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大学生自転車日本一周旅一日目:寮から東京都庁を回って千葉県庁へ

本編

 前日は夜までだらけていた(いざ行くとなると途端にいつもの生活が恋しくなってくる病に襲われていた)ために、出発は12時頃になってしまった。とはいえ時間はたっぷりあるわけだし目的地も決まっていなかったから、根拠もなく大丈夫と考えていた。

 江田駅に到着し、いざ出発。ところが出発する瞬間になっていきなり大雨が振りだした。ゲリラ豪雨だった。これまで一週間ほど雨続きで、この日やっと雨が止んだから出発しようとしていたのに、幸先悪く雨が降り始めてしまった。ただし、まだ駐輪場にいたから、その雨に打たれることはなく助かった。相当強い雨脚だった。20分ほどすると雨は弱まり、ところどころ晴れ間も見えだした。そんな奇妙な空模様の中、ここから二か月ほど戻ってこられないことを寂しく思いつつも、希望を抱いて最初の一漕ぎに力を込めた。

 まずは渋谷まで行こうと思っていた。全くと言っていいほど地図を見ていなかったけど、江田から渋谷まで電車で一本だから、線路にくっついていけば渋谷まで行けるはず。そう思って駅を追いかけながら進んでいった。しかし、早くもこのプランには限界が来た。鷺沼を超えたあたりで線路から強制的に引きはがされてしまったのだ。ここら辺は土地勘がないから軌道修正の仕方が分からない。なのに、自分の中の方位磁針を頼りにするというギャンブルに出てしまう。

 それでも溝の口駅までは何とか行くことが出来た。ここまでは時間のロスもそんなになかった。しかし、ここら辺から訳が分からなくなってくる。自分の方位磁針が揺らぎ始めてしまったのだろう。結果として二子玉川に行きたいのに自由が丘方面へ行ってしまう。しかも、自由が丘がどこなのかがよく分かっていないのに自己流で軌道修正をしてしまったから、さらなる状況悪化を招いてしまうことに。二回スマホを見て現在地をチェックし軌道修正を試みたものの、全然渋谷方面に向かっていけなかった。

 しかも頭が悪いのが、仮にきれいに田園都市線についていけていたとしても、二子玉川から先は地下鉄になるから訳が分からなくなるということに一切気がついていなかった。もう1年以上利用しているのに、そんなことも分からないポンコツぶり。さらに、今だから言えるけど、国道246号線を走っていれば苦労もなく渋谷まで行けた。江田駅のそばを246は通っているのに。やっぱりリサーチは大事。

 結局直線的に渋谷まで行くことが出来なかったために、いったん五反田まで行って渋谷駅方面へ折れていくことに。最終的にはなんとか渋谷まで行くことが出来たからよかったものの、3時間程かかってしまった。多分246だったら1時間ちょいあれば行けた。旅の始まりで体力が有り余っていたからよかったけど。

 渋谷に到着できたものの特に用事があるわけではなく、そのまま新宿にある東京都庁へ。ここが記念すべき最初の記念撮影になる。都庁までは代々木公園の東側を通っていった。実際に都庁について、記念撮影用の「東京都庁」と書かれている石碑を探す。しかし、あるのかもしれないが見つからない。ここでも無駄に時間を使ってしまい、結局「東京都庁第一庁舎」と書かれた石碑の前で撮影。多分これじゃないよなとは思いつつも、もう夕暮れに差し掛かり始めていたので千葉方面へ急ぐことにした。

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 これも今更だから言える話だけど、最初の記念撮影は神奈川県庁でするべきだった。なぜなら、そっちのほうが迷わなかったであろうし、最後にわざわざ横浜まで南下する必要がなくなるから。最終日まで読んでくれたら分かるが、あの日は埼玉県庁の後に横浜まで写真を撮りに南下してきている。変に労力を増やしてしまっていた。

 話を戻す。急ぐとはいっても、皇居と東京駅は見てみたかったので横を通ることにした。東京の大学に通っていながら一度も生で見たことがなかったし、新宿から見て千葉方面に運よくあったのでついでにね。まだ初日だったので一つ一つの景色が新鮮で楽しかった。

