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【選挙ウォッチャー】 なぜNHK党がバズることに成功したのか。

 これまでの選挙で「92連敗」という金字塔を打ち立て、昨年10月の衆院選では全政党で唯一の「獲得議席ゼロ」となったNHK党。このまま参院選で滅亡するかと思いきや、Twitterのトレンドにはほぼ毎日「NHK党」の文字があり、バズることに成功していると見られます。
 ただ、これらがすべて尊師・立花孝志の「戦略」なのかと言うと、偶然の要素が多く、単なる非常識が「炎上」につながり、そこに「反知性の層」が乗っかって、このたびのブームを作り上げていると言えます。
 この世はいまだ、尊師・立花孝志のことを「能力のある人間だ」とか「正義のために頑張っている人」だと思っている40代~50代くらいの情弱のオジサンで溢れているため、なぜバズっているのか、そのカラクリを皆様にお伝えしたいと思います。


■ 反知性の層の大好物は「陰謀論」である

 なにかと生きづらい世の中をどうにか懸命に生きている僕たちが、うっかりハマってしまいやすいもの。それは「陰謀論」です。
 どうしてこんなに頑張っているのに結果が出ないのか。どうしてこんなに働いているのにお金をもらえないのか。どうしてこんなに貧乏なのに税金ばっかりたくさん払わされるのか。こうした世の中の悩みをスッキリと解決してくれるもの。それが「陰謀論」なのです。

NHK党に「陰謀論」を持ち込んだ黒川敦彦の手腕で結果は出せるのか

 NHK党の幹事長である黒川敦彦は、まさに「陰謀論者」です。
 尊師・立花孝志のキャッチフレーズが「NHKをぶっ壊す」であるのに対し、幹事長・黒川敦彦のキャッチフレーズは「ユダヤマネーをぶっ壊す」です。いわく「ユダヤマネー」とは、世界経済を牛耳るユダヤ系の人々による闇の組織が作り上げた、何をしても「闇の組織」が儲かるようになっているという国際金融資本のこと。
 この他にも、新型コロナウイルスは武漢ウイルス研究所から流出したものであるとか、選挙は「ムサシ」というマシーンを使って選挙の結果が改竄されているとか、さまざまな陰謀論を語ることで、人々の興味・関心を引き寄せます。
 例えば、「どうして僕たちは儲からないのだろう」という悩みには「お金はすべてユダヤ人たちが牛耳っているから、僕たちが儲からない仕組みになっているんだよ」とか、「どうして2年以上経っても新型コロナウイルスが収まらないんだろう」という悩みには、「これは人工的に撒かれているウイルスだから最初から終わらないように設計されているんだよ」とか、「どうして自分が投票した候補が勝てなかったんだろう」という悩みには、「それは特別な機械が使われて結果が改竄されているので、最初から当選しないように出来ているんだよ」みたいな感じで、すべては「陰謀論」に結び付けるとスッキリ解決してしまうという便利なヤツなのです。
 こうした「陰謀論」は、まずテレビや新聞では語られません。その理由は明確で、テレビや新聞というのは、たくさんの人によって管理されているため、アホのディレクターやアホの記者がいきなりトチ狂って陰謀論を語り始めた時に「さすがにこんなにアホな記事は世の中に出せない」という当たり前の判断が働くからです。ところが、今は個人がインターネットで何でも発信できる時代になり、YouTubeにはアホの陰謀論で溢れています。黒川敦彦がYouTubeでお金を稼いでいたのも「陰謀論」に数字があったからです。

