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大学生自転車日本一周旅十五日目:高田(上越市)から富山駅

本編

 ついに新潟から脱出できる。クソ道だらけの新潟から。思えば事故もあって4回の夜を新潟県で越している。これはツンデレじゃないぞ。もううんざり。新潟は田んぼに囲まれているからこそそういう道になっているんだろうけど、自転車には向いていない県だったとつくづく思う。そんなに新潟ともこの日の朝でお別れってわけだ。

 行き先は富山。ここから北陸三県を一気に突破して近畿へ行こう。近畿には友達がいるから泊めてもらえるかもしれないし、市街地が集まっていてむぎゅっとしているから田舎続きの道のりと比べて回りやすそうだ。出発してから、一度も知り合いに会っていなければ駄弁りもしていない。ああ、楽しみだ。

 この日は、朝から雨が降っていた。もう期待もしていない。どうせ土砂降りに変わる。海沿いを走るから今日も風が強いかもな。景色なんて楽しめそうにもないし、視界が悪いから事故も心配。日本ってこんなに雨が降る国だっけ?雨が降る確率バグってるよ本当に。せめてパラパラで終わってくれたらいいんだけどな。

 前日にいろいろルートを調べていたら、直江津のあたりから糸魚川市の中心辺りまで久比岐自転車道が通っていることが判明した。これまでさんざん自動車の恐怖に晒されてきた身として、自転車専用道を通れるなんて、神様がいるのかと疑っちゃうレベルで嬉しい。安全・安心。これがどれだけありがたいか。そうか、三洋ペイントのおかげか。

 また、上越市が自転車安全マップみたいなのを作ってくれていて、危険な場所をリストアップしてくれていた。その中には通る予定だったトンネルも入っていた。ありがとう、上越市。たぶんこれまでも危険なトンネルはいっぱいあったからそのうちの一つなんだろうけど、事前に避けられるに越したことはない。もしかしたら、ほかの場所でも、調べておけば避けられた苦労があったかもしれないと、いまさらながらに後悔。

 こうやって、安全を第一に糸魚川市までのルートを策定。糸魚川市からは日本海沿いに進んでいけば富山県に入れる。そこからは基本的には平地だから一安心。まずは、富山県に入るまでがカギだな。そう思いながら、雨の中自転車をこぎ始めた。レインスーツのナイキGORE-TEXジャンバーに財布と携帯を入れて。

 久比岐自転車道までは上越市が作ったマップのおかげもあって順調だった。トンネルの迂回の道では一気に人気がなくなって不安にはなったけど、すぐに海沿いに出ることが出来たから良かった。自転車道も基本的には車道と完全に分離していて安全。ほとんど登り下りもないから楽。もともと電車が走っていたトンネルみたいなのも通れてとても楽しかった。

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 ただし、ここまできれいに進みすぎて、逆にこの自転車道が終わったとたんに危険にさらされそうだなともうっすら感じていた。そうであってほしくはないんだけど。また、雨脚は予報よりも確実に強かった。ほらね。てか、このパターン多くね?しかも、日本海側行くときほとんど雨やんけ。

 予想通り、自転車道を抜けてから道は危険になった。雨のせいでやはり視界は悪い。自動車の運転手を信じる。

 海沿いのルートを策定する理由の一つとして、海沿いだったら山は登らなくて済むから、というのがある。すなわち、ほとんど登りがないことを期待している。しかし、富山県に近づくにつれて、一気に登り基調になっていった。あれ?予定と違う。親不知が近づくにつれ、どんどん田舎に入っていくと同時に歩道はなくなり、大型車も多くなっていく。トンネルが急激に増えた。トンネルは運の悪いことに登り。白線の外側は異常に狭く通れたもんじゃない。なのにトンネルはカーブが多い。これ、下手したら死ぬぞ。急に命の危険にさらされ、やばい道に入ってきてしまったことに気が付く。かといって引き返しはできない。また危ない道を通らなければいけないし、戻ったところで残っているのは山越えという選択肢。こちらも非常に危険。おい、絶対に途中であきらめるなよ。止まったら死ぬと思え。そう自分に言い聞かせ、必死にトンネルを漕いでいった。時には後ろから来た大型トラックが安全のために一時停止する場面もあった。本当に申し訳ないと思いつつも、できることは必死に漕ぐことしかないから、諦めずに前を向く。危なくしんどい場面が続いた。

なんとか親不知のホテルや遊歩道がある場所へたどり着く。これでいったん車からの恐怖からは逃れられる。珍しく自転車から降りずに登り切った。もし自転車を変えていなかったら途中でギブアップだったかもと考えると、この前の自転車交換にも意味があったりして。

