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大学生自転車日本一周旅三十三日目:いちき串木野市から宮崎駅へ

本編

 あまり眠れなかった。車のライトや懐中電灯のせいで何度も目が覚めてしまった。四国を経て少しずつ野宿がうまくなっていっていただけに残念。だが、迎えてしまった朝を巻き戻すことはできない。寝足りない感覚を残しつつも今日の旅路への準備をせねば。

 海の近くだったからか、結露はほとんどできていなかった気がする。初使用の寝袋もきちんとその役割を全うしてくれた。寝袋を収納して朝ご飯用に買っておいたパンを食べる。5時を過ぎて明るくなってくると、釣りに来た人から絶対に変な目で見られるから出来る限り急ぐ。まあ、そう思われたところでって感じではあるんだけど。

 準備が整ったら早速日置市へ。だが、正直な話、日置市に関してはほとんど覚えていない。ピンクの服でランニングしている人がいたな、そういえば。山の田舎道だったはずだけど、死ぬほどは登らされていない。ちゃんと記憶が戻ってくるのは、鹿児島市に入ってやっと都市らしくなってきたところから。店、交通量、雰囲気すべてがそれっぽくなってきた。中学三年生の時の九州大会が鹿児島で行われたから、その時の記憶を思い出しながら(多分行ってすらいないところだから記憶もクソもない)行く。そういえば白熊おごってもらったな。

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 で、県庁があるところまで南下し、旧鴨池陸上競技場へ。いまだに思い出せるあの頃の記憶や風景。中高6年間四継を走ってきて、バトンが最後まで途切れず戦い抜けたのはあの年だけだった。九州二位だったけど、福岡にはその後の全国大会で二位を取った中学校があって、各県から1チームだったから全国大会には出られなかった。九州大会が終わった後に、他中の先生が、リレーもほかの種目と同じように標準記録を作った方がいい、と言っていたのも懐かしい。またまた回顧おじ発動。

 さあ、次は霧島市まで行こう。その矢先、当時宿泊したホテルにバッタリ。何も変わらない。試合前日のことも、まだ鮮明に思い出せる。

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 気を取り直そう。漕ぎ始めて少しすると、西郷隆盛像が。犬を連れているあの大きな奴ではなく、背筋をピンと伸ばして立っているやつ。その近くでは、明治の建築が残されていたり、銃弾が石垣にめり込んだ跡があるなど、歴史が現在にも生きていた。あの頃の時代の人々も似たような景色を見ていたんだと思うと、なんか感慨深い。山とか登ってても思うのよ、自然がありふれている場所では。1000年前の人も似たような景色を見ながら移動したんだろうなとか。まあいいけど。

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 というわけで、そろそろいいかげん霧島を目指すわけです。が、まずは姶良市を通る。そしてその前に桜島。仙厳園というところの近くのセブンから眺める桜島がまあきれい。まるで写真撮る用だろって言いたくなるようなスペースまであった。しかし、ここからは本当に危険。車通りが非常に多いのに、歩道は無し。雑草は生え散らかし。その割には左右からの自転車通行者がそこそこあり。場所が場所ってのもあるやろうけど、こういうところの工事を急いでくださいよ国交相。市街地に入ると道はめちゃよくなったけど。姶良市街からはそのまま霧島へ。

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 霧島に行く途中で、精矛神社の看板が立っていた。一瞬精子神社に見えてしまったわけです。すぐにそうじゃないことには気が付いたけど、もう精子神社が頭から離れない。もしその名前だったら「願掛け(顔かけ)に参拝」とかうまいこと言えたのにって考えてた(ちなみに前日は、田舎で野宿中に女に襲われてもヤンキーが裏にいるかもしれないから断るみたいなきっしょいストーリーを考えてた。寒気。)。

 そんなこともありながら霧島市街地を抜けまたも山道ゾーン。なぜか向かい風が強い。村上市には及ばないけど、登り坂でこれはきついよ。

 さて、ある程度進んだところで、まだ昼飯を食べてなかったから、さらなる登り坂に突入する前にどこで食えるのかをマップで探していた。すると、そう遠くないところにラーメン屋が。しかも鹿児島ラーメンが食べられるらしい。鹿児島ラーメンが何なのかはよく分からない。だが、なんとなくラーメンを食べたいなと思っていたからちょうどいい。行って鹿児島ラーメンとやらを食べてみようじゃないか。

