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大学生自転車日本一周旅十九日目:和歌山駅から神戸市まで

本編

 やはり、野宿は厳しい。まだ夏だというのに、夜中はとにかく寒い。何度も起こされては、寝る前に履くのをさぼったレインパンツを履いたり、手をポケットに入れたり。なんなら寒すぎて一回体を動かしたりもした。全然深く眠れない。さらに、耳元で小さな虫が飛ぶときの「プーン」という音でも目が覚める。まだまだ自然には慣れない。初日に比べたら一回の睡眠が長くはなったけど、それでも2時間くらいで一度目が覚めてしまっていた。

 そして、野宿の日の朝は非常に早い。なぜなら日が昇ってしまうからだ。午前5時、いや、それよりも早くから散歩を始める人が出てくる。その人たちが持ち歩くライト、歩く音、話し声、そしてオーラによっても目が覚めてしまう。野宿は違法ではないことを知って安心して眠りについてはいたが、通報されたらとか悲鳴を上げられたらとか、やはり不安も尽きない。5時過ぎには完全に目を覚まし、夜中から朝方にかけて冷え切ってしまった体を動かして温める。ダッシュまでしてやった。

 先ずは大阪に向けて出発。紀ノ川にかかる橋を越える(ちなみに倒壊したやつではなかった)。そして、朝食を食べにコンビニへ。準備が整い、和歌山大学の方へ進んで山を越え、県境を突破しようとした。だが、和歌山大学を越えた先にあるイオンあたりで、道が完全に怪しくなった。自転車でも通っていいはずなのに、歩道が無く道も狭い。不安が募る。そんなに険しい山では無いはずだけど。無事故を祈る。

 問題なく大阪へ抜けていくことが出来た。大阪に入ってからは山を越えることはないため、あとは楽ちんだと思っていた。しかも、あの大阪。これまでは比較的田舎というか人口的にも景観的にもあまり都会とは言えない県ばかりを通ってきていたが、大阪はさすがにね。しかし、期待は裏切られた。当たり前だろうが、大阪の南部あたりということもあって全然都会じゃない。道もたいして広くはない。しかも、時間帯の影響で登校中の児童・生徒が多く通りづらい。そのうえ、ずっとアップダウン。正直アップダウンが一番嫌いで、いっそのこと平地にしてくれよとずっと思ってるのに、ずーーーーっとアップダウンが続く。せっかく期待してた大阪なのになんも面白くないやん、ってべそをかきながらも、早く友達に会いたいという気持ちをここでもエンジンに、コツコツと漕いでいった。

 正直、大阪市に入らないぐらいのところまではそんな感じの道だった気がする。だが、大阪に入ったら入ったで別の問題が。それは、大阪のおばちゃん自転車に日傘さして漕ぐからめちゃくちゃ邪魔問題。雨の日にみんな傘さすから道がふさがって抜かしたいのに抜かせないのと同じ状況。見た目を気にする年齢でもないだろうし、大体もともとの顔がきれいだったとは到底思えないのに。どうせ日傘の効果なんてたかが知れてるだろうからやめてくれよ。ほんとにあれで道がふさがるから通りにくいのよ。しかもおばちゃんたち漕ぐのヘタクソだし。あの、自転車に日傘をさせるクリップみたいなのを発明した奴は絶対に許さん。

 急に始まった日傘チャリの異様な光景にも目を慣らしながら、通天閣を遠目に見たら、いよいよ大阪の中心部難波へ。難波付近は人通りと自転車交通量が非常に多くとても通りにくかった。しかも、高さのある建物が密集しており、ちょっと圧迫感のある街という印象だった。難波グランド花月の隣のたこ焼き屋でたこ焼きを購入し、道頓堀とグリコを一目見て(あれ、グリコこんな感じやったっけとか思いながら)、大阪府庁並びに大阪城公園へ。

 難波で買ったたこ焼きのお店は、店舗を構えているというよりも出店みたいな感じだったから、お持ち帰りにして公園でまったり食べようと思っていた。しかし、パンパンの俺のエナメルバッグの中、期待をした方がバカ。公園についていざ食べようと思ったら、たこ焼きはぺちゃんこになってしまっていた。まるで一枚の焼き物のような見た目。うわー、もったいな。でも、味が変わったわけではないから。うまいのはうまいのよ、やっぱり。せっかくだったら見た目もきれいな状態で食べたかったが、そんなわがまま言っても仕方がない。おいしいたこ焼き食べられただけでも満足。

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 ピカピカに装飾された大阪城を見ながら大阪城公園をぐるっと回って、歴史感じる大阪府庁と記念撮影し、ここからは神戸を目指して漕いでいく。県境あたりからは国道2号の下道みたいなところを通ることに。しかし、ここでも問題発生。それは、歩道橋ありすぎ問題。その下道は横断歩道がないところが非常に多く、毎度毎度歩道橋みたいなのを越えていかなければならなかった。そのたびに自転車から降りては押して登る。横断歩道さえあれば一瞬で通過できる距離に、何倍もの時間と労力をかける。強い日差しがコツコツと俺の体力を削る。全然進め無いわりに、距離は詰まらないからムカつく。

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 途中で阪神甲子園球場の横を通ったので軽く一周したものの、試合があってるわけでもないし、夏の甲子園も閉幕したから、正直あまり面白いところはなかった。ただ、一度は夏の甲子園を見てみたいと思った。あれはある種一つのスポーツみたいなもんだから。

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 国道2号を何とか希望をもって乗り越え(予定時間よりは普通に押した)、神戸の中心部付近へ。あの有名な「BE KOBE」のモニュメントがあるところで一人さみしく記念撮影をし、県庁とも写真を撮って阪急春日野道駅の近くに住んでいる友達と落ち合った。

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 久しぶりの人、会話。とにかく楽しい。人と話すことの重要性を肌で感じた。中身のある話はほとんどしていないけど。

 翌日は雨が降りそうという予報もあり、岡山までは行ってホテルをとることにした。距離は結構あるけど、次のことを考えたら行くしかない。

 夜は長い、だらだらと高校時代の思い出話等に日が越えても花を咲かせていると。

ルート

 紀ノ川を越え、県道752号線を通って大阪府へ。そのまま道なりに進む。西成区を越え、先ずは通天閣へ。その後、北へと進んで難波に行き道頓堀へ。さらに北東へ進み、大阪城公園と大阪府庁を回る。そこからは西に移動したのち国道2号の下道を通って神戸市の三宮あたりまで行った。メリケンパークまで南下した後は県庁まで北上し、阪急春日野道駅でこの日は終了。

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