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【文字が読めないと話せないのか?】外国語学習で文字を学ぶ是非を考える

みなさんは、初めて学習する外国語を学ぶとき、何から学び始めますか?あいさつや発音とともに、文字や読み方も学ぶことが多いと思います。しかし、文字って、学ぶ必要があるんでしょうか?


外国語学習の最初の「壁」

外国語学習には文字学習がつきものですし、アルファベットだったとしても、その言語特有の読み方を覚える必要があることも。日本語の場合はひらがな、カタカナ、漢字と文字学習が進んでいきます。
しかし、文字を覚えたり読み方を覚えるって、壁になることがあると思います。文字を覚えるって、労力もかかるし、絵のように似ていて判別がつかない文字を神経衰弱のように覚えていくのは苦行と感じる学習者もいるかもしれません。

文字って、語学学習に必要?

文字を学ぶことは、語学学習に必要なんでしょうか。
周りを見回してみると、そうでもないんじゃないか?という事例が見えてきます。まず、母語を習得している子どもは、先に話せるようになって、後で文字を覚えます。ということは、文字と言語を結びつけて覚えるのは成人(文字を覚えた子ども以降)の特徴と考えることができます。
また、言語には、文字を持たない言語はあるけれども文字しかない言語はない(プログラミング言語は文字しかないですが、人工的に作られたので除外)、という現実があります。日本に近い言語だと、アイヌ語やうちなーぐち(琉球のことば)がそうですし、日本語もあとから漢字を借りて(借用/しゃくよう)、ひらがなやカタカナに発展させてきた歴史があります。
と考えると、人間の仕組みとして文字がなくても言語は使えるし、必須ではないと考えられます。つまり、文字を学ぶかどうかは言語を学ぶ目的による、ということですね。

体験談「文字と音声が結びつかなくても課題遂行できる」

なぜ外国語学習で文字学習がなくても大丈夫かと考えたか。私自身の経験があります。私はモンゴルで働いていたことがあり、仕事のためにモンゴル語でコミュニケーションを取ったり、お知らせを読み解く必要がありました。
仕事が忙しくて(という言い訳で)モンゴル語を学習をすることはなく、その場で聞いた言葉を繰り返しながら、「なんちゃってモンゴル語」が話せるようになりました。
そして、自分のスケジュールを把握するために貼ってあるお知らせを読み解くことができるようになりました。発音できないけど「この文字の並びは『掃除』って意味だ」と、分かるようになりました。人間の適応力ってすごい。
だから、文字と発音がつながっていないんですね。発音はできるけど、文字では書けない。つづりは覚えていないんです。文字の並びを見たら意味はわかりますが、発音は自信なし(のちのち、キリル文字を覚えたのでなんとなく発音はできるようになりましたが、自信はありません)。じゃあ、どうやって単語や発音を覚えているのかというと、わからないんです。イメージのないところから、ポッと音声が出てきます。言いたいことを組み立てるとしても、脳の中で音声だけを再生しています。強いていうなら、カタカナが出てくる時もあります。
多分この状況を文字で説明してもわからないと思いますが、音声だけでもA1レベル*は十分できることを実感しました。お店で買い物したり、物を借りたり、行きたいところに行ったり。もちろん、「外国人だから」って状況を汲んでもらったり、助け舟をたくさん出してもらっていますが、なんとかやりたいことはやれます。

*A1レベル
CEFRによる言語のレベル表記。A1は「よく使われれる日常的な表現や言い回しは理解でき、使うことができる」程度。

文字がわからない限界

しかし、文字と音声が結びついていないと、限界もあります。文章が書けないので、メールやSNSでのメッセージのやり取りができません。口頭でのコミュニケーションに限られるのも課題になってきます。この時代、いつも電話をかけるわけにもいかないですし…
また、文法や活用が体系化しないし、自分がどこで間違ったか可視化しにくいので、どこかで壁にぶつかります。モンゴル語とは別に、インドネシア語を学んだのですが、こちらは一から、ちゃんと発音も練習して、書く練習もしました。大体文字と音声がつながっています。インドネシア語はアルファベットだという楽さもありましたが、モンゴル語よりいろいろなことを話せる自信があります。文字で表現できるから、SNSの発信もできます。そして、文字で読めるから検定試験も受けられました。そして、C級(初級後半〜中級前半ぐらいだと思う)に合格してしまいました。モンゴル語は文字がつながっていないから、そうは行きません。インドネシア語で検定が取れたから、モンゴル語もちゃんと勉強したら検定取れるかも、文字と音声がつながっていないのは惜しいかもと思ってしまいました。

文字を学ばない利点

では、語学の授業で文字を学ばないと、何がいいのでしょうか。一番は、学ぶハードルが低くなることです。母語の文字を知っている学習者(小学生以上?)なら、母語の文字で発音が表記できます。カタカナ英語ってやつですね。もちろん、原語の発音と少し違ってしまいますが、読んで発音するハードルは下がります。こうやって話せると、口頭のコミュニケーションがすぐできます。読み書きはいいから、話したい。コミュニケーションが取りたいという人には悪くない方法だと思います。
話したいのに、文字学習が続くとモチベーションも下がりますし、覚えられないとさらにモチベーションが下がりますよね。まずは少し話せるようになってから文字を覚えるという流れもいいのだと思います。

文字を学ぶ利点

文字を学ぶ利点はたくさんあると思います。

  • 原語の発音が分かる

  • 辞書が引ける

  • 原語でメモができる、文章が書ける

  • 文字でやり取りができる(文通、メッセージなど)

日本語の勉強では、特に口頭でコミュニケーションを取るだけではなく、高いレベルの日本語を習得する予定のある人(留学して日本語で学問を勉強する)や、読み書きが必要な仕事(例えば、介護職で資料を読んだり日報を書く必要があるなど)をする予定がある人は、最初から文字を学んでいた方が効率的だと思います。
それに、文字を勉強するのが好きな人もいると思います。文字を読めた方が言語学習が楽しいという場合は、文字の学習もするのがいいですよね。

言語学習の目的は?

言語を学習するには、その人ごとの目的があると思います。その目的に合わせて何を学習して、何を学習しないのか取捨選択するのが大事だと思います。語学学校に通うと自分が学びたいものが選べないこともありますが、先生に追加で教材をもらったり、筆記試験の結果が悪くても気にしないようにするなど、メリハリはつけられると思います。


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