【科学しよーぜ!】見えない光がもたらすサイエンス
1781年3月13日
43歳の音楽家であるウィリアムは、夜空を見ていた。
のちに産業革命と呼ばれた当時、地上から見える星空たちは、私たちが想像するよりはるかに美しいものだったのだろう。
音楽家であった彼の興味は天文学にも及んでおり、自らの手で天体望遠鏡を製造し、当時のグリニッジ天文台長であったネヴィル・マスケリンとも面識があった。
彼がその日、自宅の屋上から見たものは、のちの天文学に大きな影響を与えることとなる。
彼はその日、天王星を人類で初めて発見したのだ。
この功績をもとに、「ウィリアム・ハーシェル」は、天文学の研究に専念するようになる。
現代において、彼のもう一つの偉大な功績がある。
彼は、赤外線を人類で初めて発見したのである。
こんにちは。
谷塚総合研究所、塚本です。
私たちが日常的に接している「光」というもの。
今日はその「光」を様々な角度から学びます。
Hypotheses non fingo
上記のタイトルはラテン語で「われ仮説を立てず」という意味。
遡ることアリストテレスから引き継がれてきた「神の意志による世界の構築」を前提とした科学への挑戦ともとれる一語。
「科学的手法」の礎を築いたアイザック・ニュートンがプリンキピアに書き記した言葉だ。
彼の業績として有名なのは万有引力の法則であるが、その当時の彼は、微積分法の発見。
そして、プリズムによる分光の実験も行っている。
プリズムとは、ガラスや水晶を原料として光を分散・屈折・反射させるための道具である。
白色の光というのは様々な色の光の集合体であり、プリズムを通すことによってそれぞれの光は分散される。
赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の「七色」で構成されると定義したのもニュートンである。
私たちが普段目にしている光というのは、これらすべての色の集合体である。
プリズムによって分散された光は、色によってどのような違いがあるのか?
私たちが目にする光は可視光と定義されていて、色の違いを生み出しているのは「波長の違い」だ。
音に置き換えると想像しやすい。
音の高さを決定しているのは、音を発する物質の振動数、つまり波長である。
振動が細かければ細かいほど、音は高くなる。
光も同じで、振動の細かさによって色の違いが生まれる。
私たちが普段目にしている白色の光というのは、様々な振動数をもった光の混合体である。
ただ、人間の目が感知できる振動数には限りがあり、振動が多すぎたり少なすぎたりした光は、私たちの目で感知することが出来ない。
ただ、私たちの目で感知できないからと言って、そこに光が存在しないわけではない。
目に見えない光の探求
冒頭に登場したウィリアム・ハーシェルは、目に見えない光を偶然発見した。
ニュートンの分光について調べていたハーシェルは、プリズムに当てた太陽光から七色を取り出し、様々な実験を行っていた。
ハーシェルは七色それぞれの温度の違いを調べるため、七色それぞれに温度計を当て、標準温度を測るため七色の外側にも同じく温度計を設置した。
ハーシェルの実験は予想外の結果となり、赤色の光の外に置いた温度計が高い温度を示した。
その結果ハーシェルは、目に見えない光が存在することを認めざるを得なかった。
それが現在の赤外線である。
この、目には見えない光の存在が知れ渡ると、必然とさらに外側の見えない光の探索が始まった。
つづけて紫外線が発見され、1895年にヴィルヘルム・レントゲンによってX線が発見された。
日本で一般名称となっているレントゲンは
X線発見者の名前が由来である。
現在の科学ではX線の先に放射線が発見されていて、赤外線の前には電波がある。
放射線とは、光の波長のとても短いものであり、
電波も、目に見えない光であると言える。
光の正体
ここまで光の性質について説明してきたが、そもそも光とは一体何なのか?
ニュートンの時代から光の正体について研究がなされ、光の正体には矛盾する二つの仮説。
光は波である。
光は粒子である。
この二つの仮説は、どちらも科学的に正しくどちらも間違いであった。
光が波としてふるまう観測結果もあるが、粒子としてふるまう観測結果もある。
多くの科学者たちを悩ませてきた問題に対し、一人の科学者が両者を統合した仮説を立てた。
アルバート・アインシュタインは光は波と粒子の両方の確立を備えた「量子」であるというプランクの仮説を発展させ、それを実証した。
後に「フォトン」と名付けられた光の量子は量子力学によって説明され、現在でも多くの研究がなされている。
量子力学においてフォトンは、波としての性質を示すときもあり、粒子としての性質を示すときもある。
現在の科学によって示されている光の正体は、フォトンという量子だと言われている。
ちなみにアインシュタインは有名な相対性理論ではなく
光量子仮説をもとにした光電効果の理論解明で
ノーベル物理学賞を受賞している。
まとめ
・光の色の違いを生み出しているのは、光の波長の違い
・目に見えない部分にも光は存在している。
・量子力学の登場以降、光の科学はより正確に、そしてより理解しづらいものへと発展している。
普段目にしている光ですが、その性質の応用は電波から放射線に至るまで様々です。
量子力学や相対性理論、統一場理論の発展によって、私たちが生きているうちに、科学の新たな発明を目にすることが出来ると考えています。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。