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【chihalix回顧展 2016-19】 完全版

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AVON(現F&M)退社時、社内配信で開催した私の個展の図録です(note用に加筆・修正)。この展覧会の目的(動機)は3つ。1つめは自分のポートフォリオ作りのため。2つめは制作ス…
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【広告展覧会・10の視点】 第一章 いつもここから。CH with AD.

私(chihalix)とAD(アートディレクター)とのコラボ。そこから多くの表現が生まれた。想像を超える創造は、いつもここから始まった。 デザイナーと呼ばれている外部スタッフを、私はリスペクトを込めて「AD」と記す。ADは私の企画書と説明と手描きスケッチをもとに、ビジュアルを創造し、加速させる。原寸のレイアウトを組み立てる。色彩を設計する。撮影方法を考え、撮影監督をする。そうしてできあがったものが、日々、社内に回覧されていくのだ。彼らの苦悩や努力の跡など一切感じさせない、美し

【広告展覧会・10の視点】 第二章 超現実を、あなたに。

化粧品の広告販促表現は薬事(現薬機法)による制約を受ける。けれども、いやだからこそ、化粧品のクリエイティブにはこれだけ多様で優れた“非直接的” コピー/ビジュアルが花開いたのではないか。 イメージ訴求、百花繚乱。商品メッセージはいったん純度の高いイメージへと圧縮され、脳に到達したのちに解凍される。現実的すぎるありきたりなイメージは訴求力が弱いし、奇をてらっただけの脱現実では商品の本質が正しく伝わらない。そのギリギリ手前、超現実にこそ正解はある。卓越した超現実クリエイティブは美

【広告展覧会・10の視点】 第三章 コピーにしかできないこと。

あるコメディ映画にこんなセリフがある。「俺は好きだなあ、ラジオドラマ。ここは大宇宙、とナレーションが入っただけでイメージがバーッと広がって、そこは宇宙になる。ハリウッド映画みたいに何十億もかけてセット作らなくていいんだ」。 コピーも同様。優れたキャッチコピーは、読んだ人の脳内に一瞬にして完璧なビジュアルを作り上げる。アイキャッチ、さらにはハートキャッチ。また優れたボディコピーは、何人ものクリエイターが苦労してつないできたパスを、見事なシュートでゴールに沈める。決定力。商品購入

【広告展覧会・10の視点】 第四章 ユーモアで殺せ。

殺せとは何と物騒な。しかし日本語には「殺し文句」という言葉もある。ユーモアは人の心に強く、そして“心地よく”突き刺さる。実際、カンヌで広告賞を獲る作品にはユーモアをモチーフにしたものが多い。国籍や人種を問わず、万人に通じるコミュニケーションでもあるのだ。ユーモアは緊張を解きほぐし、緩んだ心の隙間にスルリとメッセージを滑り込ませる。それは巧妙に仕組まれた、楽しい罠だ。だから恐ろしい。でもどうせ買い物するなら、楽しく買いたいではないか。お客様を微笑ませる表現は、超つまらない“買え

【広告展覧会・10の視点】 第五章 もっと文学を!!

コピーライターに与謝野晶子と和泉式部を起用した。 新ブランド「シェラボン」のコンセプトは、パリジェンヌ meets 日本の美。なのにラフではパリが勝って、日本が負けていた。担当コピーライターに無数のコピーを書いてもらった。それでも絵の強さに対抗できない。彼女と二人で、日本文学の中にキャッチコピーを探すことにした。 有名作品、有名人をタダでキャスティング。さすがのパリジェンヌも、これには真っ青だった?!(下記のビジュアル参照)。この手法、1回で終わらせるには勿体無い。もっと著作

【広告展覧会・10の視点】 第六章 ファンタジー最強説。

日々接する情報が多すぎる。広告販促物など真っ先にスルーされる。カタログの表紙から裏表紙まで、作り手がこだわる“流れ”をロジカルに理解しながら、じっくり熟読する人などいない。 お客様に立ち止まってもらうには、少しでも好感度の高い表現を選ぶこと。 ファンタジーはどうだろう。アナ雪2も大ヒット、ディズニーの勢いは止まらない。クリスマスやハロウィンが日本に定着したのは、ファンタジーの要素がエンタメとして拡大したからだ。みんな夢の国が好き。最も人をときめかせる表現モチーフなのか。そこに

【広告展覧会・10の視点】 第七章 ネーミングしなけりゃ意味ないね。

クリエイティブディレクター(CD)の仕事の半分は「却下すること」だ。制作中の表現には様々な意見が寄せられる。その全てが正しいとは限らないし、仮に正しかったとしても、その反映で別の弊害が生じることもある。CDは全体最適に導くために、嫌われながら却下する。 一方、ネーミングには意見調整があまりない。採用/不採用が全て。故にコピーライターのDNAが純粋に凝縮する。名前をつけるということは、モノに意味という概念を付加すること。哲学的に言えば、名前=存在、存在=名前。私のDNAを継いだ

【広告展覧会・10の視点】 第八章 趣味、改善。

人気ドラマの女性外科医の“趣味” は手術である。内科治療は選択しない。とにかく切除という手段にこだわる。それでもドラマだから“失敗しない”。 一方、クリエイターは企業の主治医だ。コミュニケーション分野における患部と病状を指摘し、正しい処置を施す。風邪薬を出してくれという患者に、そのまま風邪薬を出してはいけない。本当に風邪なのか? まずは自分の頭で考えて診察してからだ。その後、適切な改善で業績を回復させる。臓器移植だろうが漢方薬だろうが、手段は問わない。改善と回復が最終目的。

【広告展覧会・10の視点】 第九章 ボツ・オブ・ザ・イヤー受賞作品。

クリエイターにとってボツは恥ではない。むしろ勲章だ。 そりゃこれだけ大量に作ってりゃ、箸にも棒にもかからない企画や表現も中にはある。でも、それを考え出したことをまずは誇ろうではないか。他人の制作物にケチばかりつけている割に自分では何も新しいものを生み出せない、そんなエセクリエイターよりも、“新しすぎる” ボツ案を量産できるクリエイターを私は尊敬する。 世には出なかったけれども、アイデアやクォリティに秀でていた価値ある仕事を表彰しよう。名づけて「ボツ・オブ・ザ・イヤー」。授賞式

【広告展覧会・10の視点】 第十章 思索、施策、試作。

「ウチのターゲットは60代」と平気で言う人がいる。違う。戦略的に望んでそうなっているわけではなく、そうなってしまっているだけだ。とか、いろんなことを日々、思索する。そうすると固定概念から解き放たれた施策が浮かんでくる。この施策をちょっと形にしてみようか、と思ったり…。最終章でご紹介するのは、ふとした思いつきから生まれた試作集。ロックバンドでいうデモテープみたいなもんです。実際の仕事ではないから自由で荒削り。なのに、なんとなく可能性を感じる。メジャーデビューを目指して路上ライブ