陰謀論を語ることで票を集めるのがNHK党の戦略である

 陰謀論には数字があります。
 具体的には、新型コロナウイルスについて書かれた本でも、真面目に新型コロナウイルスを検証する本は売れず、「本当は新型コロナウイルスなんて存在しない」とか「マスクを外して健康になろう」という本が売れているといった具合で、みんなが読みたいのは学術的に書かれた真面目な本ではなくて、嘘やデマで溢れた「陰謀論の本」ということになります。
 陰謀論の特徴は、バカでもわかる説明になっているということです。例えば、どうしてこれだけの円安や物価高に対して何の対策もできていないのに自民党が勝ってしまうのかということを説明するのは大変ですが、「ムサシという機械を使って全部改竄しているんだよ」と説明すれば、説明はすべて省略できます。開票作業は誰でも見られるようになっているので、実際に見に行けば不正選挙が行われていないことぐらいは分かるはずですが、バカで情弱な人たちは検証することがありません。なのに、みんなが知らないことを自分は知っているという感覚に陥り、本当はゲロを吐くほど頭が悪いことになっているのですが、自分は真実に気づいた「頭の良い人たち」という位置付けになり、優越感に浸ることができる。これが「陰謀論」です。
 こうした陰謀論は「参政党」でも利用されていますが、「NHK党」では初期の頃から利用されています。例えば、「NHKは不正の温床だ」という話もそうだし、「立花孝志はNHKの裏の裏まですべて知っている」という話もそうです。実際は、ただの「雑用係のオッサン」と表現した方が的確なのに、「プロ野球の放映権を交渉したのは自分」とか「冬のソナタを買い付けてきたのは自分」とか「海老沢会長の右腕で、闇のお金はすべて自分が管理していた」という話は、まさに「陰謀論」のような話です。「そんなことが本当にあったら面白いかも!」という話は語られやすく、そして、利用もされやすいわけです。
 そんな前提の中で、NHK党は「2つの陰謀論」で耳目を集めることに成功しています。
 1つ目は、「NHK党が中国共産党のスパイに狙われていた」という話です。冷静になって考えてほしいのですが、もし自分が中国共産党の立場だったら、日本を侵略するための足掛かりとして、よりによって「NHK党」から攻めるでしょうか。まず狙うべきは、たくさんの議席を持っている自民党や立憲民主党といった大政党でしょうし、実際、「日本共産党」「中国共産党」は名前こそ似ているものの、「餃子の王将」「大阪王将」以上に違うわけですが、ネトウヨの中では「同じもの」になっているのですから、わざわざ「NHK党」から侵略する必要もありません。
 もとはNHK党が「600万円の供託金を出してくれたら、誰でも公認する」と豪語していたところに、中国出身で今は帰化している日本人の方が応募をしてきただけに過ぎませんが、それがネトウヨから問題視されたことを受け、「アイツは中国共産党のスパイだった!」と騒ぎ立て、ネトウヨからの称賛を集めました。
 しかし、とても可哀想なことに、この方は既に帰化されているので「日本人」ですし、確かに中国共産党から「素晴らしい活動だ!」と評価されたことがあるのですが、どうしてそう評価されたのかと言うと、日本で「ダイヤモンド・プリンセス号」の感染爆発が起こった時に、観光バス会社をしていたその人が、危険を顧みずに中国の観光客を迎えに行き、中国に帰国させてあげたからでした。当時は新型コロナウイルスが何なのかも分からなかった時代ですから、その勇気ある行動を中国共産党が絶賛。コメントを求められた時に、「今は日本人だけど、故郷の中国のことは今も思っていますよ」と言っていたことが掘られ、「やっぱりコイツの心は中国人だ!」ということになったわけです。でも、もし僕がどこか他の国で観光バス会社を営み、その国に帰化していたとして、国籍の上ではすっかり外国人になっていたとしても、日本人が困っていたら助けると思います。それで日本政府から「ありがとう」と言われたら、僕だって「日本人が困っていたら助けるのは当然じゃありませんか。僕も心は日本人ですから」と言ってしまうと思うのです。ただそれだけのことで「スパイだ!」と言ってしまうのは、あまりに可哀想で、これでNHK党から立候補しようとしていた方は相当に叩かれてしまったのです。もはや人権侵害です。

