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良いところだけど、いつ住んでいいかわからない【ふるさとワーキングホリデー】

自然が豊かで、人が暖かくて、地域の交流が活発で、都会に暮らすストレスなんか全部飛んでいって。みたいなそんな甘いもんじゃありませんでしたが、なかなか楽しめました、田舎。

「楽しめました」ってのも偉そうですね。杖ついた老人が若手の演劇を見た後に机の上の資料から目を離さずに言ってる感じがして。「楽しかったです。」にします。

1.色々と

利用したのは「ふるさとワーキングホリデー」という総務省の制度。行政お得意の横文字ですが、言ってしまえば住み込みの短期バイト。今回僕は酒造で働き、農家のご夫婦にホームステイのような形で滞在しました。

酒造の朝はとことん早い。7時半出社の16時半上がり。日の出とともに働き始め、日没とともに帰宅する。ピラミッド建設の労働時間ときっと同じです。日本酒の味をわかる舌など有しておらず、「飲みやすい」か「飲みにくい」しか評価の語彙がない僕ですが、日本酒の製造工程に携わるのはかなり面白かったです。

詳しく書くとキリがないのですが、30度の部屋で米に麹菌を降ったり、樽をかき混ぜたり。知らないことを知れる労働、いいじゃん、と。4月からの新入社員生活も案外悪くないかもしれない、なんて思ったりもしました。

酒造の社長がダウ90000を知ってたのがいちばんの衝撃。

農家民宿のご夫婦も暖かく、実家気分で過ごさせてもらいました。「東京から春休みに暇つぶし気分でくる大学生」なんて最も鬱陶しいだろうに、丁寧に受け入れてくださって感謝しかありません、ほんとに。

2.けど、住めない

けど、2週間で正直に思ったのは「住めないな」と。2週間も滞在させてもらって何言ってんだこいつは、と自分でも思います。「調子乗るなよ」と思った方、少しだけ弁解の時間をください。なんか食べながらで大丈夫なので、ぜひ読んでください。チョコパイとか。

決して都会の方が優れているとか、そういうことが言いたいんじゃないんです。自分の住んでいる世界が最も素晴らしい論者は個人的にもあんまり好きじゃありません。ただ、なんというか、「住むタイミングがない」ひいては「いつ住んでいいかわからない」というのが率直な気持ちです。

たしかに自然は綺麗でした。雪を被った山脈はずっと見惚れていたかったですし、深呼吸すれば体内がエアーダスターで洗浄されているような気分になりました。カフェの空席を探して歩き回るストレスも、もちろん満員電車の地獄も味わう必要のない街。

行く前は「老後は田舎でだらだら過ごしてもいいなあ、雪好きだし。」なんて思っていましたが、その考え自体が甘かった。「だらだら」なんてないんです。スーパーもコンビニもアクセルを踏み込まなければ辿り着けないし、雪が積もれば降ろさなきゃいけないし、地域で「助け合い」をしなければ生きていけない。

「車があれば便利」とよく言いますが、便利に条件がつく土地ではある程度動き続けてなければいけないんだ、と、やっと気づきました。

かといって若者のうちは東京の仕事を捨ててまで農業林業観光業に飛び込む勇気はないですし、なんとなくですが若いうちは東京の人混みに揉まれていた方が良い気もしてます。本当に無根拠かつ個人的に。

の、結果、「いつ住んでいいかわからない」に帰着します。自然が豊かで、人が暖かくて、地域の交流が活発で、都会に暮らすストレスなんか全部飛んでいくかもしれませんが、いつ住んでいいかわからない。

そんな雪国での2週間は、選択肢を広げてくれたような、進めない綺麗な道が現れただけのような。まだわかりませんが、少なくとも行って良かったのは確かです。みなさんどうでしょうか。「自分探し」とやらを目指している方々も、インドより手っ取り早いかもしれません。ぜひ。


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