 口コミには長い長い下り坂に入る入り口にあると書いてあった。ちなみに、その書き込みをした人は逆方向から来た人だった。つまり、そこまでは逆に登り続けなきゃいけないということ。ところが地図上ではそんなに遠くはない。なんだ誇張か、と思って自転車にまたがりった。

 予想通り完全な山道に突入。狭いうえに歩道もない奴。降りて押すべきではないやつ。懸命にこぎ続けていたけど、一向に終わる気配がなさ過ぎてギブアップ。結構登ったはずだが、意外と長かった。というわけで押していくが、ラーメン屋どころか、まず店自体が360度見えない。やっと口コミの意味を理解しはじめた。だけどもうすぐだから。そうやって根拠はないが言い聞かせる。しかし、終わる気配はいまだに見えない。

 へこたれそうになった時、目の前に一枚のCDが。見てみると、AVではないか。こんなど田舎の山道に?と困惑はしつつも、このエロに始まってエロに終わる一日を実感しながら、力が湧き始めている自分に驚いた。それは興奮によるものではなく、単純にこんなところにAVが落ちているのが予想外すぎて、それによってキツかったのに気が紛らわされたから。下を向いていても、たまにはいいことあるんだなと思った。

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 100m先には、今度は裏返ったCDが。内容の想像はつく。どうせAV。さっきは生〇出しみたいな作品名で確か1って書かれてた気がする(よく見たら全然違った)から、今回は2枚組の2ほうじゃね?(ちなみにAVをお店で買ったり借りたりしたことは一度もないのであくまで予想)とか思って、足でCDをひっくり返した(理由は分からんけど手で触りたくはない)。全然違った。全く関係のない作品。以上、ここまで正直どうでもいい話でした。もちろん持って帰ってはいません。長距離ドライバーが賢者タイム中にでも窓から捨てちゃったんでしょうかね。

 さてさて、しんどいのには変わりはないけど、下を向く時間も悪くはないってお告げかとかのんきに考えながら、歩き始めて1時間は経過していただろう頃、やっとラーメン屋に到着した。黒豚ラーメンを大盛でチョイス。更にはチャーハンまでいっとく。感想、ラーメンは正直普通のでよかった。黒豚の角煮食べたけどようわからん。食事を愉しむには、まだ舌がおこちゃまらしい。

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 霧島市を抜けたら都城市に行くんだけど、ここまでに散々登ったから、基本的にはもうあまり登らない。シンプルな高地って感じの景色が続く。その後、都城についたはいいけど、特にやることは無かった。休憩したら早速宮崎へ急ぐ。ちなみに、途中で撮った写真とか景色は良かったよ。

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 宮崎までは山を越えるけど、基本的には山下りか平地。そこまでしんどくなかった。ただし、山の上の雲だけ色が黒で、実際気付くか気付かないかぐらいの降雨はあった。ここまで天気が持ってくれているから、このくらいの小雨なら気にもならない。

 宮崎市街へぐんぐん下って近づいていたとき、変な人発見。自分はよく立ち漕ぎをするし、下るときも気持ちいから立って乗っているときがある。ただ、それは自転車だからやってるし、他にやっている人もいるとは思う。ただ、その立ち乗りして下っている(確か)原付がいたのだ。さすがに爆笑してしまった。そもそも絵面として面白いし。車道の真ん中であの丸いヘルメット被って立ち乗り。ってか、安全的にも法律的にもそれってアウトな気がするけどどうなんやろ。気持ちよくなりたかっただけなんやろうけどね。じゃあやってること痴漢と一緒か。

 そんなこんなで宮崎の市街地まで到着。途中の警察署か交番かは忘れたけど顔はめパネルがあった。あれ一人でやったら面白いじゃんとか思ってわざわざ引き返した。だけど、結局チキって立ち去った。ズコー。このチキン野郎が。

 宮崎ではチキン南蛮でも食べたいなとは思っていたけど、いかんせん時間が押してたから断念。ホテルも駅からは離れているところだったし。ああ、明日は野宿だ。

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ルート

 いちき串木野市から鹿児島市まで国道3号線を走った。その後、国道10号線を走って都城市へ。都城市からは国道269号線に乗って宮崎市まで行った。

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