綾野剛さんに対する名誉毀損を足掛かりに議席獲得を目指す立花孝志

 もう一つは、尊師・立花孝志が「報道ステーション」に出演した際、本当のことを言ってしまったから番組からつまみ出されたという陰謀論です。実際には、前日に「綾野剛さんの淫行問題をテレビでぶっ込む」と名誉毀損の犯行予告を出していたため、テレビ朝日から「テーマに沿った話をしてほしい」と念押しをされていたに過ぎません。
 しかし、多くの人はそんな事情を知らないもので、立花孝志がトチ狂ったように「テレビは洗脳装置です」と言い出し、テレビ朝日のお願い事を暴露し始めようとしたため、このままでは綾野剛さんに対する名誉毀損をされてしまう可能性があると判断した司会者の大越健介アナが、立花孝志のコメントを遮りました。これがアホの陰謀論者たちの心に火をつけ、「立花さんは本当のことを言っているのに、それを止めるのは真実を言わせないための圧力だ」となってしまい、NHK党が絶賛されるに至ったのです。
 これまで何度も指摘していますが、立花孝志が綾野剛さんに対してやっていることは、非常に悪質な名誉毀損です。今度の参院選が終わった後に、立花孝志はこの件も含め、複数の容疑でブタ箱行きになる可能性さえあると思います。だけど、そんな事情を知っているのは、日頃から「NHK党」を研究している僕の記事を読んでいる人だけで、ほとんどの人は事情を知らないので、まるで「本当のことを言ってはいけない圧力があった」と感じているのです。でも、テレビ局側が嫌がっているのは、誰かの名誉を毀損する行為です。下手に立花孝志が暴れたことで、仮に芸能人が命を落とすようなことがあってはなりません。テレビ局側も慎重にならざるを得ないのですが、もしそのまま放置していたらどうなるのかと言えば、まさに「日曜討論」に出演した黒川敦彦のようになることも証明されました。


■ NHK党における最大の陰謀論

尊師・立花孝志の「計算」こそ「陰謀論」でしかない

 NHK党における最大の陰謀論は、ズバリ、尊師・立花孝志が「計算」でこれをやっているという勘違いです。まるで立花孝志が「天才」で、こうやって「おふざけ」をしているのも、すべては1票を獲得するための戦略であるという話。これこそ紛れもなく「陰謀論」です。
 尊師・立花孝志がやっていることは、すべて「後付け」です。
 立花孝志には選挙に強い印象があるかもしれませんが、つい最近まで「92連敗」でした。しかも、なぜ立花孝志自身が選挙に出ないのか。それは小金井市長選で、他の3人の候補が1万票以上を取る中、立花孝志だけが「678票」しか取れないというゲロを吐くほどの人気の無さで、メンタルを完全にやられてしまったからです。もう落選したくないだけ。

 中には「立花孝志のメディア戦略は一流だ!」とおっしゃる方もいらっしゃるのですが、立花孝志がやっていることは、炎上した後に「自分は正義のためにやっているんだ」という言い訳をすること。そして、それを永遠に繰り返しているだけです。これだけのことで、一部のアホの脳味噌をアハつかせ、「立花さん、すげぇ!」になっている奴がいるのです。
 例えるならば、立花孝志は「頭からパンティを被っているオジサン」なのですが、「今のご時世、何でもかんでもマスクを着けろと言って、半ば強制的にマスクを着けさせられるでしょう。だったら、いっそパンティを被ってマスクの代わりだと言ってやることにしたんですよ。こんなことをする人間は自分しかいないでしょう。だから、注目されるんですね。でも、まさに注目されることこそが本当の狙いなんですよ。より多くの人に半ば強制的にマスクを着けさせられる世の中が、本当にそれで良いのかを問いたい。多くの人に見てもらわないと意味がないですからね。こうして頭からパンティを被ることも、全部計算なんですよ」です。しかし、よく検証してみると、そんなに深い理由があるわけでもなく、ただ「頭からパンティを被りたいだけの変態のオジサンに過ぎなかった」というのが、立花孝志なのです。最初からパンティを被りたいだけ。

 何事もまるで正義があるかのように語る立花孝志ですが、その実態はまったくそんなことではないということを皆様にお伝えしています。そして、そんな立花孝志を絶賛して持ち上げている堀江貴文にも、非常に大きな責任があることは、ここにも記しておきたいと思います。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

焼き畑農業のように、新たなN国信者が生まれ、1議席獲得が固まりつつある

 NHK党による綾野剛さんに対する名誉毀損は、非常に深刻です。既に国政政党となっている者が、自分たちの1票のために、みんなが知っている人気の芸能人を吊し上げることで共感を得ようとしていることには、もっとみんなで抗議をしていかなければならないと思います。大人のイジメを見て見ぬフリをするというのは、この国をより荒廃させることになってしまうのではないでしょうか。

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