 休憩もかねてその遊歩道を自転車を押しながら歩き、親不知についての説明文やその形を見ていた。下を見下ろすと日本海の波がぶつかっている。昔の人はこんなところを切り開いていたと考えると、アホだ。多分この旅をやってるやつ以上にアホ。「親不知」という名前も、その危険度の高さからついたと説明されていたような気がする。今は安全にはなっているから気楽に通れてよかったが。

 しかし、その道を進んでいくと、またこれまで来た国道にぶち当たった。可能であればもっと安全な道がいいと思っていたので、いったん引き返して別の選択肢を模索するも、自転車が通れそうな道は見つからない。あきらめてまた危険な道へ合流。しかし、これまでの頑張りのおかげで、もう登りの局面がほとんどなかったので、下りで後続の車の邪魔にならないように飛ばしながら、一気に県境を越えることか出来た。

 その後、自動車専用のトンネルがあったのだが、そこは丁寧に何十メートルも前から自転車は通れないと案内してくれていたので、危険を冒すことなく、少々回り道にはなってしまったが、コースを変更して進むことができた。ほかの道もそうしてくれよ。歩道が消える警告とか、自転車はこっちを通った方がいいっていう案内とか。自転車には優しくないよ、この国は。

 さて、無事に富山県の朝日町というところまで来て、コンビニに入って昼休憩をとることに。しかし、ジャンバーから取り出した財布が、革製品だったこともあり、雨でシミシミになっていた。赤色の財布だったので、俺の4枚しかない英世さんがふにゃっふにゃ&赤く色遷り。マジか。これ、紙幣として扱ってくれんのかなこれから。そんな不安を抱きながら、そこではカード払いで問題を先送りにして休憩をとった。

 財布だけじゃなく、スマホも全然反応しなかった。青森県にいた時と同じ症状で、水分による誤反応で勝手に真っ黒の写真が撮られたり、ずっとロック画面のままで充電を食われたり。もう、このジャンバーも信用できない。防水と思っていたら案外染み込んで来ている。これから道がゴチャゴチャしそうだっていうのに。ここからはスマホは基本的にはあきらめていこう。

 そして再出発。一時的に雨が弱まったりはするものの、決して止むことはない。ただし、幸いなことに、そこから富山駅までの道のりはずっと平地であったので、気楽にペースを落として漕ぎ進めることができた。というか、最後のほうは漕ぐ気力もなくてスピードが落ちただけだけど。

 一日中雨に打たれたせいで体が完全に冷え切ってしまっていた。濡れたtシャツに風が当たってスースーする。服は暴風だからこそ上着とtシャツの間に変な空間がある感じがして、それが寒さを連れてきている。

 さらに、道もよくわからない。だけど、方向は合っているからと何も考えず走っていった。国道にある道路標識みたいなやつが頼り。

 なんだかんだで富山市まで順調に来ることが出来た。初日に方向音痴続きで全然目的地にたどり着けなかったのと比べると、大きな成長。駅の近くの道はさすがに勘では難しかったが。トイレ休憩もかねてイオンに行きたかったんだけど、案の定少し迷ってしまった。まあ最終的にはたどり着けたからまだ良かったけど。トイレで服の水気を少し落としながら、気持ちを落ち着けてゆっくり。数十分トイレにこもった後、買い出しもかねて食料品のコーナーに入ったんだけど、まあ寒い。外にいるだけでも寒かったのに冷房にあたるともう我慢ならない。鳥肌が止まらないどころか震えちゃう、まだ9月の初日なのに。でも、この状態で時間が経ってもそれは改善されないだろうから、風邪をひいても仕方がないと割り切って、半ば急ぎ気味で買い物を済ませた。

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 その後、自転車屋でタイヤの空気を確認してもらい、富山駅へ。ホテルのある側の駐輪場に自転車をを停めることができ、屋根はなかったものの無料だったのでありがたく停めさせていただいた。次の日は大雨予報で外に出る予定もなかったので、この日のうちに寒い中雨に打たれながらわざわざ富山県庁まで歩いて記念撮影をした。

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 そして、ホテルに着くと一目散に風呂に入って体を癒した。なんとか風邪をひく前に温まることが出来た。

 翌日は大雨であることと、その中で山を登る危険性を考慮して、初めての完全オフにすることにした。だから、ホテルにまた連泊。幸いきれいなところで、部屋内の設備も充実していたからよかった。電子レンジまであるとは。

 翌日、雨はほとんど降らなかった。なんやこれ。呪われとんのか。

ルート

 高田駅から国道8号線に行き富山方面へ進む。だが、上越市の自転車安全マップみたいなやつに、その先のトンネルは通らずに迂回をしてくれと警告されていたから、途中で右側の脇道に入って海沿いへ。その後「郷津」という信号で8号線と合流するのだが、そこからは久比岐自転車道の始まり。糸魚川市の途中まで自転車道に従って進む。自転車道が終わったらまた国道8号線に合流し、富山駅を目指した。もしかしたら富山県の朝日町から富山駅まで違う道を通ったかもしれない。

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