日記の舞台もダイナミックに移動していく。前の書き手の日記を受けて、普段は考えないようなことを考えたり、考えたとしても日記には書かないようなことを書いたりする。そしてまた、次の書き手へと日記を回していく。phaさんが言うところの「コミュニケーション手段としての日記」の側面が、ますます色濃くなっていく。
人と人との出会いが奇跡であるならば、この交換日記だって奇跡のたまものだ。われわれは確かに日記上において出会ったのであり、日記上で影響を受け、与え、コミュニケーションをとっていた。人と人との出会いを奇跡と呼ぶのは、つまりは通じ合えたことの祝福だ。ならば日記というコミュニケーションの形を繋いで作ったこの交換日記は、ひとつの祝福の形だ。日記にこんな可能性があるなんて、仲間と日記を書くことでここまで遠くに来られるなんて、最初にワークショップに応募したときは想像もしていなかった。
日記屋 月日のワークショップで日記を書き始めたのが、2023年11月18日。それからちょうど半年後の5月19日、われわれはこの奇跡のような交換日記を一冊の本にして、文学フリマ東京38に出店します。タイトルは『15人で交換日記をつけてみた 「日記をつける三ヶ月」のあとの三ヶ月』。サークル名は「みんなの日記サークル」です。第一展示場 V-01ブースにて、お手にとっていただけたら嬉しいです。
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