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ヤンゴンのぽっぽや。

緑の手旗信号をみている。もうすぐ、電車がやって来る。
巻きスカートのようなロンジ―を身にまとった係員が線路の真ん中で大きく合図を送っている。どこにあったのか、いつの間にか赤と白に塗られた竹竿の踏切がかかっている。ヤンゴンの鉄道員(ぽっぽや)が自ら運んできたのだ。車が徐々に列を作り始めた。踏切といえばカンカンという音と共に上から降りてくるもの、赤いランプが点滅して黄色と黒という常識がことごとく覆される。やがて、パオーンという汽笛を鳴らし、白地にオレンジと緑のラインの入った電車が通り過ぎていった。日曜の朝、パゴダへお詣りだろうか、空港方面からの列車はあふれんばかり、鈴なりの人だ。日本のキハも走っているらしい。ホテルのテラスはその一部始終がよく眺められるベストポジションだ。話していると、今度は逆方面から別の列車がやって来た。ヤンゴン中央駅からの便はガラガラだ。一日に何便もないらしく、鉄道員は紅白の踏切と共に菩提樹の茶屋へと消えた。

世界三大山手線といえば、ウィーンと東京、そしてヤンゴンである。日本の支援で改修工事を行っており、一周3時間半がその半分に短縮されるらしい。完成したら是非、切符を買って乗ってみたい。今は洗濯物干しになっている線路であるが、きっといろいろな営みがみられることだろう。

日本のおもてなしを味わおうと週末、日系ホテルに滞在した。肩までつかれるバスタブ、朝のパンに生卵、リネンの一つ一つまで選び抜かれており、細やかに行き届いた日本のサービスにホッとする。中長期滞在する人が多いというのもうなずける。

「ミャンマー人は優秀よ。ベトナムとは違うわ。」
列車を眺めながら、IT人材を日本へ送り出している友人がいった。コンピュータ大学にはPCが1台しかなく、頭の中だけでプログラミングが組めるという。本当だろうか。しばしばいわれることだが、タイやベトナムはすでに多くが就職していて、今はクラスで15-30番くらいになるが、ミャンマーは仕事がないので、トップ5の優秀な人材と仕事ができるという。
「でもね。優秀な人が全員日本へ行くわけではないの。」
日本では教える側の問題で日本語が必須だ。英検2級レベルの日本語N2を取得するのに早くて2年はかかる。それまで待ち切れず、英語で早く稼げるマレーシアやシンガポールで、バグつぶしなど単純作業に従事する優秀な才能が多いという。異業種の世界は聞いてみないと分からないものだ。

ミャンマー人材が優秀かという問いに対しては、
「人による」とこたえる思う。なーんだとお思いかもしれないが、その人による加減が半端ではないのだ。世界にはこんなお方がいらっしゃるのかと日本ではみたことがないような徳の高い人格者もいれば、長年の鎖国と教育環境の影響もありエッと仰天するケースもある。日本でも同じだが、その幅がとてつもなく広い。また一人一人が優秀でも、チームの相性というものもある。「和をもって貴しとなす」ということは、あえて教えられてこなかった。小学校にチームワークと落としどころの授業があれば鎌倉幕府くらいいい国になるだろう。

「列車はあなたのようなクラスが乗るものではないわ。」
かつて、ヤンゴンの環状線に乗ろうとした際、ミャンマーのお姉さんにいわれたことがある。車、バス、電車と生活水準によって乗る物が異なるらしい。日本では社長も電車に乗るのよ。あきれる目を振り切って知人たちと乗った青と緑の列車は、ガラスのない窓から吹き込む風が気持ちよく、今までにない新しい景色がみえた。

老いも若きも、富めるものも貧しいものも一緒に車窓からの景色を楽しめる日が来たら、きっとミャンマーも新しい時代を迎えるのだろう。


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