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 ここからは本格的に千葉県庁へ急ぐ。道が広く自転車専用レーンもあったから漕ぎやすい。自転車を漕いでいる人も多かったから、その人たちの後ろについてすいすいと走っていった。千葉県との県境を越える。日はだんだんと暮れ始め、あたりは一気に暗くなっていく。併せて、これまでの都会の景色が一気に流れ去っていき、急に街は色を変えてゆく。

 浦安市の途中になって、船橋を目指しているはずなのに周りの景色が森のように見えて不安が募り始めていた。その時、横断歩道で他の通行人が一斉に左折していく光景が目に入ってしまった。そうか、このまままっすぐ行っても街はない。左折したら船橋のほうなんや、と思う。さらにスマホを開いてマップを見てみると、現在地を示すカーソルは左折すれば船橋へ行く方向を向いていた。渋谷までに散々迷ってしまった苦い経験があったから、今回はマップもより丁寧に見ていたのだが、それが功を奏したらしい。助かった。また迷い込むところだった。

 しかし、心の中にはかすかな疑問もあった。船橋まで一本道だったはずなのに左折しなきゃいけないってどういうことだ?でももう自分をあてにしちゃいけない。大勢の人が左折したわけだし。

 というわけで左折して進んでいったのだが、やはり疑問が拭えない。船橋に向かっているはずなのに、道路標識に船橋の文字がない。なんなら「行徳」と書いてある。もちろん進んだとて一向に船橋は見えてこない。おかしいと思ってもう一度マップを細かく見てみる。すると、進むべき道からどんどん外れていくカーソル。今はこいつの方位磁針がバグっている。あの横断歩道で迷わなければ逆にスムーズに行っていたのに。変に不安になってしまったせいで(あとマップのカーソルが変な方向指していたせいで)関係のないところに来てしまっていた。時間のロスが多すぎて泣けてくる。この調子でいけばいつゴールできるんだろう。とりあえず、みんなが行くから正しいという考えはここでもう捨てることにした。

 また元の場所まで戻って再度千葉を目指す。時刻が20時に近付いてきたので、時短営業のせいで閉店してしまう前にご飯を食べる。余裕はないからもちろんチェーン店。因みにこの店で調べてみたらまた道を間違えていた。そんなに致命傷にならなかったからよかったけど。もう本当に嫌や!

船橋の中心部あたりからは道が広く歩道もあったので安心して漕いでいくことが出来た。また、道にも迷わなくなっていた。

 22時ごろ千葉県庁に到着。まだ明かりはついている。残業長いなとか思いながら県庁の看板を探す。しかし、全く見つからない。二周ぐるっと回ってみたけれど見つからない。というわけでそれっぽいところで写真を撮っておいた。いきなり妥協。

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 さて、ここからは寝床を探さなければ。県庁の近くは都会だからあまり好ましくはなかったけど、疲れていたし時間も時間だったので近くの公園で寝ることに。端っこのほうでテントを広げて寝っ転がる。しかし、このテント、なんとファスナーが付いておらず閉めることが出来ない。つまり開け放した状態で寝なければいけないわけ。それじゃあテントを買った意味がないじゃんと思いながらも、もうどうしようもないのであきらめて寝た。

 この日は、野宿は警察にばれたら連れていかれると思っていたからとにかくビビっていた。足音がなったらいつでも起きておけるようにしようとしていたため、小さな物音にも反応していた。後で調べてみたら公園で寝ること自体に違法性はないということが分かったからその後は落ち着けたが、この日は終始スイッチが入ったままだった。夜中に猫らしき動物が近くを通ってガサって音がした時は本当に初日にしてこの旅が終わったかと思った。

 23時ごろに徘徊していたおじいちゃんとかもいた。木をぼきぼき折ったりしていたから、襲われたらいやだなとか考えながらヒヤヒヤしていた。そのせいもあってか、とても疲れているはずなのに全く寝付けなかった。明日からまだまだあるのに初日からこんな調子とは、と焦る。結局この日は長くても30分で目が覚めて、周りを見渡してまた寝て、、、というのをずっと繰り返した。テントが閉まらないので虫が入ってくることもざらだった。野宿ってこんなにしんどいのか。現実を突きつけられてしまった。

ルート

 この日は、通ったルートが分からないほどにぐちゃぐちゃに進んだ。江田駅→渋谷駅→東京都庁→皇居・東京駅→千葉県庁という感じに経由していった。東京駅から千葉県庁は国道357号線を通ったはず。

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